19 / 25
第弐章──過去と真実──
死せる君と。捌話
しおりを挟む
桃を引き連れ彼の森に来た。腰に提げた布袋には布に包んだ小刀が二挺と、水で溶いた阿片を染み込ませた紙、厚めの面型。私は此処で全てを終わらせる覚悟だった。
街から裏道を使えば、何十分と経たずに其処に辿り着けることを桃から聞いていた。その為、目的地には直ぐに着いた。森の茂みを抜け開けた所に其れはあり、まるで人々から忘れ去られたかのような佇まいである。
桃を外に置いて、音を立てない様慎重に中に入る。あの男に勘づかれ見つかれば、いくら私でも歯が立たないからだ。だが、中に誰の気配も無かった。いや、部屋を覗いていくと寝間らしき場所に誰かが寝ている。見た感じあの男とは思えない。気になって近づくと、舞子が寝息を立てて寝ていた。
思わず顔が緩みかけるが堪える。そして面型を装着し、阿片の染み込んだ紙を小さな磁器に乗せ燐寸で火をつける。白い煙が上がり寝間に充満していく。まともに吸えば痛覚が無くなり、中毒症状に襲われる危険なものだ。舞子には痛みで殺される苦しみよりも、信頼していた姉からの裏切りによって殺される苦しみで歪む顔が見たかった。
そして寝ている舞子に跨り首に手をかけた。
顔が少し歪むが目を覚まさない。焦っていた私は両手に更に力を入れる。はっと目を覚ました舞子は私の顔を見るなり目を見開く。
「………ウィー……リ…」
か細い声で発せられた其れは私の期待を大いに裏切るものだった。
すると次の瞬間腹部に衝撃が襲った。其の一瞬の隙を突き、舞子は逃げ出す。少しでも足止めをする為に咄嗟に目に付いた斧を投げたが首を掠っただけで大した足止めにならなかった。だが、首から勢い良く血が噴出している。此の儘だと恐らく、私が何も手を出さなくても死ぬだろう。瞬間的に腕を酷使した為片腕は悲鳴をあげるが、厭わず後を追いかけ森を出た街で捕らえた。舞子の白かった襦袢は大部分が血で真っ赤に染まっているが関係無い。私は私の望みの為にこれから妹を手に掛けるのだ。
「さぁ、追いかけっこは終わりよ」
街から裏道を使えば、何十分と経たずに其処に辿り着けることを桃から聞いていた。その為、目的地には直ぐに着いた。森の茂みを抜け開けた所に其れはあり、まるで人々から忘れ去られたかのような佇まいである。
桃を外に置いて、音を立てない様慎重に中に入る。あの男に勘づかれ見つかれば、いくら私でも歯が立たないからだ。だが、中に誰の気配も無かった。いや、部屋を覗いていくと寝間らしき場所に誰かが寝ている。見た感じあの男とは思えない。気になって近づくと、舞子が寝息を立てて寝ていた。
思わず顔が緩みかけるが堪える。そして面型を装着し、阿片の染み込んだ紙を小さな磁器に乗せ燐寸で火をつける。白い煙が上がり寝間に充満していく。まともに吸えば痛覚が無くなり、中毒症状に襲われる危険なものだ。舞子には痛みで殺される苦しみよりも、信頼していた姉からの裏切りによって殺される苦しみで歪む顔が見たかった。
そして寝ている舞子に跨り首に手をかけた。
顔が少し歪むが目を覚まさない。焦っていた私は両手に更に力を入れる。はっと目を覚ました舞子は私の顔を見るなり目を見開く。
「………ウィー……リ…」
か細い声で発せられた其れは私の期待を大いに裏切るものだった。
すると次の瞬間腹部に衝撃が襲った。其の一瞬の隙を突き、舞子は逃げ出す。少しでも足止めをする為に咄嗟に目に付いた斧を投げたが首を掠っただけで大した足止めにならなかった。だが、首から勢い良く血が噴出している。此の儘だと恐らく、私が何も手を出さなくても死ぬだろう。瞬間的に腕を酷使した為片腕は悲鳴をあげるが、厭わず後を追いかけ森を出た街で捕らえた。舞子の白かった襦袢は大部分が血で真っ赤に染まっているが関係無い。私は私の望みの為にこれから妹を手に掛けるのだ。
「さぁ、追いかけっこは終わりよ」
0
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる