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ミッドガルド国からの出立
二十九話・授業難しすぎない?
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実践授業なう。
現在地、実習棟ナリ。
緑と茶色の市松模様のオシャレな床に、木目調の壁の、「ここマジで実習棟なの?」と思うような綺麗な部屋だ。結界とか張られているのかなぁ。
授業の内容といえば、木でできた人形に、一発でも魔法を当てられれば合格……といえば、聞こえはいいかもしれない。
しかし、実際にはかなりのブラックであり、野生の鳥の倍ぐらい早く、不規則な動きをする人形だから、当てられた生徒はまだ誰もいない。
最初はパラノイア・ワールドでやろうとも思ったんだけど、この機会に基本魔法の練習をしておこうとも思って……でも当たらないわ反撃してくるわそのくせ拘束魔法はすり抜けるわ、なんかもう訳が分からないよ状態になっている。
今のところ、一番いい所まで言ったのはミカ様で、水魔法こそ当てられたけど、結界みたいなので防がれて逆にミカ様に帰ってきた。それを見たミカ様はやっぱり結界で打ち返し、そして結界で打ち返され……と半ばホッケーみたいになっている。
……もういいや! パラノイア・ワールド、解禁しちゃえ。
「『ギガ』『ファイア』『ギガ』『メテオ』『ギガ』『カサルティリオ』『ギガ』『イリアコキ』」
炎系の魔法に、最終段階の強化魔法である『ギガ』を乗せて威力上昇、全部詠唱。こりゃいっただろ!
……あれ、なんか嫌な予感が……。
熱い。
なんていうかすごく熱い。
あまりの熱波に回りの植物が燃えて、水場が干上がり、ミカ様の水魔法が蒸発する。
それもそのはず、最終段階の炎魔法「イリアコキ」は、太陽という意味だから。簡単に言えば、太陽並みに熱い、イコール何千度何万度と高い温度が人形を襲っているという事だ。
それは当然、私たちにも襲い掛かってくる。例えるなら、真夏に厚着で放り出されたみたいに暑い。
そして、灰すら残さず消えたところに、隕石が落ちてくる。だからここ木の中だよね? なんで落ちてくんの?
その隕石(メテオ)は、他の生徒の木製人形まで焼き尽くして消えていった。
嫌な予感的中。
うわあ「ギガ」乗せるんじゃなかった。いや乗せなくてもヤバかったんだろうけど。
実習棟は炭とか塵とかが降り積もって、白っぽいのと黒っぽいので斑の床になってる。
元の綺麗な床の面影もない。
「あー……えっと、『召喚・白雪姫の七人の小人』」
瞬間、現れたのは、それぞれ虹の色の衣装を身にまとった、16㎝ぐらいの小さな男の子×7。
淡い茶色の髪の毛と瞳は変わらないし、顔立ちもそっくり。しかし、服の色だけが違うのだ。
ちなみにその服は、お揃いの白いブラウスに、色違いのベストとハーフパンツ。見えないし見せる気もないけど、実はガーターベルトをつけていて、それぞれナ短剣や銃を持っている。ナイフホルダーとか、ガンホルダーってやつだ。
「どうしたの、あるじさまー」
「おしごと? おしごと?」
「おしごとなの? だれけすの?」
「どこどこ? あるじさま?」
「あるじさまー、ごはんー」
「おしごと、おしごと、らんらんるー♪」
「あるじさま、ようけんはなあに?」
一斉にしゃべられて、混乱する。
「あー……ちょっと、お掃除してくれない?」
「おそうじ、とくい」
「おひめさま、おそうじ、にがて」
「でもぼくたち、とくい」
「じゃあ、やるねー」
七人は、円になるように集まると、そのまま、さっきの舌足らずな声の比でなく流暢な声で、詠唱を始めた。
「風よ」
「地よ」
「炎よ」
「水よ」
「光よ」
「闇よ」
「人形たちよ」
「この世界の」
「片隅にある」
「小さな箱庭の」
「塵と炭たちを」
「たった今」
「消してしまえ」
「存在を抹消してしまえ」
と地味に恐ろしい事を、歌うように口遊む。
そして、一気に手を振り上げると、
教室中のゴミというゴミが、中央に集まり、そして、最初からなかったかのように消え去ってしまった。
「わーすごーい」
だれがここまでやれと言った、と副音声を響き渡らせながら、棒読みで賛辞する。
当然私に集まる注目。
前世では、注目されるのなんて学校でなんたら優良児として卒業生を送る会とかの生徒主催のイベントで複数人と前に立った時ぐらいだし、普段からないものとして扱われていたようなものなので、ものすごく視線が痛い。私の胃を気遣ってください。
「すごいでしょすごいでしょ」と言わんばかりのどや顔をした小人を消すと、さらに注目が集まる。
その中で、ミカ様だけがこっちに近づいてくる。
「わあ、すごい! エッちゃんがやったの?」
「え、あ、はい?」
「うんすごい。さすがだね」
とにっこり笑った。
『ねえ、ホンキでそう思ってるの?』
『意味もない優しさで、本当に何かを守れていると思っているのかい?』
『これなら、あの子のほうがおもしろいかなあ』
『ほら、言いなよ。叫びなよ。キミの願いを』
『傷付くぐらいにしか役に立たない心なんて、いらないだろ?』
『……まあ、今は何を言っても無意味だけどね! さぁ、歯車を回そうか!』
現在地、実習棟ナリ。
緑と茶色の市松模様のオシャレな床に、木目調の壁の、「ここマジで実習棟なの?」と思うような綺麗な部屋だ。結界とか張られているのかなぁ。
授業の内容といえば、木でできた人形に、一発でも魔法を当てられれば合格……といえば、聞こえはいいかもしれない。
しかし、実際にはかなりのブラックであり、野生の鳥の倍ぐらい早く、不規則な動きをする人形だから、当てられた生徒はまだ誰もいない。
最初はパラノイア・ワールドでやろうとも思ったんだけど、この機会に基本魔法の練習をしておこうとも思って……でも当たらないわ反撃してくるわそのくせ拘束魔法はすり抜けるわ、なんかもう訳が分からないよ状態になっている。
今のところ、一番いい所まで言ったのはミカ様で、水魔法こそ当てられたけど、結界みたいなので防がれて逆にミカ様に帰ってきた。それを見たミカ様はやっぱり結界で打ち返し、そして結界で打ち返され……と半ばホッケーみたいになっている。
……もういいや! パラノイア・ワールド、解禁しちゃえ。
「『ギガ』『ファイア』『ギガ』『メテオ』『ギガ』『カサルティリオ』『ギガ』『イリアコキ』」
炎系の魔法に、最終段階の強化魔法である『ギガ』を乗せて威力上昇、全部詠唱。こりゃいっただろ!
……あれ、なんか嫌な予感が……。
熱い。
なんていうかすごく熱い。
あまりの熱波に回りの植物が燃えて、水場が干上がり、ミカ様の水魔法が蒸発する。
それもそのはず、最終段階の炎魔法「イリアコキ」は、太陽という意味だから。簡単に言えば、太陽並みに熱い、イコール何千度何万度と高い温度が人形を襲っているという事だ。
それは当然、私たちにも襲い掛かってくる。例えるなら、真夏に厚着で放り出されたみたいに暑い。
そして、灰すら残さず消えたところに、隕石が落ちてくる。だからここ木の中だよね? なんで落ちてくんの?
その隕石(メテオ)は、他の生徒の木製人形まで焼き尽くして消えていった。
嫌な予感的中。
うわあ「ギガ」乗せるんじゃなかった。いや乗せなくてもヤバかったんだろうけど。
実習棟は炭とか塵とかが降り積もって、白っぽいのと黒っぽいので斑の床になってる。
元の綺麗な床の面影もない。
「あー……えっと、『召喚・白雪姫の七人の小人』」
瞬間、現れたのは、それぞれ虹の色の衣装を身にまとった、16㎝ぐらいの小さな男の子×7。
淡い茶色の髪の毛と瞳は変わらないし、顔立ちもそっくり。しかし、服の色だけが違うのだ。
ちなみにその服は、お揃いの白いブラウスに、色違いのベストとハーフパンツ。見えないし見せる気もないけど、実はガーターベルトをつけていて、それぞれナ短剣や銃を持っている。ナイフホルダーとか、ガンホルダーってやつだ。
「どうしたの、あるじさまー」
「おしごと? おしごと?」
「おしごとなの? だれけすの?」
「どこどこ? あるじさま?」
「あるじさまー、ごはんー」
「おしごと、おしごと、らんらんるー♪」
「あるじさま、ようけんはなあに?」
一斉にしゃべられて、混乱する。
「あー……ちょっと、お掃除してくれない?」
「おそうじ、とくい」
「おひめさま、おそうじ、にがて」
「でもぼくたち、とくい」
「じゃあ、やるねー」
七人は、円になるように集まると、そのまま、さっきの舌足らずな声の比でなく流暢な声で、詠唱を始めた。
「風よ」
「地よ」
「炎よ」
「水よ」
「光よ」
「闇よ」
「人形たちよ」
「この世界の」
「片隅にある」
「小さな箱庭の」
「塵と炭たちを」
「たった今」
「消してしまえ」
「存在を抹消してしまえ」
と地味に恐ろしい事を、歌うように口遊む。
そして、一気に手を振り上げると、
教室中のゴミというゴミが、中央に集まり、そして、最初からなかったかのように消え去ってしまった。
「わーすごーい」
だれがここまでやれと言った、と副音声を響き渡らせながら、棒読みで賛辞する。
当然私に集まる注目。
前世では、注目されるのなんて学校でなんたら優良児として卒業生を送る会とかの生徒主催のイベントで複数人と前に立った時ぐらいだし、普段からないものとして扱われていたようなものなので、ものすごく視線が痛い。私の胃を気遣ってください。
「すごいでしょすごいでしょ」と言わんばかりのどや顔をした小人を消すと、さらに注目が集まる。
その中で、ミカ様だけがこっちに近づいてくる。
「わあ、すごい! エッちゃんがやったの?」
「え、あ、はい?」
「うんすごい。さすがだね」
とにっこり笑った。
『ねえ、ホンキでそう思ってるの?』
『意味もない優しさで、本当に何かを守れていると思っているのかい?』
『これなら、あの子のほうがおもしろいかなあ』
『ほら、言いなよ。叫びなよ。キミの願いを』
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