レベルが上がりにくい鬼畜な異世界へ転生してしまった俺は神スキルのお陰で快適&最強ライフを手にしました!

メバル

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第二章【激動編】

【50】真の魔王

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 この世界の魔王とは絶対的な闇の支配者であり、人と分かりあえることなど絶対的にあり得ない存在である。
 それはかつての魔王が転生者や転移者ではなかったからとも言えるだろう。
 今回の魔王は元の世界が同郷の転移者という事と、全力で食べたい食べ物が共通であったと言う事もあり自然と歩み寄れてしまったのである。

 そう……歩み寄れてしまった。
 これが真実だろう。
 しかし、歩み寄れてしまったが為に起きてしまった魔王の異変があった。

 魔王の心が完全に2つに別れてしまい、別人格の魔王が誕生してしまったのである。
 ラーメン大好き魔王しゃまと完全に分離し、この世界にとっての災悪とも言える真の魔王が出現したのであった。

 この魔王の誕生により、後に新生魔王軍とヒューマン軍は先の見えない大戦争へ発展していくのである。

 魔王ロウガンはザハルと親交を深めていく中で、魔王としてどう生きていくか……ということよりも、今ザハルと共に笑い合いながら美味い物を食べる事が、楽しくて仕方なかった。
 本来召喚された理由と大きくかけ離れた行動の連続により、魔王の心の中で少しずつではあったが歪が出てきたのも間違いなかった。

 今回ダラルへ罰則を与えたロウガンの行動にも、少なからず魔王軍の中でも相談なしの単独行動にしても、罰則が重すぎるのではないか……という声が上がっていた。

 たしかにそうだろう。
 魔王軍は人間を滅ぼす事に大義名分を得ている。
 人間を減らす為ならば手段を選ばない行動は、魔王ロウガン自身がスタンピードで証明している。
 ロウガンの行動は魔王軍だけでなく、自分自身を否定する行動であったことにロウガンは気付いていなかった。

 小さな不信感と小さな波紋から生まれた大きな事件。
 それがダラルから謝罪と今後の忠誠を誓った献上品で魔王に大きな変化をもたらされる事となる。

 ダラルは魔王の献上品に闇の種子を捧げたのである。
 闇の種子とは闇の心を持っているものに使えば、大いなる闇が覚醒し最悪は体が2分化してまうほど、強力な種子である。
 本来の魔王に使った所で力が増大するだけなので、献上品としては最高の品……の、はずだった。
 しかし今の魔王ロウガンには悪影響を及ぼしてしまいました。
 ロウガンは大きなうめき声をあげながら、大いなる闇の魔王とロウガンへと切り別れたのであった。

「うがぁぁぁ……あああ!!!ダラル!貴様何をした!!!」

「私は魔王様へ献上品をお渡ししただけにございます!他意はございません!」

 ロウガンは、これは大変な事態になってしまったと瞬時に察知しザハルへ救援要請を出していた。

 闇の種子により生まれたものを見た魔王軍は瞬時に、この者が真の魔王だと認識し跪いた。

「我が名はブラバ。偽王になり変わり、この地を統べる。
 手始めに偽王を私の手で葬ろう」

 ロウガンは力の大半を持っていかれブラバにフルボッコを食らい、今まさに殺される瞬間であった。
 間に合わなかったか……と思った瞬間に、スーパーヒーローが登場する。

 ザハル君である。

「遅れてすまんな。お前ボロボロじゃねーか。
 これ使っとけ」

 ロウガンはフルポーションを貰い完全回復する。

「助かった……」

「アレなんだ?すげー歪な姿でキモいんですけど」

「あれは元々俺の中にあった闇の部分だ。
 よく分からんが体が分離し、アイツが生まれた。
 名をブラバと言うらしい。気を付けろよ。恐ろしく強い」

「ブラバ?ブラックバス?ブラスバンド?どっちの略称?」

「う、うん。知らね。ていうか、それ重要?」

「別に……気になっただけ。んで、あれは元々お前ではあったけど、今は別物って認識でOK?」

「そういうことになるかな」

「分かった。丁度ここには役者が揃ってるし、少し牽制してダンジョンへ行こう。
 今後のことは一旦そこで話し合おう」

「おい、話聞いてたか?アレは尋常じゃなく強いんだ!危険すぎ……」

 最後の言葉を言う前にザハルが特大の火球を投げ込み、魔王城と雑兵たちは塵と消えた。
 そのままザハルはブラバへ5発ほど拳を打ち込み、魔王ブラバは吐血しながらうずくまった。

「確かに強いかもしれんが、こんなもんだろうな。よう、新しき魔王さんよ。
 お前が魔王であり続ける限り、俺には死んでも勝てんぜ。
 先王のロウガンは貰っていく。邪魔をするならば……」

 そう言ってダラルを瞬殺するザハル。

「お前もこうなるから。何度でも繰り返してやるから覚悟しとけ」

 ザハルはそれだけを言い残し、ロウガンを連れ100階層まで転移した。

「助けてもらって感謝する。だが俺のせいで、もう停戦とか何の意味もなくなってしまったな……すまない」

「まぁ仕方ないさ。だがこれで間違いなく戦争が開戦するだろうな。2年くらいは時間が稼げるだろうが、その後はもうどうにもならんだろうな。
 勇者も魔王もいなくなればいい……」

 これは俺の本心であった。
 勇者ではないレーニアと出会いたかった。
 女王ではないレーニアと家庭を築きたかった。

 魔王は入れ替わり、会話が成立しない魔王が誕生した。
 もう止められない。
 戦争が止まる方法は唯一つ。


 勇者か魔王の死が唯一の方法である。


 これがこの鬼畜な世界の真理。
 真理は絶対。
 ザハルの願いは儚く消え去ったのであった。
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