デキナイ男と病気の女

Yachiyo

文字の大きさ
9 / 15

9 二度目の衝撃

しおりを挟む

古びた家が立ち並ぶ下町の路地裏

弥生の後ろから少しおどおどしながら歩く葵(ひとみ)

「Bar雅」の看板

「ここだよ」

弥生が言い重たい木製のドアを開ける

カランコロンという音

店に入るとカウンター越しに

「あらー、弥生ちゃん、いらっしゃい。和茂ちゃん来てるわよ」

ママが言う。

「ママ、友達連れて来た」

「あら、珍しい!」

弥生の後ろに隠れるように立たずんでいた葵(ひとみ)がママをみてペコリとお辞儀をした

「悪友の葵(ひとみ)ちゃん」

弥生が言うと

「あらー美人さんっ」

ママがかん高い声で言った。

店の一番奥のジュークボックスの隣の席に一人で静かに呑んでいた和茂を見つけると弥生と葵はゆっくりと歩いて近づいた

和茂は2人をチラッとみて

「遅かったな」

不機嫌そうに言った

「ごめんなさい。電車が遅れたのよ」

弥生は弁解しながら和茂の隣に座る

葵(ひとみ)は珍しい物でも見るかのように和茂を見ると立ったままで、ニコっと微笑みながら

「初めまして。渋谷葵(しぶたにひとみ)、葵(あおい)と書いてひとみです」

自己紹介し、和茂の向かい側に座った

すると皆が落ち着く間もなく和茂に向かって言った。

「本物ですか?それ?」
「???」

弥生も和茂も意味が分からずきょとんとしている

意味不明だ

「髪、触ってみて良いですか?」

葵(ひとみ)が和茂に言った

「あっ…うん…」

余りに突然の事で動揺したが和茂は気を取り直して

「どーぞ」

葵(ひとみ)の前に頭を突き出した

すると、葵(ひとみ)は和茂の髪の毛をむんずとわしずかみにし思いきり引っ張った

「本物だ!」

「でしょ!?」

と和茂

全く破天荒な女だ

ママがオーダーを取りにテーブルまでやってきた

「弥生ちゃんいつものでいい?」
「はい。あとEの3番」
「わかったわ。お友達は?」
「私は、赤ワイン、デキャンタでお願いします」

ママがカウンターに戻ると、葵(ひとみ)が自分のバッグの中から、おもむろにコジャレた模様の小さな包みを出した

「これ、さっき渡し忘れてたんだけど弥生にお土産」

そう言って弥生にその小袋を手渡した

「えっ?何かしら?私は何もあげる物ないわよ」

と言いながらその包みを弥生が開けようとすると葵(ひとみ)が

「あっ、帰ってからゆっくり見て」

ウインクをしながらそれを止めた

ママがウーロン茶と赤ワインを持ってきた

店にはトゥルーが流れていた

「それにしても初対面で髪引っ張る人いる?」

すっかり打ち解けた和茂が葵(ひとみ)に言う

「居ないわよね?普通」

弥生が相づちを打つと

「前にも合ったな。こういう衝撃。なっ?」

和茂が弥生を見て言った

「何よ?知らないわよ」

弥生は少し慌てて言う

すると和茂がすかさず

「この人、初対面で、僕におっぱい触らせたの」

親指を立てて弥生に向けた

「もう、言わなくていいわよ。その話は」

と弥生

「僕を誘惑してきたの」

誇らしげに言う和茂

「違うわよー。可哀想なオジサンをからかってみただけよ」
「あれは絶対誘惑だった」
「もう、いいってば。昔の話」

弥生がそっぽを向いて苦笑いをした

「所で葵(ひとみ)ちゃんは東京出身なの?」
「はい。吉祥寺です」
「えっ?本当に?僕もだよ」

和茂と葵(ひとみ)は仕事の話でも意気投合し、かなり盛り上がっていた

「葵(ひとみ)ちゃんは、沖縄料理好き?」
「はい!大好きです!」
「近くに有るんだ。次行こう!」

と和茂が勝手に決めたので

「今日はもう時間遅いんじゃない?葵(ひとみ)、ここから遠いのよ。もう10時じゃない?」

弥生が二次会を阻止するかのように言う

が、葵(ひとみ)も

「私、大丈夫です!」

和茂に賛同した。

そうと決まれば話は早い。和茂が先に席を立ちカウンターへお会計を済ませに行き店を出ようとしたので弥生も葵(ひとみ)も慌てて出口の方へ歩いていく

「楽しそうだったわね?和茂ちゃん」

ママが言う。

弥生は何とも複雑な気持ちだったがそれを押さえて

「有り難う。又ね」

ママに言って店を出た
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙
恋愛
剣の名家にして、国の南側を支配する大貴族フォルス家。 そこの三男として生まれたノヴァは一族のみが扱える秘技が全く使えない、出来損ないというレッテルを貼られ、辛い子供時代を過ごした。 大人になったノヴァは小さな領地を与えられるものの、仕事も家族からの期待も、周りからの期待も0に等しい。 しかし、そんなノヴァに舞い込んだ一件の縁談話。相手は国の北側を支配する大貴族。 フォルス家とは長年の確執があり、今は栄華を極めているアークゲート家だった。 しかも縁談の相手は、まさかのアークゲート家当主・シアで・・・。 「あのときからずっと……お慕いしています」 かくして、何も持たないフォルス家の三男坊は性格良し、容姿良し、というか全てが良しの妻を迎え入れることになる。 ノヴァの運命を変える、全てを与えてこようとする妻を。 「人はアークゲート家の当主を恐ろしいとか、血も涙もないとか、冷酷とか散々に言うけど、 シアは可愛いし、優しいし、賢いし、完璧だよ」 あまり深く考えないノヴァと、彼にしか自分の素を見せないシア、二人の結婚生活が始まる。

君までの距離

高遠 加奈
恋愛
普通のOLが出会った、特別な恋。 マンホールにはまったパンプスのヒールを外して、はかせてくれた彼は特別な人でした。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

処理中です...