魔法を使えぬ魔法騎士〜家族を失った俺は復讐と旅をする〜

晴行

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追放〜新たな道

ロザリーナ=ペンフィールド

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 結論から言えば、街の奴らは全滅していなかった。
 ワイバーンの襲撃によって避難していたらしい。
 俺が三匹のワイバーンを撃破してからしばらくすると、恐る恐るといった形で人影が現れ始めたみたいだ。
 中でも目立つのは、金髪碧眼の甲冑女だ。
 さながら女騎士といった出で立ちだが、肌の色は透き通るほど白くなかなかに美人だ。
 その女は俺の姿を見つけると近くに駆け寄ってきた。

「これは……あなた様が倒されたのですか」

「ん、ワイバーンのことか? そうだが?」

「なんという……たったひとりで、三体のドラゴンを落としたのですか」

「空飛んでんだから、落とすしかねえだろ」

「異常なほど鋭い斬り口、三体とも一撃で……す、すごい。なんという技量でしょう。感服いたしました」

 ずいぶんと丁寧な言葉づかいだな。いいところの育ちなのか?
 女から注がれるまじまじとこちらを観察する視線に、俺はたじたじになる。
 なんだ?そんなに魔法騎士がめずらしいか?

「ロザリーナ=ペンフィールドと申します。ヤパン国ペンフィールド統治領領主の娘です」

「アルト。旅人だ」

「……やはりアルト殿でしたか。お噂は聞いております。隣国ランドブルムの魔法騎士長アルト=グリンデバルド殿とお見受けします。ようこそヤパン国へと言いたいところですが、申し訳ありませんでした」

 いきなり深く頭を下げるロザリーナ。
 なんだなんだ?
 いきなりどうしたんだ?
 ていうか俺って有名人なのか?
 まあ、ランドブルム魔法騎士団の団長といえば名前くらい知っていてもおかしくはないか。

「街を守れず……領主の娘ともあろう者が、情けない」

「それを俺に言われても困るんだが?」

「……確かにそうでしたね、すみませんでした。ようこそペンフィールドへ。これでも、美しい街だと自負していたのですが」

「いきなり襲ってきた亜竜を相手によくやったんじゃないか? よく見たら被害も最小限だろう」

「すみません。力不足で、申し訳ないです」

 よく謝る娘だな。
 まあ、立場というものがあるのだろう。
 ロザリーナは配下らしき者たちにテキパキと指示を飛ばし、壊された街の修復や怪我をした住民たちへの対応をした。
 こいつがこの街の領主なのか? ずいぶんと若くないか?
 配下たちも心なしかロザリーナを蔑ろにしているような、そんな空気を感じる。

「この襲撃の直前に、領主であった父は天へと旅立ちました。だから今はわたしがこの街を守らないと」

 なるほどな。
 父親が死んでゴタゴタした最中に襲撃されちまったわけか。
 あーあ。ラナをこの街のギルドに預けようと思ったが、そんな余裕は無さそうだな。
 ロザリーナの様子からすると、いきなりの代替わりで人材に資材になにもかもに足りてないって感じだ。
 うーん。どうすっかな。
 ま、次の街にいけばいっか。

「……これから、どうするのですか?」

「どっかでギルドに登録しようと思ってる」

「……!? ならば是非っ。このペンフィールドで、ここで登録いたしましょう。アルト殿、この領主代理のロザリーナが便宜を図りましょう」

「いいよ、忙しそうだし」

「な……っ。そんな……っ」

 え、なにその顔。そこまで落ち込む!?
 ロザリーナは明らかに落胆を表情に浮かべ、視線を泳がせる。
 慈善事業じゃねえし。めんどくさそうだし。やだよ。
 助けた以上、ここより安全なところでラナを解放してやりてえしな。

「いくぞラナ」
「はい、ごしゅじんさま」

「ちょ、ちょちょちょっと待ってください。考えています……アルト殿、お子さんを連れての旅はご苦労でしょう? ここなら、わたくしが娘様の面倒も見させてもらいますし、なんでもしますから」

「いやラナと俺は親子じゃねえし」

「お願いしますアルト殿……後生ですから……っ。どうか、どうかわたくしにチャンスを……」

「いや無理だから」

「……っ、く。ぐずっ……っく」

 いやいやいやいや。
 青い瞳にめいいっぱい大粒の涙を貯めても無理だから。

 え、なに?
 俺悪いことしてないけど。
 むしろ三匹のワイバーン倒してやったけど。
 おいラナ。ツーンってなんだその態度は俺は人でなしじゃねえぞ?
 え、これ俺悪いの?
 女の子泣かしたの俺悪いの?

「うっく。えぐ」

 いや泣くなロザリーナお前ちょっと、完全に俺が泣かせたみたいな空気になってるから。
 なんか俺が女の子泣かせたみたいになってるからあ!!
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