犯人aの裁き

華図

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第3章 告白と諦め

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昨日は、しんどかった。中村が突然捕まった。訳がわからない。ただ、この出来事をノートにまとめていたはずがそのノートをなくしてしまった。欠席していた人に見せることができない。まぁとりあえず山場は越えた。また平和な日常が戻ってくるならば、それでいい。結局、俺の例のノートを拾ったのは誰だったのだろうか。。今から本田と映画を観に行く。地獄だ。俺は自転車に乗って集合場所の駐輪場へ向かった。先に本田は着いていて、「ごめん、待った?」と声をかけた。「いや、全然!ちょっと早く来すぎただけ!」本田はスマホをいじりながらそう言った。すぐに映画館に向かった。「昨日の件、どう思う?」本田が問いかける。「本当に中村君なのかな?そんなことするようなー」本田は続けた。俺は適当に相槌をうつ。映画館に到着し、早速チケットを買ってスクリーン4に向かう。「どんな映画だろうねー」本田はずっとしゃべっている。うるさい。俺たちは席に座った。映画が始まる。
映画は、思いがけない最後を迎え終結した。あたりだった。やはり、あの監督だけある、面白い。しかし、コーラLはデカイ。飲み過ぎで今にも漏らしてしまいそうなぐらいの尿意に晒されていた。スクリーン4を出てすぐのトイレは入り口を飛び出て列ができるくらいの混み具合だった。流石に土曜日は人が多い。「ねぇ!地下のトイレなら空いてるよ!」本田が言った。「ごめん!連れてって!」思わず声が出た。本当にダメだ。気分が悪くなって来た。俺たちは混み混みのエレベーターに駆け込んだ。地下1階のボタンはまだ押されていなかった。「ピッ」本田が押してくれた。無表情なエレベーターの音声が1階1階降りていく人達にその階数を告げる。窓際のベビーカーからは、赤ちゃんの泣き声が聞こえた。うるさい。邪魔だ。そう思いながら、エレベーターは1階に到着した。スーパーマーケットがある1階で、本田と俺以外は全員降りていった。「大丈夫?漏らしてない?」冗談交じりに聞いてくる。「大丈夫だよ!」愛想笑いを添えながら答えた。「ピーンポーン、、地下一階です。」そうアナウンスが流れて、2秒後くらいにゆっくりとドアが開いた。この建物の地下1階以下は改装工事がされておらず、不良がスプレーで書いたドクロや灰色でヒビが入った壁が印象的だった。「どこ?トイレ!」俺はそう本田に言った。「こっち!」そう言った本田の目線の先には周りの環境に全く溶け込めていないような白い壁の綺麗なトイレがあった。中に入るとアロマの香りがした。俺はすぐさまズボンのチャックを開け用を足し始めた。「あー!!間に合った!」思わず声が出た。「よかったね~」本田の返答が聞こえた。「ねぇ、昨日の会議はあんな感じで終わっちゃったけど僕気づいちゃったんだよね。」続けて本田は後ろで細かく歩きながら話す。「何を?」俺は、何も考えず適当に返答した。「岩田君、猫を殺してるところを見たって言ってたよね」俺は、自然と汗が出ていた。もう尿は出し切り、ズボンを上げたままで、立ち尽くしマジマジと話を聞く。「岩田君、あの時犯人は大きかった、だから同級生の可能性はなく、みーちゃんを殺した犯人との同一性は感じられないと主張したよね」「う、うん」俺は、咳き込みながら答えた。「で、結局最近の猫殺しの犯人は中村君だったと判明した。」「う、うん」気がつくとさっきと全く同じ返答をしていた。「けど、中村君って背は岩田君より小さいよね。岩田君が見た猫殺しの犯人とどう考えても重ならない。」「いや、それは」「それは、君がみーちゃんを殺したから」本田は確かにそう言った。俺は咄嗟の判断で逃げ出そうとした。そう、本田の推理は正解だ。次の瞬間、右足の太ももに衝撃が走った。ドサッという音とトイレのセンサーが反応し、水が流れる音がした。俺は倒れ込んだ。本田は、俺の顔のすぐ横に立ち尽くす。俺は本田の足を強く掴んだ。「本田、、、どうして、、刺した?」足はこれまでにない痛みに侵されたが、まだ意識ははっきりしていた。だからこそ、考えてしまった。もう、陸上をすることなんて出来ないことを。「あ、それと、岩田君の愚痴ノートを届けたのはこの僕だよ。イヤ~すごい内容だった。笑っちゃったよ。」「やめろ!」「表と裏が激しいね~。やっぱりイケメンは性格が悪いものなの?」本田は笑いながら喋り続ける。「君は、ナルシストで嫉妬深く、少しのストレスで死を結びつけたくなるんだよ。君の周りにいる人が何度君に殺されたことか。」「どうして?どうしてダメなんだよ!実際に殺してるわけじゃないだろ!?」「それは、君が今の社会的地位を保護するためだろ?幼稚園のあの時、まだそんなこと考えていない時の君は簡単にウサギを殺した。君はあの愚痴ノートを届けた人を見つけたら殺す気だったんだろ?本気で。自分の立場を脅かす存在だからといって。つまり、君はこれから先、自分の納得いく社会的地位を確立するためになら誰でも殺すんじゃないか?」本田はそう言いながら俺のカバンの中の中にある小さなポケットからカッターナイフを取り出した。「ほら、やっぱり。危なかったよ。僕がバカだったら今頃君は僕を殺してどこかに逃げているはずだ。」本田がそう言う頃、出血量が多すぎて視界が揺らぎ始めた。真っ白で綺麗なトイレの床は入り口付近まで真っ赤に染まっている。「誰かぁぁぁぁぁ!」俺は自分の声にびっくりするぐらいの大きさで叫んだ。本田は俺の太ももからナイフを勢いよく抜き取った。俺は声にならない声で叫ぶ。次の瞬間あいつはおれの背中にナイフを突き刺した。俺は痛すぎて痛さを忘れた。「ぷっ!ハハハハハ!」本田はもっと大きな声で笑い始めた。「誰も来ないね!!」そう言う。「な、んで、、」俺は聞こえないくらいのかすかな声で呟いた。本田はもっと笑いながら「誰も!来ないのは!君のせいだよ!!君がナイトショーが良いって!言ったからでしょ?!もう!地下には!!」そこで、静かになった。すると、左耳からかすかな鼻息を感じた。本田は俺の耳に口をつけながら叫んだ。「僕と岩田君の!ふ、た、り、きー」キーンと言う耳鳴りがあいつの声を断ち切る。俺は、、俺は、、、まだ、死にたくない!!「あぁぁぁぁぁぁぁ!!あぁぁぁぁぁぁぁ!あぁぁぁぁぁぁぁ!」叫んだ!声にならない声で。すると耳たぶを引っ張られる。水から出たように、一瞬だけ、音が聞こえた。まだ、、生き残れる、かも、、、「うるさい」本田は、そう喋りながら刺したナイフを回し始めた。体をつら抜いたナイフが肉を絡め取って行く感覚がした。視界が歪んでいく。俺の心臓や意識や夢、人生。そして積み上げだ物は途絶えた。それは、俺にとって最も思いがけない終結だった。
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