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10 弥生の形見
しおりを挟む「雅」を出ると大通りまで歩きタクシーを拾った。3人でタクシーに乗り込む
「二丁目まで」
和茂が言った
5分程した所でタクシーから降りると
「沖縄料理 めんそ~れ」の看板
「ここ、ここ」
和茂が手招きする
店に入ろうとすると
「ちょっと待ってて下さい」
沖縄情緒漂う外観を気に入った葵(ひとみ)が、店の写真を撮る
「インスタにアップする」
上機嫌だ
のれんを潜ると大きな水槽で熱帯魚が泳ぎ、三線の音色が聞こえる店内
店の奥から鉢巻姿の年配の男が
「よっ!久しぶりだね!」
和茂に向かって言った
どうやら此処でも常連客のようだ
和茂が
「ここにしようか?」
座敷を指さしたので皆で靴を脱ぎ座敷に上がる
「ソーキ山盛りと泡盛ストレートで。氷入れないでよ」
和茂が念を押す
「私も泡盛呑みたぁーい」
と葵(ひとみ)
「ウーロン茶で」
と弥生
オーダーの品も揃うと、益々和茂と葵(ひとみ)は盛り上がっていた
「僕はね、3回とも奥さんが男作って捨てられてるの。葵(ひとみ)ちゃん、4番目の奥さんになってくれる?まず一回目はね…」
和茂が息急き切って話すので
「何言ってるの?デキナイくせに。葵(ひとみ)、この話、あと3万回聞く事になるわよ」
弥生はチャチャを入れるのが精一杯だった
完全に疎外感を感じる
弥生はそれを隠すかのように2人の間に割り込んだ「「」」
「あのさ、葵(ひとみ)?和茂さんと連絡先交換してくれない?」
「何でよ?弥生」
葵(ひとみ)が不思議がったので
「ほら…私に何かあった時の為に…。ねっ?いいでしょ?和茂さん?」
全く持って気持ちとは裏腹の言動だったが
「いいよ」
和茂が答えた
「あっ、私、携帯充電切れた」
葵(ひとみ)が困った様に言ったので
弥生はガサゴソと自分のバッグをあさり底の方から万年筆を取り出した
割り箸の袋を広げるとそこに和茂の携帯の番号を書いて葵(ひとみ)に手渡した
「私に何かあった時には宜しくお願いしますね」
弥生が言い終わると
「これも持っていて」
と万年筆も一緒に葵(ひとみ)に渡した
「えっ?これ?大切な物じゃないの?」
葵(ひとみ)が万年筆を手に取る
良く見ると、Hayatoの文字が刻まれている
「Hayato?…」
と葵(ひとみ)が言いかけたが、和茂を気遣い止める
「うん。大切だから持っていて欲しいの。早いけど私の形見にして」
「う…うん…」
葵(ひとみ)は少し困った様子だったが弥生に言われるがままに万年筆を受け取ると自分のバッグの外ポケットに無造作に差し込んだ
「大変!もーこんな時間!」
葵(ひとみ)が慌てて言ったので時計を見ると11時半だ
「ごめんね。遅くなっちゃったわね。葵(ひとみ)、今日家に泊まって行かない?」
弥生が誘うと
「ごっめぇーん。明日、360°のbirthdayなのよ。だから今日は帰るわ」
弥生の誘いを断った
弥生は自分から誘っておいたくせに何だかホッとしていた
和茂がお会計を済ますと3人は店を出た
「葵(ひとみ)ちゃん?なにで帰るの?」
和茂が心配そうに聞く。
「私駅までタクシーで。まだ電車ありますから。和茂さん、今日はご馳走様でした」
葵(ひとみ)はそう言うとタクシーを拾い帰って行った
よろけて歩く和茂の身体を弥生が支えながら夜道を歩く。まるで介護状態だ
「感じ良い子だったな」
和茂が嬉しそうに言った
「当たり前よ。私の友達だもの」
弥生がやっとの思いで言ったのに
「結構強かったぜ。引っ張る力」
益々嬉しそうに言うので、弥生は思い余って
「何よ!M男!しかも、自分の事、『僕、僕』って!貴方、タイプの人の前だと自分の事『僕』って言うのよね!」
全く持って分かりやすいオヤジである
「えっ?『俺』そんな癖あった?」
ヘラヘラと笑いながら言う和茂に腹が立った弥生は
「私が死んだら付き合えば良いじゃない?」
とつい口が滑って思ってもいない言葉を投げ掛けた
すると
「えっ!?いいの?」
予想外の返答に
「何よ!!それっ!!」
と声を荒げた
「だってさ、好きな人には幸せになって貰いたいと思わない?」
和茂が言ったか言わないうちに、弥生の平手が和茂の顔面めがけて飛んでいた
「痛ってぇー」
和茂は左頬を押さえた。
「全くデリカシーの欠片も無い人ね!!」
そう言い放つとよろけて歩く和茂を置き去りにして家路に着いた
玄関のドアを勢い良く開けローヒールを投げ出し部屋に入る
そのままベッドに飛び込む弥生の目には涙が光っていた
遠くでけたたましく鳴り響く救急車のサイレンの音がやけにうるさく感じた
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