魔法を使えぬ魔法騎士〜家族を失った俺は復讐と旅をする〜

晴行

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追放〜新たな道

空中戦闘

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「ギルド……ですか?」

「ああ。俺はこの通り金もなければ装備もない。すべてをランドブルムに置いてきた。だが、それはいい機会だったのかもしれない。このままでは、ドラゴンには勝てないと考えていたからな。この先の街でギルドに登録して、金を稼ぐ……弱い自分を鍛え直す新しい人生の始まりってことさ」

「そんなことないです。ごしゅじんさまはこれまでにお会いしたにんげんの、誰よりもつよい」

「ラナ。お世辞は嬉しいが、お前の歳で出会う人間など大して戦闘経験を持たない奴だろう。ま、お前さんギルドに到着したら風呂に入れてやる。あとは自分でなんとかするんだな」

 なんだよその残念そうな顔はよ。
 無理だっつーの子守りは。
 幸い、道の先に見えている街は規模としてはまあまあらしい。
 ラナには少々の金を渡して、後はギルドの奴らにでも頼もう。そうしよう。
 話にしか聞いたことはないが、孤児の保護のような事業もやっているらしいからな、ギルドは。
 さーて。

 …………はぁ。クソだな。

 血の臭いがする。
 街の門をくぐったら、すぐに違和感に気づいた。
 さっきからラナが俺の服の裾を掴んだまま離れない。
 こいつ、本能的にこの危機を察知していたのか?
 
「ごしゅじんさまぁ……っ」
「ああ」
「いっぱい、いっぱいしんでます」
「みたいだな。これはドラゴンの仕業だ」

 死体が八つ裂きにされて道端に放置されている。
 食い散らかされ、遊ばれた跡がある。
 鋭い牙で切り刻まれ、はらわたを引き摺り出されたのだ。
 最悪だ。
 街の住民は全滅かもしれない。

 __ギャオゥゥゥッ!!

 上空。
 亜竜の影が見える。
 一、二、三匹。
 あれは、レッサーワイバーンか。
 ランドブルムを襲撃した群れからあぶれた奴らってところか?
 こんなところで人間を殺して憂さ晴らししてたのかよ。

「あ、ああっ……そんな、ワイバーンなんて、こんなところでっ」
「どうしたラナ?」
「にげましょう!! ギルドの人たちもきっと殺されたんです。もっと人数がいないと勝てないですよっ!!」
「いや、俺が戦おう」

 面倒だが、仕方ないだろうな。
 空を飛んでいるのが厄介だが。
 たった一本、持っていくことを許された一般的な戦闘用の剣を抜く。
 そうして、軽く息を吐き両足に力を込めたんだ。

「__飛翔フライ


 ズダァァァァンッツ!!!!


「えっ__」


 地面がえぐれ、舗装ごと砕け散った。 
 ラナは思いっきり目を見開いて尻餅をついていた。
 いや、飛翔の魔法ぐらい見たことあるだろうに、そんなので驚くなよ。
 俺は空中に躍り上がり、レッサーワイバーン三匹と同じ高度まで上昇した。
 さあ、ここからだ。

「ギャォォォォッ」
「グァァァッ!?」
「ギャオッ!!ギャオッ!!」

 ワイバーン共はいきなり現れた俺に一瞬驚いた様子だったが、すぐに有利な空中で囲むために連携をとる。
 俺は体勢を整えつつ、体の前に剣を横に構え敵の迫撃を待つ。
 ワイバーン共は三匹一緒に掛かってくる。それが一番未知の敵に対しリスクが少ない倒し方だからだろう。

 ……今だ。

 __ギュルオッ!!

 ……ザンッ。


 ふう。
 一閃で三匹のワイバーンの首は吹っ飛んだ。
 悪いな、これが三匹一気に倒す、一番面倒のない方法なんだわ。
 さっさと死ねクソドラゴン。
 ドサドサと巨体が落着し、その後にふわりと着地した。
 こんなもんだろ。
 ワイバーンに勝利した俺をラナが褒めてくれるかと思ったが……。


「あ……あっ……こ、こしが、ぬけて。ごしゅじんさま」


 お子さまには刺激が強すぎたか?
 まだまだ、本物のドラゴンの迫力はこんなもんじゃねえぞラナ。
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