異世界行っても喘息は治らなかった。

万雪 マリア

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勝手に勇者にされました。まる。

十六話・災害がキタ

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 目が覚めると、目の前をくるくる回る六つの光が見えた。
 よく見るとそれは人型で、女型と男型がある。
 青、赤、黄色、緑、黒、白……黒い光なんておかしいけど、闇とは言えず、どこか神々しいまでの、黒い光だ。
 あーあれか。まだ寝ぼけてるのか……。
 静かに瞼を閉じて……。

『ねえリカ、主さんが起きたよー!』
『そうね、やっぱりここは話を聞かないとね!』
『レナ、ミーアは私に聞いたと思うんだが』
『おひるね、したいれす……おみず』
『ミシュ、寝ちゃだめだって!』
『レイ、うるさい』

 静かに瞼を閉じて……。

『つかリカってなんでそんな名前なの? 女なの? 確かにかわいいけど!』
『もしかして、ノロケ!? レナ、気になります!』
『光と闇は相それないだろ常識的に考えて、というか俺は男だ』
『くものなかで、おねむ……れい、まくら』
『ミシュは甘えん坊だからな! ほら、膝を使っていいぞ!』
『そういうのマジいいから』

 静かに瞼を閉じて……。

『そういえば、スーは好きな人とかいるの?』
『うるさいマジ黙れ』
『あいらいくリカ』
『誰もミーアには聞いてない』
『れい、おやすみなさぁい………』
『おやすみ、ミシュ』


「うるさい!」
 飛び起きると、蜂の巣を付いたように光は離れる。
 いや、光ってのはおかしいな。
 それぞれ、五歳児ぐらいの姿だ。
 青い光を放つのは、空色のロングの髪の毛に朝の海のような瞳(ただし半目)をした幼女だ。顔立ちは可愛らしく、庇護欲をそそる。服装は、ひざ上までのAラインワンピースで、なぜかとんがり帽子をかぶっている。
 赤い光を放つのは、火のような赤の髪の毛に同じ色の瞳をしたショタっ子だ。中性的な顔立ちで、ぱっと見で男の子だとわかる人は少ないだろう。赤いベストに白いシャツ、茶色の短パンで、腰に短剣を差している。
 黄色い光を放つのは、金髪ミディアムに琥珀色の瞳をした男の子だ。将来イケメンになることを予感させるカッコいい顔立ちで、冷徹な印象を受ける。服装は、赤い子の色違いだが、短剣の代わりにレイピアを差している。
 緑の光を放つのは、黄緑のショートの髪に緑色の瞳をした女の子だ。顔立ちは利発そうだが、好奇心が見え透けてわかる。服装は、緑色の、現代風の着物というか、ミニスカートの浴衣に、黒ぶちの眼鏡をかけている。
 黒い光を放つのは、黒色の肩までのポニテ髪に赤色の目をした女の子だ。顔立ちは、男でも女でも通用しそうな中性的な顔立ちだ。服装が黒い無地のチャイナ服だったので、女の子だな、と分かった程度。
 白い光を放つのが、白髪ロン毛に灰色の目をした男の子。奇麗だが冷たさを感じる美形で、この中では一番大人っぽく見える。服装は、ワンポイントに黒を使っている、男もののセーラー服だ。
 ちなみに、誰も彼も、幼いながらに美しい顔立ちをしている。顔面偏差値が高い。

『ほ、ほら、スーが怒鳴るから』
『埋めるぞ、オラ』
『ミーアもいい加減にしろ』
『レナちゃん、野次馬根性出しちゃうよー』
『ん、うぅ……ん……ふぅ……』
『はは、よく寝てるなあ、ミシュは』

 いやマジでなんなの?
 と思っていると、黒い子が話題をそらすように、
『ほ、ほら、自己紹介しなきゃ』
 といった。


 えー、そこから始まった自己紹介は、私の腹に訴えかけることがあったので要約させていただく。

 まず、彼らは「精霊」と呼ばれる存在で、神様に使えるために人であることを放棄した一族だ。
 その中でも力あるものを精霊王とするのだが、彼らがそれぞれの属性の精霊王なんだという事実に驚きを隠せないんだけど。
 まず、光の精霊王「リカ」。こんな名前だが男だ。いずれ闇の精霊王と結婚する運命らしい。ちなみに、これは闇の精霊王が言ってた話だけども。
 次に、闇の精霊王「ミーア」。名前通り女。光の精霊王を一方的に慕っている。感情が振り切れると怖いらしい。
 次に、炎の精霊王「レイ」。熱血で、水の精霊王の夫(自称)らしい。熱血で体育会系、見るからにめんどくさいタイプだ。
 次に、水の精霊王「ミシュ」。女だが、精霊王の中で最年少、すぐ寝るしマイペースだが、切れると怖いらしい。まだ精霊言語がうまくしゃべれない。
 次に、風の精霊王「レナ」。噂好きで軽率、一応最年長だが水の精霊王に次いで子供っぽい。よく地の精霊王とつるんでいる。
 最後に、地の精霊王「スー」。中性的な美貌を持ち、誰にでも等しく慈愛と刑罰を下す、地の女神の一人娘。レナと仲がいい。

 で、私に会いに来たのは、なんとなく。
 精霊王は暇か。暇なのか。
 そして、なんか、『主さんの血をちょーだい』とかのたまい始めた。
 いや、やめて。あのトラウマをよみがえらせるのはやめて。マジで。
 しかし、抵抗も無念かな、あっさり押さえつけられて、レナに風で腕を切られる。しかし不思議と痛みはない。むしろ、五歳児が私の傷跡に唇をつけてジュージュー血を吸ってるという事実のほうが心をえぐった。

『ふー、美味しかった! また来るねー!』

 おう二度とくるな。
 心の中でそう言う頃には、律儀に傷跡を癒していった精霊王たちは帰っていた。
 一体なんだったんだ。災害か?
 そう思ったが、盛大に鳴り響いた腹にすべてがかき消された。
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