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2 弥生ちゃんのお仕事
しおりを挟む午前3時。弥生の部屋。
まだ日も出ていないのにガサゴソと起き出す弥生。年をとったからではない
ベッドからはい出てキッチンに行き珈琲豆をサイフォンにセットする
リビングに移動すると整頓された部屋のキャビネットの上でお香にマッチで火をつける。部屋に煙が立ちこめる
珈琲の薫りとお香の香りが入り混じり異様な匂いがする
弥生はこの匂いがたまらなく好きだ
ゴボゴボという音が部屋に響き渡り終えるとキッチンに戻りブルーのストライプのマグカップに珈琲を注ぐ。弥生のお気に入りだ
ベンチチェアに座り両手でそれを包み込むように持ちながら入れたての珈琲をすする
二口飲むとテーブルにそれを置き部屋の片隅に置いてある大きな水晶玉の前に座る。手をかざしながら目を閉じ宇宙と交信し始める
「大いなる宇宙の神よ、私は貴方から生まれてきました。今日も我に幸あれ!神の御加護を」
両手を水晶から離し天に向けて宇宙を仰ぐ
宇宙との交信が終わるとキャビネットの引き出しから何故か聴診器を取り出し床にそれを押し当てる
「貴方は少し弱っているみたいね?」
地球との対話も忘れない
他人がみたら何とも奇妙な行動だがこれが弥生の当たり前の日課なのだから仕方ない
一通りの「儀式」を終えやっと携帯を手にするとインスタを開ける
ー成功へのプロセスー
の文字
(今日はこれか?)
葵(ひとみ)が毎日アップしているインスタの投稿だ
弥生はこれも楽しみの一つだった
(流石キャリアウーマン!勉強になるなぁ)
読む度に説得力のあるその内容に感心するのである
携帯と向き合う時が唯一弥生が現実に引き戻される時間だった
すっかりお日様もお目覚めしカーテンを開けるとお日様に向かって感謝の言葉
「今日も光り輝いてくれていてありがとう!」
それが終わるとようやくシャワー室へ行った
お浄めの時間だ
頭の天辺から足の爪の先迄「塩」で浄めてから身体を洗う
これも又弥生にとっては当たり前の「儀式」であった
シャワーから上がると身支度を整える
洋服を着ると再びキッチンに行き流し台の下の棚から薬入れを取り出す。その中から10種類14個の薬を取り出し口に流し込む
「うぇー気持ちわりぃ。これでお腹一杯になるわ」
とやっと飲み込んだ薬に文句を言う
それが終わると水晶の前に再び座る
般若心経が流れてくる
弥生のお仕事の始まり
仕事用の携帯の着信音だ
「はい。雲欄(うんらん)です」
「もしもし、雲欄先生初めまして」
「初めまして。今日はどんなご相談でしょう?」
「先生…私…子供2人いて既婚者同士でお付き合いしてるんですが彼が最近冷たいからもう終わりかなって思って」
「そうですか。フルネームと産まれた時の名前を教えていただけますか?」
「田中今日子。旧姓は田辺です」
「分かりました。お相手のお名前を教えていただけますか?」
「はい。清水翔です」
「失礼ですがお相手様は生まれた時からお名前変わってないですか?」
「はい。変わっていません」
「わかりました。水晶からのお告げを聞いて見ましょう。お待ち下さいね」
弥生は優しく言うと水晶に手をかざし目を閉じて集中する
10秒程するとゆっくりと目を開けて電話の向こうに話しかける
「お待たせしました。大丈夫!翔さんは奥様よりも貴方の事の方が好きですよ。水晶からのお告げです」
「本当ですか!?嬉しい!先生っ、有り難うございます!」
「神の御加護を」
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