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グランドセントピードのまぜそば
『グランドセントピードのまぜそば』3
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話を聞き終わると、シュリルは妙に分かった風で頷き、リプイは驚きで顎が外れる程に口を開けていた。
「ってことは、その謎の女性に異世界から飛ばされて来たってこと!
そんな魔法、聞いたことも無い! それに、国全体を覆うバリアを突破出来る程の力なんて……」
「俺も聞いたこと無い! だが、一つ分かるのはその女性がとても強そうってことだ。 一度手合わせしてみたいな」
「何考えてんのよ、この単細胞! そんな魔法使う奴なんか関わりたくない!」
「恐らく、彼女は神社の御祭神の……」
龍拓はポケットからスマートフォンを取り出すと、電源ボタンを押すが圏外と表示されている。
「流石にネットは繋がってないか……」
「手鏡なんて急に出してどうしたんだ?」
シュリルの質問に対して、龍拓はスマートフォンを指さしながら答える。
「これはスマートフォンっていう物で、本来は色んな調べものや通話が出来て便利なんだけど……。この世界には電波が飛んでいないみたいで使えないんだ」
すると、思い出したかのように龍拓は写真保存アプリを起動する。
「確か、昨日スクショした気が……」
「スクショ?」
訳の分からない言葉が飛び出して、シュリルとリプイは困惑して顔を見合わせた。
「あった!」
龍拓がスマートフォンの画面を見せると、そこには狐を抱きかかえる白い着物を着た女神の絵が映し出されていた。
「何だ?この動物は」
「この女性がもしかして、神社っていうところで見た……」
「多分、祭られていた命婦白狐様だと思うんだけどね」
「そういえば、龍拓は神社で何を願ったんだ?それを叶えるために行ったんだろ」
シュリルの問いかけに龍拓はハッとした表情を浮かべる。
「新たなジャンルのラーメンスープを作るために此処へ来たのか……」
龍拓は改めて、グランドセントピードの頭が無い胴体を見つめる。
「つまり、龍拓はラーメンのために来たんだな! より食いたくなったぞ!」
『ぐうぅぅぅぅ』
シュリルは腹から大きな音を出すと、すかさず質問した。
「そのラーメンには何が必要なんだ?」
「えっと、ラーメンはスープ、あと麺が必要だ。だから、出汁はグランドセントピードから作るとして、麺と茹でる鍋とかの調理器具が必要になるな」
龍拓はパンパンに詰まったリュックサックを降ろすと、チャックを開けて様々な調味料を取り出す。
「幸いにも調味料はある程度揃っている」
リプイは龍拓を眺めると、ローブの内ポケットから黄色いキューブを取り出して地面に投げた。
『ポォォォォン!』
破裂音と共にキューブから鍋とフライパン、包丁にまな板と謎の紋章が書かれた白いマットが出てきた。
「簡易的だけど、アイテムボックスに調理器具はあったわ」
龍拓は目をキラキラとさせて、調理器具を見つめる。
「アイテムボックスか! 本当にゲームみたいだな! このマットは何に使うんだ?」
「これは携帯型タヌーよ。紋章から炎が出るの」
「つまり、コンロってわけだな」
「龍拓、これで何とか出来そうか?」
「ああ! 出汁は何とかなる。あとは麺と茹でる水だな」
「水は近くに川があるからそこで取るといいわ。でも、麺はどうしよう……」
シュリルは思いついたように、リプイに満面の笑みで答えた。
「麵の代わりにシシュールを使うのはどうだ!」
「馬鹿! 形しか似てないじゃない!」
「そのシシュールって何なんだ?」
「説明より実物を見せた方が早い! 俺も簡易的にタンパク質が取れる。
龍拓、リプイ着いて来い!」
そう言うと、シュリルはグランドセントピードの頭を担いで森の脇道へ進んで行った。
龍拓はリュックサックを背負うと、シュリルの後に着いて行く。
「ちょっと、二人とも待ってよ! ハゾール!」
リプイの呪文でアイテムボックスが現れ、調理器具とグランドセントピードを吸い込む様にしまうと、急いで二人の元へ走った。
三人が深い森の獣道を進むと、幾つもの岩が現れた。
「アイツらは大体、岩陰に隠れているんだ!」
グランドセントピードの頭を降ろし、シュリルはワクワクした様子で岩を一つ持ち上げた。
「ほら、いっぱい居るぞ!」
≪キュイィィィイ!≫
甲高い音を発しながらウネウネと蠢く、一匹三十センチほどの鋭利な牙が口に二本生えたミミズがいた。
「うぅぅぅ。気持ち悪ぅ」
リプイはシシュールに夢中になる二人を置いて少し離れると、さり気なくグランドセントピードの頭をアイテムボックスへしまった。
「龍拓、こいつらは岩に叩きつけてそのまま食えばいい。俺が見本を見せるから食ってみろ」
そう言うと、シュリルは牙が無い方の端を掴み上げる。
『パァァァァァン!』
思い切り岩に叩きつけると、シシュールは口から緑の体液を出して動かなくなった。
「噛まれないように注意しろ」
シュリルは牙を抜くと、そのまま口に運び、啜るように食べた。
「うん! いい感じだ」
旨そうに食うシュリルを見て、思わず龍拓は息を呑む。
「叩きつけて食うだけだな」
恐る恐る掴み上げると、シシュールは激しく暴れて、龍拓の手首を噛もうとした。
「危ない! 早く叩きつけろ!」
『カブッ!』
龍拓は手首を噛まれ、急いで腕ごと岩に叩きつける。
『パァァァァァン!』
すると、口から体液を出しながらシシュールは力尽きて噛むのを止めた。
「大丈夫か!」
シュリルは急いで龍拓の手首を確認した。
「少し血が出たくらいで済んだか……」
傷口は浅く、ホッとしてシュリルはため息を吐いた。
「もう少し遅かったら肉が抉れて大変なことになっていたな」
「そんな危なかったのか! そういうことはもっと前に言ってくれ!」
「すまんな。リプイ頼む!」
「マガペ!」
呪文を唱えてリプイが杖を振ると、杖の先から色とりどりの美しい花が咲いた。
「少し染みるかも」
リプイは杖を手首に向けて、蜜を傷口に垂らした。
「うっ……」
傷はみるみる塞がり、あっという間に治ってしまう。
「これは凄い!」
「リプイは回復魔法に関しては一流だからな! それ以外の魔法はからっきしだが」
「ちょっと! 余計な事言わないでよ」
リプイは眼を尖らせてシュリルに怒った。
「さあ、龍拓食ってみろ!」
龍拓は牙を抜き、躊躇しながらも口を開けると、シュリルと同じように啜って食べる。
なんだ、このアルデンテな噛み心地は! まるでペンネの様な触感。
それに程良い塩加減がある……。少し茹でれば、麺として十分使えそうだ!
龍拓は笑みを溢し、シュリルを見る。
「イケるぞ、コレ!」
シシュールを食べて感動している龍拓に対して、リプイは顔を引き攣らせて距離を取った。
「じゃあ早速、シシュールを集めるぞ!」
そう言うと、シュリルは次々に岩を退かし、次々に潜んでいるシシュールを岩に叩きつけていった。
「こんなもんでどうだ?」
気付くと、シュリルの手には大量のシシュールがあった。
「ああ、これだけあれば三人分作れるだろう」
「三人分! まさか、私も食べるの?」
龍拓は戸惑うリプイにニコッと微笑む。
「勿論だ。意見は多い方が良い」
「そんな……」
『ぐぅぅぅぅぅぅ』
リプイは自分の腹が鳴り、恥ずかしそうに抑えた。
「腹も空いているみたいだし決まりだな! 龍拓、早速作ってくれ! 俺は水を汲んでくる」
「分かった」
リプイは再び、キューブを出して、呪文を唱えた。
そして、シュリルはアイテムボックスから樽を取り出すと、川に向かって走って行った。
× × ×
龍拓は、まな板に乗せられたシシュールの頭を黙々と切り落としていく。
「茹で時間は二分程度か……」
「おーい! 戻ったぞ!」
シュリルが、川から樽に水を汲んで戻って来た。
龍拓は戻って来たシュリルを見ると、目を見開く。
「さっきより体が小さくなってないか?」
龍拓の言葉にシュリルは自分の胸板を見つめた。
「ああ。さっきも話した通り、俺はタンパク質を接種することで肉体を強化する。
しかし、定期的に接種できなければ、この筋肉が自身を食らい続ける」
「ってことは……」
「最終的には萎んで死んでしまうな!」
「えぇぇぇぇ!」
リプイは困惑する龍拓の肩にそっと手を置いた。
「普通はこんな大事な話、初めにするでしょ。でも、この人は重要なことはいつも後で言うのよ。町はずれで初めて会った時、まるで栄養失調の人みたいにガリガリの状態で倒れていたところを助けたんだから」
リプイは初対面の記憶を思い出していた。
「そんなこともあったな! だが、そのお陰で俺とパーティーが組めたじゃないか!」
「好きで貴方と組まないわ! 私が回復魔法以外を使えれば……」
リプイは悲しそうに俯く。
「私は回復魔法が他の誰よりも優れている。でも、他の系統魔法が使えなかった。
だから、他の勇者には見抜きもされなかったんだ。
そもそも、勇者として国王に任命されている時点でかなり強いの。
怪我なんてそうそうしないし、回復魔法を使えない魔法使いは殆どいない」
「そんな時、俺とリプイは出会ったのさ! 俺も丁度、魔法使いが居なくて困っていたからな! これぞ運命ってやつだろ」
「普通、貴方とパーティーは組みたがらないわ!
だって、元々居た魔法使いはモンスターに食べられたんでしょ!」
「あぁ、アイツは本当に良いやつだったよ。
組んで十五分後にキマイラに食われちまったがな」
「この人、他の勇者と違う特異体質のせいで、強いモンスターを食べないとレベルアップしないのよ。そんなこと組んでから知らされて……。
毎回毎回、危険地帯に連れまわされる羽目になったわ!」
龍拓はリプイを不思議そうに見る。
「でも、なんでリプイは勇者とパーティーを組みたかったんだ?
きっと危険な目に遭いたくないなら町に残っていた方が良いのに」
「それは、今後の人生を安全に過ごすためよ。ロイアルワは他の二つの王国と比べてモンスターが出やすい。
だから、将来は比較的安全なベティーフ王国へ移住したい。
でも、考えることは皆一緒で大量の人が住んだ結果、土地の価格が爆上がりしたのよ。だから、勇者と高収入の仕事をして早くお金を貯める必要があるの」
「そうなのか」
「でも、この人が折角の思いして倒したモンスターを食べちゃうから、いつも貰える報酬が低いのよ」
そうリプイが話している最中、シュリルはアイテムボックスからグランドセントピードの胴体を出すと、まだピクピクと動く足を引きちぎって丸かじりし始める。
「ちょっと! 人が話している最中に……。また報酬が下るじゃない!」
他人事のようにかじっているシュリルに対してリプイは怒りを露にする。
「ちょっとくらい良いじゃないか。足はこんないっぱいあるんだし」
「そう言って、いつも食べちゃうじゃない!」
「ハハハハハハ! そんなこともあったな!」
「もうっ! そんなことしているから町の人から原人系勇者 なんて呼ばれちゃうのよ!」
龍拓はまた少し体が小さくなったシュリルを見つめる。
あまり時間を掛けない方が良さそうだな……。そうなると、スープ作りは別の機会にするか。
龍拓はシュリルの持ってきた樽の蓋を開けると、鍋に水を入れる。
「リプイ、火のつけ方を教えてくれ」
「私が付けるわ。多分、龍拓は魔力が無いから紋章を起動出来ない」
リプイは龍拓の声を聞き、携帯型タヌーの前に立つと手をかざした。
「ハガナテエッシ!」
呪文を唱えると、紋章が光って円形に蒼い炎が出た。
「どうして俺に魔力が無いって分かるんだ?」
「魔力は鍛えることで身に着くものなんだけど、それをやってないし……」
「そうか。じゃあ、火力はどうやって上げるんだ?」
「それも呪文を唱えるだけよ」
「試しに、その呪文を教えてくれ」
「だから、魔力が無いと扱え……」
リプイが言い切る前に龍拓が割り込む。
「良いから教えてくれ」
「わ、分かったわよ。手をかざしてラロットと言うの」
すると、龍拓はすかさず携帯型タヌーに手をかざす。
「ラロット!」
『ボワァァァァァア!』
炎は激しく燃え上がり、リプイは唖然と立ち尽くした。
「ハハハハハ! 魔法の才能も龍拓の方がありそうだな!」
リプイは振り向くとシュリルを睨みつけた。
「うるさーい!」
× × ×
To Be Continued…
「ってことは、その謎の女性に異世界から飛ばされて来たってこと!
そんな魔法、聞いたことも無い! それに、国全体を覆うバリアを突破出来る程の力なんて……」
「俺も聞いたこと無い! だが、一つ分かるのはその女性がとても強そうってことだ。 一度手合わせしてみたいな」
「何考えてんのよ、この単細胞! そんな魔法使う奴なんか関わりたくない!」
「恐らく、彼女は神社の御祭神の……」
龍拓はポケットからスマートフォンを取り出すと、電源ボタンを押すが圏外と表示されている。
「流石にネットは繋がってないか……」
「手鏡なんて急に出してどうしたんだ?」
シュリルの質問に対して、龍拓はスマートフォンを指さしながら答える。
「これはスマートフォンっていう物で、本来は色んな調べものや通話が出来て便利なんだけど……。この世界には電波が飛んでいないみたいで使えないんだ」
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「スクショ?」
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「あった!」
龍拓がスマートフォンの画面を見せると、そこには狐を抱きかかえる白い着物を着た女神の絵が映し出されていた。
「何だ?この動物は」
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「多分、祭られていた命婦白狐様だと思うんだけどね」
「そういえば、龍拓は神社で何を願ったんだ?それを叶えるために行ったんだろ」
シュリルの問いかけに龍拓はハッとした表情を浮かべる。
「新たなジャンルのラーメンスープを作るために此処へ来たのか……」
龍拓は改めて、グランドセントピードの頭が無い胴体を見つめる。
「つまり、龍拓はラーメンのために来たんだな! より食いたくなったぞ!」
『ぐうぅぅぅぅ』
シュリルは腹から大きな音を出すと、すかさず質問した。
「そのラーメンには何が必要なんだ?」
「えっと、ラーメンはスープ、あと麺が必要だ。だから、出汁はグランドセントピードから作るとして、麺と茹でる鍋とかの調理器具が必要になるな」
龍拓はパンパンに詰まったリュックサックを降ろすと、チャックを開けて様々な調味料を取り出す。
「幸いにも調味料はある程度揃っている」
リプイは龍拓を眺めると、ローブの内ポケットから黄色いキューブを取り出して地面に投げた。
『ポォォォォン!』
破裂音と共にキューブから鍋とフライパン、包丁にまな板と謎の紋章が書かれた白いマットが出てきた。
「簡易的だけど、アイテムボックスに調理器具はあったわ」
龍拓は目をキラキラとさせて、調理器具を見つめる。
「アイテムボックスか! 本当にゲームみたいだな! このマットは何に使うんだ?」
「これは携帯型タヌーよ。紋章から炎が出るの」
「つまり、コンロってわけだな」
「龍拓、これで何とか出来そうか?」
「ああ! 出汁は何とかなる。あとは麺と茹でる水だな」
「水は近くに川があるからそこで取るといいわ。でも、麺はどうしよう……」
シュリルは思いついたように、リプイに満面の笑みで答えた。
「麵の代わりにシシュールを使うのはどうだ!」
「馬鹿! 形しか似てないじゃない!」
「そのシシュールって何なんだ?」
「説明より実物を見せた方が早い! 俺も簡易的にタンパク質が取れる。
龍拓、リプイ着いて来い!」
そう言うと、シュリルはグランドセントピードの頭を担いで森の脇道へ進んで行った。
龍拓はリュックサックを背負うと、シュリルの後に着いて行く。
「ちょっと、二人とも待ってよ! ハゾール!」
リプイの呪文でアイテムボックスが現れ、調理器具とグランドセントピードを吸い込む様にしまうと、急いで二人の元へ走った。
三人が深い森の獣道を進むと、幾つもの岩が現れた。
「アイツらは大体、岩陰に隠れているんだ!」
グランドセントピードの頭を降ろし、シュリルはワクワクした様子で岩を一つ持ち上げた。
「ほら、いっぱい居るぞ!」
≪キュイィィィイ!≫
甲高い音を発しながらウネウネと蠢く、一匹三十センチほどの鋭利な牙が口に二本生えたミミズがいた。
「うぅぅぅ。気持ち悪ぅ」
リプイはシシュールに夢中になる二人を置いて少し離れると、さり気なくグランドセントピードの頭をアイテムボックスへしまった。
「龍拓、こいつらは岩に叩きつけてそのまま食えばいい。俺が見本を見せるから食ってみろ」
そう言うと、シュリルは牙が無い方の端を掴み上げる。
『パァァァァァン!』
思い切り岩に叩きつけると、シシュールは口から緑の体液を出して動かなくなった。
「噛まれないように注意しろ」
シュリルは牙を抜くと、そのまま口に運び、啜るように食べた。
「うん! いい感じだ」
旨そうに食うシュリルを見て、思わず龍拓は息を呑む。
「叩きつけて食うだけだな」
恐る恐る掴み上げると、シシュールは激しく暴れて、龍拓の手首を噛もうとした。
「危ない! 早く叩きつけろ!」
『カブッ!』
龍拓は手首を噛まれ、急いで腕ごと岩に叩きつける。
『パァァァァァン!』
すると、口から体液を出しながらシシュールは力尽きて噛むのを止めた。
「大丈夫か!」
シュリルは急いで龍拓の手首を確認した。
「少し血が出たくらいで済んだか……」
傷口は浅く、ホッとしてシュリルはため息を吐いた。
「もう少し遅かったら肉が抉れて大変なことになっていたな」
「そんな危なかったのか! そういうことはもっと前に言ってくれ!」
「すまんな。リプイ頼む!」
「マガペ!」
呪文を唱えてリプイが杖を振ると、杖の先から色とりどりの美しい花が咲いた。
「少し染みるかも」
リプイは杖を手首に向けて、蜜を傷口に垂らした。
「うっ……」
傷はみるみる塞がり、あっという間に治ってしまう。
「これは凄い!」
「リプイは回復魔法に関しては一流だからな! それ以外の魔法はからっきしだが」
「ちょっと! 余計な事言わないでよ」
リプイは眼を尖らせてシュリルに怒った。
「さあ、龍拓食ってみろ!」
龍拓は牙を抜き、躊躇しながらも口を開けると、シュリルと同じように啜って食べる。
なんだ、このアルデンテな噛み心地は! まるでペンネの様な触感。
それに程良い塩加減がある……。少し茹でれば、麺として十分使えそうだ!
龍拓は笑みを溢し、シュリルを見る。
「イケるぞ、コレ!」
シシュールを食べて感動している龍拓に対して、リプイは顔を引き攣らせて距離を取った。
「じゃあ早速、シシュールを集めるぞ!」
そう言うと、シュリルは次々に岩を退かし、次々に潜んでいるシシュールを岩に叩きつけていった。
「こんなもんでどうだ?」
気付くと、シュリルの手には大量のシシュールがあった。
「ああ、これだけあれば三人分作れるだろう」
「三人分! まさか、私も食べるの?」
龍拓は戸惑うリプイにニコッと微笑む。
「勿論だ。意見は多い方が良い」
「そんな……」
『ぐぅぅぅぅぅぅ』
リプイは自分の腹が鳴り、恥ずかしそうに抑えた。
「腹も空いているみたいだし決まりだな! 龍拓、早速作ってくれ! 俺は水を汲んでくる」
「分かった」
リプイは再び、キューブを出して、呪文を唱えた。
そして、シュリルはアイテムボックスから樽を取り出すと、川に向かって走って行った。
× × ×
龍拓は、まな板に乗せられたシシュールの頭を黙々と切り落としていく。
「茹で時間は二分程度か……」
「おーい! 戻ったぞ!」
シュリルが、川から樽に水を汲んで戻って来た。
龍拓は戻って来たシュリルを見ると、目を見開く。
「さっきより体が小さくなってないか?」
龍拓の言葉にシュリルは自分の胸板を見つめた。
「ああ。さっきも話した通り、俺はタンパク質を接種することで肉体を強化する。
しかし、定期的に接種できなければ、この筋肉が自身を食らい続ける」
「ってことは……」
「最終的には萎んで死んでしまうな!」
「えぇぇぇぇ!」
リプイは困惑する龍拓の肩にそっと手を置いた。
「普通はこんな大事な話、初めにするでしょ。でも、この人は重要なことはいつも後で言うのよ。町はずれで初めて会った時、まるで栄養失調の人みたいにガリガリの状態で倒れていたところを助けたんだから」
リプイは初対面の記憶を思い出していた。
「そんなこともあったな! だが、そのお陰で俺とパーティーが組めたじゃないか!」
「好きで貴方と組まないわ! 私が回復魔法以外を使えれば……」
リプイは悲しそうに俯く。
「私は回復魔法が他の誰よりも優れている。でも、他の系統魔法が使えなかった。
だから、他の勇者には見抜きもされなかったんだ。
そもそも、勇者として国王に任命されている時点でかなり強いの。
怪我なんてそうそうしないし、回復魔法を使えない魔法使いは殆どいない」
「そんな時、俺とリプイは出会ったのさ! 俺も丁度、魔法使いが居なくて困っていたからな! これぞ運命ってやつだろ」
「普通、貴方とパーティーは組みたがらないわ!
だって、元々居た魔法使いはモンスターに食べられたんでしょ!」
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「この人、他の勇者と違う特異体質のせいで、強いモンスターを食べないとレベルアップしないのよ。そんなこと組んでから知らされて……。
毎回毎回、危険地帯に連れまわされる羽目になったわ!」
龍拓はリプイを不思議そうに見る。
「でも、なんでリプイは勇者とパーティーを組みたかったんだ?
きっと危険な目に遭いたくないなら町に残っていた方が良いのに」
「それは、今後の人生を安全に過ごすためよ。ロイアルワは他の二つの王国と比べてモンスターが出やすい。
だから、将来は比較的安全なベティーフ王国へ移住したい。
でも、考えることは皆一緒で大量の人が住んだ結果、土地の価格が爆上がりしたのよ。だから、勇者と高収入の仕事をして早くお金を貯める必要があるの」
「そうなのか」
「でも、この人が折角の思いして倒したモンスターを食べちゃうから、いつも貰える報酬が低いのよ」
そうリプイが話している最中、シュリルはアイテムボックスからグランドセントピードの胴体を出すと、まだピクピクと動く足を引きちぎって丸かじりし始める。
「ちょっと! 人が話している最中に……。また報酬が下るじゃない!」
他人事のようにかじっているシュリルに対してリプイは怒りを露にする。
「ちょっとくらい良いじゃないか。足はこんないっぱいあるんだし」
「そう言って、いつも食べちゃうじゃない!」
「ハハハハハハ! そんなこともあったな!」
「もうっ! そんなことしているから町の人から原人系勇者 なんて呼ばれちゃうのよ!」
龍拓はまた少し体が小さくなったシュリルを見つめる。
あまり時間を掛けない方が良さそうだな……。そうなると、スープ作りは別の機会にするか。
龍拓はシュリルの持ってきた樽の蓋を開けると、鍋に水を入れる。
「リプイ、火のつけ方を教えてくれ」
「私が付けるわ。多分、龍拓は魔力が無いから紋章を起動出来ない」
リプイは龍拓の声を聞き、携帯型タヌーの前に立つと手をかざした。
「ハガナテエッシ!」
呪文を唱えると、紋章が光って円形に蒼い炎が出た。
「どうして俺に魔力が無いって分かるんだ?」
「魔力は鍛えることで身に着くものなんだけど、それをやってないし……」
「そうか。じゃあ、火力はどうやって上げるんだ?」
「それも呪文を唱えるだけよ」
「試しに、その呪文を教えてくれ」
「だから、魔力が無いと扱え……」
リプイが言い切る前に龍拓が割り込む。
「良いから教えてくれ」
「わ、分かったわよ。手をかざしてラロットと言うの」
すると、龍拓はすかさず携帯型タヌーに手をかざす。
「ラロット!」
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「ハハハハハ! 魔法の才能も龍拓の方がありそうだな!」
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「うるさーい!」
× × ×
To Be Continued…
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いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている.
気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。
途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。
「ドラゴンがお姉さんになった?」
「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」
変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。
・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
ノースキャンプの見張り台
こいちろう
児童書・童話
時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。
進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。
赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。
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