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ドラマ②「お医者様のオカアサマ……」~オカアサマがとにかく濃い……~
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70歳代の小柄なぽっちゃり型の可愛いおばちゃん、会員様のお母様だから(以後オカアサマと書します)そのオカアサマが相談所に来られましたわ。
茶系統のレースをあしらったおしゃれな裾までの長いスカートドレスにハイカラな編み込帽子、背はあまり高くなく、ぽっちゃり型で一見、童話に出てくる魔法使いのおばあさんとフランス人形を、足して二で割ったような感じのオカアサマでございました。
オカアサマは独特な雰囲気を醸し出していることは確かで、そのオカアサマが来室
「こんにちは、お目にかかれてうれしくなりました。37歳になる長男がやっと結婚をする気になったのでお話を聞きに来ました」
そのオカアサマはにこにこして云われましたわ。
(ワタクシ、まあ、人当たりのよさそうなオカアサマですことと感じました)
「ようこそ、良く遠い所お出で下さいました。こちらをどうしてお知りになりましたか?」
「先日先生の記事が新聞に載りましたでしょ?あれから、いつも気になっておりましたから……早速伺いました!」
「あらー、そうですか!有難うございます」
(ワタクシも一応ビジネス感覚になる)
するとオカアサマはすかさず
「先生は本当の先生ですネ」
「エッ、本当の先生とは?何のことでしょう!私、先生とは全然云ってないけど、オカアサマが先に云われたのですよ!ワタクシそう見えましたか?」
と、ワタクシもつい云ってしまった。すると「いや、新聞で!」
「あら、そうでしたわね」
「いやね、最近は誰でも先生、病院の先生や学校の先生は分かるけど、結婚相談所なんかも先生、美容室も先生、と云うのですネ!」
「そうですか、確かに、先生は、先に生まれると書くけど、それは技術を身に付けたり、人より何かに優れる人を云うのではないですか?」
と、ワタクシは、さりげなく申し上げましたの!
本当にそうおもっているのですもの!
するとオカアサマは
「そう、そうですネ、そう考えると良いのですよネ ウフフ 」
また、不気味なウフフがでたな!と思いましたわ。
「ええ、ワタクシはそうだと思っていますよ。気にしたことないですから」
(案外、素直なおばさまオカアサマだわ……と、思うワタクシ)
すると、
「先生も教育者でいらっしゃったのですね。私の夫も教育委員会や中学校の校長をしておりました。主人の方は教育一家、私の実家の方は皆、兄妹も佐賀の親戚も医者の一家です」
(ははあ、このオカアサマそれを言いたかったのね!)
「そうですか」と、云うワタクシの言葉を掻き消すかのようにオカアサマは話し出した。
「お願いする長男は中学の時から寮生活をして福岡の有名私立学校にやりましたの……何故かと云いますとね。うちの子ども成績は抜群でしたが小学校5年生の時の先生との折り合いが悪くて、そりやあ、ひどかったですよ。鉛筆で小突かれたりしていたらしいいのです」
「あら、それは大変」
「そうでしょう?それは大変な目に遭いましたよ……それが女の先生ですよ。嫁にも行っていないらしいから、子供の気持ちなんてあまりわからないのですよね!」
(そうとばかりは言えないのだけどね)
思うところあるけど微笑みでうなずくワタクシ
「だから中学は思い切って県外の私立中高一貫の進学校にやりましたの……中学3年、高校3年だから6年も親も子も行ったり来たりの生活で大変でした」
「そうですか、結果的には念願のお医者様になられて良かったですネ」
「ええ、ええ、それは息子の努力ですよ。若いのですが、もうすぐ開業します……お金すごく要りますよ!でも、おかげさまで息子の方、今の病院でも一生懸命で人気があるのですよ。人気があるので色々な方からお話も来るのですが……」
「あら、それでは良いじゃありませんか?きっと良いお話でしょうから」
ワタクシは内心首を傾げましたわ。
「いえいえ、息子はそれが嫌いなのです!それとね先生、息子の相手に女先生だけは絶対ダメです」
「ああ、そうなんですか!」
ウフフ、とワタクシ笑ってしまいましたわ……
ここまで間が無く、聞くのに大変時間を掛けたが、聞かなくてはならない。でも、話を変えなくてはと思いました。
「ご子息は結婚相談所入会の事ご存じなのですか?」
「はい、息子は仕事がすべてみたいで忙しくしておりますので、私に任せるなんて言っていますから、大丈夫です」
「しかし、ワタクシが息子さんと会わないことには、何もわからないではありませんか?」
「先生それでは、そっと、息子の勤めている病院に行ってもらえないですか?」
「まあ、出張面接もしますが職場で面接は無いでしょう? それと他の相談所にもお願いしたらいかがでしょう」
とワタクシが云うとあわてて身を乗り出して両手を左右に動かしながら
「いえいえ、もうここだけです。先生だけにお願いしたいのです」
「そうではなくって、ワタクシの所は小さい結婚相談だから、入会されている方も少ないのですよ!だから、他の相談所にもお入りになっていた方が早道かも知れませんよ、と云うことです」
「まあ、先生そう仰らないで、うちの息子の面倒を宜しくお願いします」
(これは大変難しいな)
ワタクシここまでのやりとりでやっかいな予感がしました。
「先生、息子はもちろん、私に絶対の信頼を置いていますから、全部頼んだよ!と、云っているのですよ……心配いりません」
「いや、ご本人と面談しないことには何もわかりませんので、紹介しにくいのですよ」
「息子も忙しくて、ここに来る時間が無いと思いますよ。そのうちに連れてきますが、
すぐには無理だと思います。お金はいくらでもお支払いしますので宜しくお願いします」
まあこのように、次から次にヨクヨクお話になられる、そして頑固さが見え見えする。
ワタクシ内心(これは困った依頼者に来ていただいたな?)と、思いながら次の話が甚だしい考えに驚いた。
「先生、条件がもう一つ、お嫁に来られる方はできたら県外がいいのですよ」
「それまたどうしてですか?近い方が何かと便利でしょう……」
「いえいえ、最近の嫁は、実家が近いとすぐ実家に帰るし、実家に入り浸りになってしまうらしいのですよ!だから、すぐには帰れない方が良いと思って……なるだけ遠くの方が希望です」
「はあーツ、そんなことないでしょう、そんな事云っていたら来る人いなくなりますよ、それは昔のドラマに出てくるような考えですよ!もっと気楽に行きましょう」
と、云うとオカアサマも、ちょっと自分の言い過ぎに気が付かれたのか?
「そうですね、ウフフ、先生のおっしゃるとおりに気楽にいきます」
「しかしね、オカアサマ、ワタクシご本人とお電話だけは致します事よ!」
「はい!それはどうぞ、息子は夜の時間はおりますので」
(夜の時間が空いていれば来られたらいいのに)
と思うがこの辺りから、自己流家庭の生き方があるのだろうと思うようになり、それではそれに挑戦してみようではないか?と考えるように頭を切り替えることにしましたワタクシでございました。
オカアサマはにこにこにこと、口元を横に広げて可愛らしく微笑み笑いをされるのが特徴で、彼女はこの笑いで何十年も余り苦労しないで過ごして来られたのだろうなあ~
仕方のない事ってあるのですわネ、 世の中何でも(特別枠)って云うのがあるではありませんか? まるで、おしかけ特別枠みたいなものです。
さて、息子さんへの夜の電話
「もしもし、匠さんですか?」
「はい」
「今日オカアサマとお会いしました、お節介焼きおばちゃんです。宜しく」
「はい、こちらこそ宜しく」
(随分とかぼそい声ね)
「ご結婚の意志がお有りなのですネ」
「はい……」
「ご本人の、ご希望があったらお聞かせいただきたいのですが?」
「いや、全部母に任せていますから……」
「あら、そうなのですか?ご自分のことなのに?…… 容姿とか、背の高さとか?頭の良い人とか?どんな雰囲気とか?無いのかしら?」
「はい、全て母の方で……」
「そう、そうなの……、貴男とお会いしていないから、貴男の雰囲気が少し分からないのだけど、それでいいのかしら?」
「はい、宜しくお願いします」
……やはり、オカアサマの云われる通りでした!
それからは全部オカアサマを通しての連絡でした。でも、やはり本人が一番知るべきだと思っているワタクシは彼にプロフイールを郵送する時は、宛名はオカアサマでなくせめて彼本人の名前にしましたのよ!
手紙が着いた頃に、すぐオカアサマから連絡が来るということは、信書の秘密などありやしない!最初はオカアサマが開封、本人が「それで良いよ」となるのではないかしら?
それからは何回も何回もご紹介お見合しましたわ!
一番最初のご紹介お見合は薬剤師の方でした。オカアサマは張り切っていらっしゃいましたわ!まるで自分の事のように……その時、
とても信じられないようなことでしたわ……オカアサマがワタクシにおっしゃいますの
「先生、明日のお見合にちょっと様子を見るために同席しても良いでしょうか?」
「ハッ、オカアサマが?」
「はい」
その時にはどこまで、非常識であろうとワタクシ怒りすら感じてしまいましたよ
「それはちょっと困りますわ、お相手の方、驚かれますし、平等の立場ではないですよ!
一対一ということですからね」
「はあ、そうですか!では、全然見えないようにホテルの柱の陰からチラッと見るのはどうですか?分からないようにしますから?」
「しょうがないですわね!絶対に分からないようにお願いしますよ!」
「はい、有難うございます。見たらすぐ帰りますから……」
さて当日、
初めてお会いするご本人の匠さんが、私の前に姿を現しました。あまり背は高くなく中肥りで極普通の男性の感じでございました。
彼には少しの話がしたいと考えて、相手より少し早目の時間を指定して置きましたので、その事を話してから
最初、世間話して結婚は必要不可欠の男女間の事柄など、普通の会話でしたが、まあ、
お行儀よく受け答えはされていましたが、少し緊張していたのか、ワタクシがずっこけた話に持っていっても、表情が変わらないし、真面目なのか興味ないのか、つかみどころのない彼でした。
ワタクシ言いましたわ!
「ねえ、今、韓国映画の{冬のソナタ}って若い女性がよく観る映画ですが知っていますか?」と、尋ねてみると
「いえ、忙しくて観る時間もありませんので……」
「そう、私も実は観ていませんが、時々美容室の週刊誌やテレビで見ていると、主演の{ヨン様}を見る時、あの笑顔がとっても良いのよネ!あれに女性は参ってしまうのだと思うの……だから、笑顔は大切よ!」
「はい……」
少しはにかんだように答えられた。
(このまま、受動態でいくのかな?)
ワタクシはどうしても一抹の不安を消すことが出来ませんでしたの……。
今回紹介する薬剤師の彼女は福岡在住で、ご実家は内科クリニックの開業医であり、彼女の母親が宮崎出身との事でワタクシの相談所にお入り頂いた縁でございました。
しばらくすると、可愛らしい素敵な女性がにこやかな表情で駆け寄るようにして来られると、自分の方からご挨拶された。
「先生、今日はお世話になります。母が宜しくとの事でした。」
「わざわざ福岡からお越しくださってありがとう。今日は素敵な方で貴女のご実家と同じ内科医の匠さんが待っていましたよ!」
ワタクシは緊張している彼を和らげるためにも、少々誇張して彼の立場を紹介しましたのよ!
「こんにちわ……」
すると彼は声が届くか届かないかのような声で挨拶応えをしていたので自己紹介や少しのご縁の話などしてから
「じゃあ、匠さん、後は貴男にお任せするわよ!福岡からのお客様だと思ってね。あなたも福岡に長くいたから積る話もあるでしょう?」
と、云って初めて立ち上がろうとして辺りを見てびっくり(いつから来られたのだろう)
待合場所のホテルのロビーには年齢の入ったフランス人形のいでたちでウロウロしているのが見えましたの!まさしくオカアサマでした。
あくる日結局オカアサマよりお断りの電話がありました。
何故かと云うと?お二人のお話は進んだようですが、帰り際に彼女が言われた一言が気になったらしい???
二人でドライブした後、彼女は帰り際「じゃあ、ご縁が有ったらまたネ……」と云われてお帰りだったそうです。
その、縁が有ったら?と、云うのが親子の話で気にさわったようですございます。
「エッ、そんなことで? お相手の方は息子さんの判断に任せると云う意味ではないでしょうか?女性からは簡単に判断できませんことよ」
「……先生、そう仰いましても息子と話し合った結果ですから……」
「それとね、ワタクシ、オカアサマに申し上げておきますけど、このようなご縁を一発でお断りするということは、ご自分が選ぶ立場にいらっしゃるのですよ!上から目線ですネ」
「あら、どうしてでしょう?」
オカアサマは本当に意味がわからないと言う風に首を傾げましたの。
「男女ともですが、選ばれる立場の方が、気持ち良いということです!特に男性は男らしいじゃありませんか? 要するに、受け取り方ではオカアサマの息子さんは選ばれなかった!と、云うことになりますよ!一押しもふた押しもすることが肝心!」
「…………」
それから後、何回も何回もお合わせするのですが、ワタクシの思った通り、何時でもお断りが続きますの!
しばらくしてご紹介する方が無くなると、オカアサマから電話が入ったり、直接来訪されたり、それはそれはご自分の事のようにお励みでした!!
「内の子どもは真面目過ぎて困ります!患者さんには好かれるのですがね~エ」
「そうですね!患者さんと違うのですから……プライベート感覚で行かないとダメですよ、行動もね。自分本位ではいけませんことよ」
「そうですね~、今度言ってやりますよ!それと先生、うちの子、一番最初にお会いさせて頂いた、福岡の薬剤師のお嬢さんが一番良かったって云っているのですが、まだ、いらっしゃいますか?」
「エッ、もう3年経っているのですよ!あのような素敵な方は、すぐに引き合いがありますの!大手の会社にお勤めの方と結婚され東京に行かれましたよ!」
「そうですか、そうでしょうね、息子は勇気が無いので困ります」
「そうですネ、もう少し打ち解けられた方が良いですね!それと、結婚相談所は他にもたくさんありますから、何軒かお入りになった方が良いですね!」
「いえいえ、先生所だけ頼っているのですから、他の所にはいきません」
……と、言いながら、他の結婚相談所にも入っていらっしゃることが如実に分かってきましたのよ!? いえ、ワタクシそれがダメだとは思っていませんことよ!かえって進めているのですもの!どうにかしてもらいたいくらいですから……
そう、どうして分かったのですかって?
それはね、このような事は不思議なくらいどこかで分かって来ることってあるじゃないですか?そんな経験ありませんか?
ひょんなことで「同業者の方で問題にされて困っている」という話をされていたのをワタクシ、ロバの耳のようにして聞きましたの???
その話は、どうも様子から家庭的なものから、云われる内容から察して
『きっと、あのオカアサマに違いないわ』と、すぐ思いましたわ……
まだ、有りますの……
結局、何があったのか、その結婚相談所からは退所させられたとのことでした!
ひょっとして、ワタクシの所にはその後に来られたような気がしてなりませんでした。
ワタクシ! とことんやってやろうではないか!との思いでいましたが
それでも、お相手がいらっしゃること、その相手に不快な思いはさせたくないので、なかなかご紹介は無理でございましたわ!
オカアサマからも何も無くなりました。
しばらくして
風の便りで?耳にしたことは?
『結婚されて子供が生まれて離婚された』と云う話ちらほら……。
茶系統のレースをあしらったおしゃれな裾までの長いスカートドレスにハイカラな編み込帽子、背はあまり高くなく、ぽっちゃり型で一見、童話に出てくる魔法使いのおばあさんとフランス人形を、足して二で割ったような感じのオカアサマでございました。
オカアサマは独特な雰囲気を醸し出していることは確かで、そのオカアサマが来室
「こんにちは、お目にかかれてうれしくなりました。37歳になる長男がやっと結婚をする気になったのでお話を聞きに来ました」
そのオカアサマはにこにこして云われましたわ。
(ワタクシ、まあ、人当たりのよさそうなオカアサマですことと感じました)
「ようこそ、良く遠い所お出で下さいました。こちらをどうしてお知りになりましたか?」
「先日先生の記事が新聞に載りましたでしょ?あれから、いつも気になっておりましたから……早速伺いました!」
「あらー、そうですか!有難うございます」
(ワタクシも一応ビジネス感覚になる)
するとオカアサマはすかさず
「先生は本当の先生ですネ」
「エッ、本当の先生とは?何のことでしょう!私、先生とは全然云ってないけど、オカアサマが先に云われたのですよ!ワタクシそう見えましたか?」
と、ワタクシもつい云ってしまった。すると「いや、新聞で!」
「あら、そうでしたわね」
「いやね、最近は誰でも先生、病院の先生や学校の先生は分かるけど、結婚相談所なんかも先生、美容室も先生、と云うのですネ!」
「そうですか、確かに、先生は、先に生まれると書くけど、それは技術を身に付けたり、人より何かに優れる人を云うのではないですか?」
と、ワタクシは、さりげなく申し上げましたの!
本当にそうおもっているのですもの!
するとオカアサマは
「そう、そうですネ、そう考えると良いのですよネ ウフフ 」
また、不気味なウフフがでたな!と思いましたわ。
「ええ、ワタクシはそうだと思っていますよ。気にしたことないですから」
(案外、素直なおばさまオカアサマだわ……と、思うワタクシ)
すると、
「先生も教育者でいらっしゃったのですね。私の夫も教育委員会や中学校の校長をしておりました。主人の方は教育一家、私の実家の方は皆、兄妹も佐賀の親戚も医者の一家です」
(ははあ、このオカアサマそれを言いたかったのね!)
「そうですか」と、云うワタクシの言葉を掻き消すかのようにオカアサマは話し出した。
「お願いする長男は中学の時から寮生活をして福岡の有名私立学校にやりましたの……何故かと云いますとね。うちの子ども成績は抜群でしたが小学校5年生の時の先生との折り合いが悪くて、そりやあ、ひどかったですよ。鉛筆で小突かれたりしていたらしいいのです」
「あら、それは大変」
「そうでしょう?それは大変な目に遭いましたよ……それが女の先生ですよ。嫁にも行っていないらしいから、子供の気持ちなんてあまりわからないのですよね!」
(そうとばかりは言えないのだけどね)
思うところあるけど微笑みでうなずくワタクシ
「だから中学は思い切って県外の私立中高一貫の進学校にやりましたの……中学3年、高校3年だから6年も親も子も行ったり来たりの生活で大変でした」
「そうですか、結果的には念願のお医者様になられて良かったですネ」
「ええ、ええ、それは息子の努力ですよ。若いのですが、もうすぐ開業します……お金すごく要りますよ!でも、おかげさまで息子の方、今の病院でも一生懸命で人気があるのですよ。人気があるので色々な方からお話も来るのですが……」
「あら、それでは良いじゃありませんか?きっと良いお話でしょうから」
ワタクシは内心首を傾げましたわ。
「いえいえ、息子はそれが嫌いなのです!それとね先生、息子の相手に女先生だけは絶対ダメです」
「ああ、そうなんですか!」
ウフフ、とワタクシ笑ってしまいましたわ……
ここまで間が無く、聞くのに大変時間を掛けたが、聞かなくてはならない。でも、話を変えなくてはと思いました。
「ご子息は結婚相談所入会の事ご存じなのですか?」
「はい、息子は仕事がすべてみたいで忙しくしておりますので、私に任せるなんて言っていますから、大丈夫です」
「しかし、ワタクシが息子さんと会わないことには、何もわからないではありませんか?」
「先生それでは、そっと、息子の勤めている病院に行ってもらえないですか?」
「まあ、出張面接もしますが職場で面接は無いでしょう? それと他の相談所にもお願いしたらいかがでしょう」
とワタクシが云うとあわてて身を乗り出して両手を左右に動かしながら
「いえいえ、もうここだけです。先生だけにお願いしたいのです」
「そうではなくって、ワタクシの所は小さい結婚相談だから、入会されている方も少ないのですよ!だから、他の相談所にもお入りになっていた方が早道かも知れませんよ、と云うことです」
「まあ、先生そう仰らないで、うちの息子の面倒を宜しくお願いします」
(これは大変難しいな)
ワタクシここまでのやりとりでやっかいな予感がしました。
「先生、息子はもちろん、私に絶対の信頼を置いていますから、全部頼んだよ!と、云っているのですよ……心配いりません」
「いや、ご本人と面談しないことには何もわかりませんので、紹介しにくいのですよ」
「息子も忙しくて、ここに来る時間が無いと思いますよ。そのうちに連れてきますが、
すぐには無理だと思います。お金はいくらでもお支払いしますので宜しくお願いします」
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ワタクシ内心(これは困った依頼者に来ていただいたな?)と、思いながら次の話が甚だしい考えに驚いた。
「先生、条件がもう一つ、お嫁に来られる方はできたら県外がいいのですよ」
「それまたどうしてですか?近い方が何かと便利でしょう……」
「いえいえ、最近の嫁は、実家が近いとすぐ実家に帰るし、実家に入り浸りになってしまうらしいのですよ!だから、すぐには帰れない方が良いと思って……なるだけ遠くの方が希望です」
「はあーツ、そんなことないでしょう、そんな事云っていたら来る人いなくなりますよ、それは昔のドラマに出てくるような考えですよ!もっと気楽に行きましょう」
と、云うとオカアサマも、ちょっと自分の言い過ぎに気が付かれたのか?
「そうですね、ウフフ、先生のおっしゃるとおりに気楽にいきます」
「しかしね、オカアサマ、ワタクシご本人とお電話だけは致します事よ!」
「はい!それはどうぞ、息子は夜の時間はおりますので」
(夜の時間が空いていれば来られたらいいのに)
と思うがこの辺りから、自己流家庭の生き方があるのだろうと思うようになり、それではそれに挑戦してみようではないか?と考えるように頭を切り替えることにしましたワタクシでございました。
オカアサマはにこにこにこと、口元を横に広げて可愛らしく微笑み笑いをされるのが特徴で、彼女はこの笑いで何十年も余り苦労しないで過ごして来られたのだろうなあ~
仕方のない事ってあるのですわネ、 世の中何でも(特別枠)って云うのがあるではありませんか? まるで、おしかけ特別枠みたいなものです。
さて、息子さんへの夜の電話
「もしもし、匠さんですか?」
「はい」
「今日オカアサマとお会いしました、お節介焼きおばちゃんです。宜しく」
「はい、こちらこそ宜しく」
(随分とかぼそい声ね)
「ご結婚の意志がお有りなのですネ」
「はい……」
「ご本人の、ご希望があったらお聞かせいただきたいのですが?」
「いや、全部母に任せていますから……」
「あら、そうなのですか?ご自分のことなのに?…… 容姿とか、背の高さとか?頭の良い人とか?どんな雰囲気とか?無いのかしら?」
「はい、全て母の方で……」
「そう、そうなの……、貴男とお会いしていないから、貴男の雰囲気が少し分からないのだけど、それでいいのかしら?」
「はい、宜しくお願いします」
……やはり、オカアサマの云われる通りでした!
それからは全部オカアサマを通しての連絡でした。でも、やはり本人が一番知るべきだと思っているワタクシは彼にプロフイールを郵送する時は、宛名はオカアサマでなくせめて彼本人の名前にしましたのよ!
手紙が着いた頃に、すぐオカアサマから連絡が来るということは、信書の秘密などありやしない!最初はオカアサマが開封、本人が「それで良いよ」となるのではないかしら?
それからは何回も何回もご紹介お見合しましたわ!
一番最初のご紹介お見合は薬剤師の方でした。オカアサマは張り切っていらっしゃいましたわ!まるで自分の事のように……その時、
とても信じられないようなことでしたわ……オカアサマがワタクシにおっしゃいますの
「先生、明日のお見合にちょっと様子を見るために同席しても良いでしょうか?」
「ハッ、オカアサマが?」
「はい」
その時にはどこまで、非常識であろうとワタクシ怒りすら感じてしまいましたよ
「それはちょっと困りますわ、お相手の方、驚かれますし、平等の立場ではないですよ!
一対一ということですからね」
「はあ、そうですか!では、全然見えないようにホテルの柱の陰からチラッと見るのはどうですか?分からないようにしますから?」
「しょうがないですわね!絶対に分からないようにお願いしますよ!」
「はい、有難うございます。見たらすぐ帰りますから……」
さて当日、
初めてお会いするご本人の匠さんが、私の前に姿を現しました。あまり背は高くなく中肥りで極普通の男性の感じでございました。
彼には少しの話がしたいと考えて、相手より少し早目の時間を指定して置きましたので、その事を話してから
最初、世間話して結婚は必要不可欠の男女間の事柄など、普通の会話でしたが、まあ、
お行儀よく受け答えはされていましたが、少し緊張していたのか、ワタクシがずっこけた話に持っていっても、表情が変わらないし、真面目なのか興味ないのか、つかみどころのない彼でした。
ワタクシ言いましたわ!
「ねえ、今、韓国映画の{冬のソナタ}って若い女性がよく観る映画ですが知っていますか?」と、尋ねてみると
「いえ、忙しくて観る時間もありませんので……」
「そう、私も実は観ていませんが、時々美容室の週刊誌やテレビで見ていると、主演の{ヨン様}を見る時、あの笑顔がとっても良いのよネ!あれに女性は参ってしまうのだと思うの……だから、笑顔は大切よ!」
「はい……」
少しはにかんだように答えられた。
(このまま、受動態でいくのかな?)
ワタクシはどうしても一抹の不安を消すことが出来ませんでしたの……。
今回紹介する薬剤師の彼女は福岡在住で、ご実家は内科クリニックの開業医であり、彼女の母親が宮崎出身との事でワタクシの相談所にお入り頂いた縁でございました。
しばらくすると、可愛らしい素敵な女性がにこやかな表情で駆け寄るようにして来られると、自分の方からご挨拶された。
「先生、今日はお世話になります。母が宜しくとの事でした。」
「わざわざ福岡からお越しくださってありがとう。今日は素敵な方で貴女のご実家と同じ内科医の匠さんが待っていましたよ!」
ワタクシは緊張している彼を和らげるためにも、少々誇張して彼の立場を紹介しましたのよ!
「こんにちわ……」
すると彼は声が届くか届かないかのような声で挨拶応えをしていたので自己紹介や少しのご縁の話などしてから
「じゃあ、匠さん、後は貴男にお任せするわよ!福岡からのお客様だと思ってね。あなたも福岡に長くいたから積る話もあるでしょう?」
と、云って初めて立ち上がろうとして辺りを見てびっくり(いつから来られたのだろう)
待合場所のホテルのロビーには年齢の入ったフランス人形のいでたちでウロウロしているのが見えましたの!まさしくオカアサマでした。
あくる日結局オカアサマよりお断りの電話がありました。
何故かと云うと?お二人のお話は進んだようですが、帰り際に彼女が言われた一言が気になったらしい???
二人でドライブした後、彼女は帰り際「じゃあ、ご縁が有ったらまたネ……」と云われてお帰りだったそうです。
その、縁が有ったら?と、云うのが親子の話で気にさわったようですございます。
「エッ、そんなことで? お相手の方は息子さんの判断に任せると云う意味ではないでしょうか?女性からは簡単に判断できませんことよ」
「……先生、そう仰いましても息子と話し合った結果ですから……」
「それとね、ワタクシ、オカアサマに申し上げておきますけど、このようなご縁を一発でお断りするということは、ご自分が選ぶ立場にいらっしゃるのですよ!上から目線ですネ」
「あら、どうしてでしょう?」
オカアサマは本当に意味がわからないと言う風に首を傾げましたの。
「男女ともですが、選ばれる立場の方が、気持ち良いということです!特に男性は男らしいじゃありませんか? 要するに、受け取り方ではオカアサマの息子さんは選ばれなかった!と、云うことになりますよ!一押しもふた押しもすることが肝心!」
「…………」
それから後、何回も何回もお合わせするのですが、ワタクシの思った通り、何時でもお断りが続きますの!
しばらくしてご紹介する方が無くなると、オカアサマから電話が入ったり、直接来訪されたり、それはそれはご自分の事のようにお励みでした!!
「内の子どもは真面目過ぎて困ります!患者さんには好かれるのですがね~エ」
「そうですね!患者さんと違うのですから……プライベート感覚で行かないとダメですよ、行動もね。自分本位ではいけませんことよ」
「そうですね~、今度言ってやりますよ!それと先生、うちの子、一番最初にお会いさせて頂いた、福岡の薬剤師のお嬢さんが一番良かったって云っているのですが、まだ、いらっしゃいますか?」
「エッ、もう3年経っているのですよ!あのような素敵な方は、すぐに引き合いがありますの!大手の会社にお勤めの方と結婚され東京に行かれましたよ!」
「そうですか、そうでしょうね、息子は勇気が無いので困ります」
「そうですネ、もう少し打ち解けられた方が良いですね!それと、結婚相談所は他にもたくさんありますから、何軒かお入りになった方が良いですね!」
「いえいえ、先生所だけ頼っているのですから、他の所にはいきません」
……と、言いながら、他の結婚相談所にも入っていらっしゃることが如実に分かってきましたのよ!? いえ、ワタクシそれがダメだとは思っていませんことよ!かえって進めているのですもの!どうにかしてもらいたいくらいですから……
そう、どうして分かったのですかって?
それはね、このような事は不思議なくらいどこかで分かって来ることってあるじゃないですか?そんな経験ありませんか?
ひょんなことで「同業者の方で問題にされて困っている」という話をされていたのをワタクシ、ロバの耳のようにして聞きましたの???
その話は、どうも様子から家庭的なものから、云われる内容から察して
『きっと、あのオカアサマに違いないわ』と、すぐ思いましたわ……
まだ、有りますの……
結局、何があったのか、その結婚相談所からは退所させられたとのことでした!
ひょっとして、ワタクシの所にはその後に来られたような気がしてなりませんでした。
ワタクシ! とことんやってやろうではないか!との思いでいましたが
それでも、お相手がいらっしゃること、その相手に不快な思いはさせたくないので、なかなかご紹介は無理でございましたわ!
オカアサマからも何も無くなりました。
しばらくして
風の便りで?耳にしたことは?
『結婚されて子供が生まれて離婚された』と云う話ちらほら……。
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