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7.スイート・キング3

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「これから、どうする?」
「うーん。乗りたかったアトラクションは、ほとんど乗れたと思います」
「再入場できるみたいだから、外に出てみる?
 暗くなる頃に、また戻ってこよう」
「いいんですか?」
「うん。イルミネーションが見たいんじゃないかと思って」
「見たーい。見たいです」
「だと思った」
「暗くなってから、もう一回、観覧車に乗りたい!」
「うん。いいよ」

 この遊園地の近くに、ずっと気になっていた美術館がある。礼慈さんに言ってみたら、「行こうか」と言ってくれた。
 大阪にある「太陽の塔」を、そのまま小さくしたようなオブジェがあった。それから、「太陽の塔」になれるパネルがあった! もちろん、穴に顔を入れて、礼慈さんに写真を撮ってもらった。わたしのスマートフォンで撮ってもらったから、すぐに、歌穂に送れた。数分くらいで、『おもしろすぎるんだけど』と、返事が返ってきた。
 キーホルダーとか、ポストカードとか、いろいろ買いこんでしまった。

 美術館のすぐ横にある、緑地にも行った。礼慈さんの車は、この緑地の駐車場に停めさせてもらっていた。
 芝生を、のんびり歩いた。古民家があった。丘と、展望台も。
 木のベンチに座った。まだ寒いけど、いい風が吹いていた。

「すてきなところですね」
「うん」
 小さな女の子が、わたしの目の前を歩いていった。お母さんと、お散歩をしていた。よちよち歩きだった。
「かわいい……」
「子供は好き?」
「もちろん。そうじゃなかったら、学童保育のバイトなんか、しません」
「だよな」
「あのね。教員免許を持ってるから……。ほんとは、教師になろうかって、悩みました」
「えっ」
「『えっ』って、感じですか。やっぱり」
「いや。俺の勘違いかもしれないけど。在学中に、教員免許が取れる大学って……」
「国立の、女子大です」
「すごいな」
「すごくないです。たまたま、受かっただけです」
「たまたまで受かるほど、偏差値は低くなさそうだけど」
「いいんです。大学なんて、出ちゃったら、それで終わりです。わたしみたいに、就職に失敗した人間からしたら。
 わざと、小さい会社を選んだこと。あの時までは、失敗したとは思ってなかったけど……。失敗しちゃった、ってことですよね」
「それは……。俺からは、なんとも」
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