魔法を使えぬ魔法騎士〜家族を失った俺は復讐と旅をする〜

晴行

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追放〜新たな道

隣国

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 __王宮監査役レボ、魔法騎士団新団長に。


 どこかでそんな噂を耳にしたのは、ずいぶんと後の話だったか。
 ひたすら歩いた俺は、ついに国境をこえて隣国への侵入を果たした。
 ランドブルムには世話になった。
 これからは、この国ヤパンに世話になろう。
 ヤパンは王政を敷くランドブルムとは違い、民主主義国家らしい。
 民主主義ってなんだろうな?
 まあ、これから暮らしていけばわかるか。

「おっと、ここから先は通行料が必要だぜ旅人さん、ケッケッケ……」
「運がねえなあ。こんな危ない場所を歩きで通過かい?」
「武器食料、金目のものはすべていただく。ちなみに、お前の命もな!」
「抵抗は無駄だぜおっさん」

 おお、なんか岩影から人がぞろぞろ出てきたぞ。
 こいつら盗賊か?
 ひいふうみい……うん、十人以上はいるな。
 屈強な男たちだ。国境付近は無法地帯だと聞いていたが、本当にいるんだなこういうの。
 ていうかおっさん!?
 おっさんっていう歳じゃねーってまだ。
 そうだよな。……な?

「弱ければ死に、強ければ何をしてもいい。これが民主主義だぜ」
「お頭流石っす。民主主義サイコー!!」
「女はいねえのか」
「泣いている女を殺すのが一番楽しいのにぃ」
「男かよ……どっちにしろぶっ殺してやるよ!! ぎゃはは」

 なるほどな、勉強になるなあ。
 民主主義とは、強ければこうして旅人を囲んで殺すのも正しいとされるのか。
 ……弱ければ死に、強ければ何をしてもいい。
 俺の妻と娘も、弱かったから死んだのかな?
 そうだとしたらうっぜえ主義だな。


「おい、何黙ってんだタコ? お、今から死ぬからビビってんのか? あ?」
「はぁ」


 しゃべるなカス。
 今俺が頭ん中で考えているだろう。

「あ……あ……うぐ、あうぐっ」
「お、お頭どうしたんですいきなり白目剥いて!? あいつに何かされたんですか? おい、お頭になにしたんだ!!」
「かはっ……ひゅっ」
「お頭息してねえぞ? おい、どうなってんだこれ……」

「お前魔法使いかっ!?」
「ふざけんなっお頭を元に戻せ!!」

 陸に上がった魚のように、盗賊の頭は口をパクパクさせて喉をかきむしっている。
 ピーチクパーチクうるせえぞ盗賊共。
 魔法?
 そんな高尚なもの、俺に使えるわけないじゃん。
 現に魔法使えないから追い出されたんだし。

「な、なんだコイツ……」
「ひぃっ」
「こ、殺せっ。はやくやっちまおうぜ……やべえよこいつ」
「死ねクソがっ」

「……うっせえよ」





 悪いな。
 お前らの民主主義にのっとって、全員死ね。
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