カトレアの香る時3【星の見えない夜に】

八千代 サラ

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505号室

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-スターリースカイ-

西日が差し込む

10階の廊下

蘭子と仲村居る

「片っ端から当たるわよ!」

「ウィッス」

1001号室のインターホンを押す蘭子

誰も出ない

1002号室のインターホンを押す蘭子

「はい」

「恐れ入ります。矢口美穂さんのお宅でしょうか?」

「矢口?美穂?」

中からドアを開けて住人が出て来る

「どなた?」

「警視庁の小白川と申します」

蘭子、警察手帳を見せる

「警察?あっ、事件の事?全く物騒だわ。自分のマンションで殺人事件が起きるなんて」

「こちらの階に矢口美穂さんていらっしゃいませんか?」

「この階に矢口さんなんて居ないわよ。あっ、もしかして、ひなたちゃんのお母さん?」

「そうです」

「それなら505号室ですよ」

「505号室?!」

「ええ」

「ありがとうございました」

蘭子と仲村、階段で5階に降りながら

「美穂さん何であの日、10階って言ったんスかね?」

と仲村

「益々匂うわね」


505号室の前に着く

インターホンを押す

インターホン越しに

「はい。どちら様ですか」

「4階の小白川蘭子です」

「あら、小白川さん。少しお待下さい」

ドアが開き美穂が出て来る

「どうしてここが?」

「10階の住人の方に聞きました。お住まい10階じゃなかったんですね」

「えっ、えぇ......」

美穂、気まずそうに言う

「職場の薬局にお邪魔したらもう帰られたと伺ったもので。今お時間大丈夫ですか?ちょっと星野さんの事でお話聞かせて頂きたいのですが」

「は、はい。どうぞ」

美穂、蘭子と仲村を家の中に招き入れる

-リビング-

木製の家具で統一された明るい室内

キャビネットの上にひなたの写真が多数置いてある

蘭子、それらを手に取って見る

「ひなたちゃん、可愛いですね」

と蘭子が言う

「ありがとうございます」

と美穂

蘭子、部屋を見渡す

ひなたと佑樹の姿は見当たらない

ソファーに案内される蘭子と仲村

「ひなたちゃんは今どちらに?」

仲村が聞く

「ちょ、ちょっとお買い物頼みまして」

美穂、話を反らす

「一人でお買い物ですか!」

蘭子が聞くと

「え、えぇ。少しお待ち下さいね」

明らかに何か隠している様子の美穂

美穂がキッチンで緑茶を淹れて持って来る

蘭子と仲村の前に置いて向かいに座る

「風邪治りました?風邪には温かい緑茶も良く効くんですよ」

「ええ。ありがとうございます。風邪は大分良くなりました。お陰様で薬が効いた様です」

「それは良かったです。で、星野さんのどんな事ですか?」

「星野さんとは以前からお知り合いでしたよね?」

「はい。こないだ仲村さんにお話した通り娘のひなたと星野さんの息子さんの佑樹君と同じ保育園なもので」

「その様ですね。でも、それより以前から星野さんとはお知り合いですよね?それに美穂さん、最初にエレベーターでお会いした時、どうして10階とおっしゃったんですか?」

「そ、それは......」

口ごもる美穂

「貴女、インストラクターされてましたよね?星野さんの経営する『スポージック』で。そのジムの非常階段からご主人の田島慎介さんが転落事故で亡くなってますね」

ハッとして泣き出す美穂

「ウゥッ。あの日の事は忘れません。丁度、ひなたが生まれた日でした」

遠くを見つめながら静かに言う美穂

-回想-

「4年前」

-スポージック-
非常階段

星野がタバコを吸っている

側に慎介が立っている

「美穂の事は諦めてくれ」

慎介が言う

「そうは行かないさ。ミーちゃんと俺は愛し合っているのさ。お腹の子供は俺の子さ」

ふてぶてしく言う星野

「何言ってるんだ!結婚してるくせに!」

「結婚してるのに子供を妊娠した、お宅の奥様にも非があるんじゃないの?責めるなら奥さんを責めれば?」

「何をーー!」

慎介、星野に飛びかかろとする

サッと避ける星野

そのまま柵を乗り越えて転落してしまう慎介

-回想終わり-

「ご主人の田島慎介さんは湯浅加奈子さんの弟。加奈子さんと貴女は義姉妹ですね」

「そ、そうです」

「どうしてそれらの事、隠されていたんですか!」

「そ、それは......」

「美穂さん、事件当日の3月31日の20時から22時の間どちらにいらっしゃいましたか?」

「私は、私は関係ありません!その日なら職場にいました。丁度月末で棚卸しだったので残業していました」

「その日、ひなたちゃんはどちらに?」

「お義父様に預けていました。棚卸しで遅くなるのでお義父様のお家に泊めて頂きました」

「なるほど。それで翌日の4月1日の朝迎えに行って私達と出くわしたという訳ですね」

「そうです」

「分かりました。後1つお伺いしますが、ひなたちゃんは保育園にはお弁当をお持ちで?」

「お弁当?いいえ。保育園は給食なもので」

「そうですか。ありがとうございました」

帰り道

仲村が蘭子に

「さっきのお弁当って何ですか?」

「酢酸ナトリウムはお弁当にも使うって桜井さんが言ってたので聞いてみたけど的外れだったみたいね」

「どうやってお弁当に使うんスか?」

「保存性を良くしたり、旨味や味を整える効果があるのよ。調味料、酸味料、日持ち向上剤としても使われるの」

「ヘェー、そうなんスか」


警視庁

捜査一課

蘭子、デスクの前に座っている

仲村入って来る

「調べてくれた?」

と蘭子

「はい。わかりましたよ。美穂が住んでる505号室、星野が半年前に購入して星野浩一名義になってました」

「やっぱり!星野さんと美穂さんは星野さんが死ぬ直前まで繋がっていたのね......後、美穂さんに初めて会った日、どうして10階と言ったのか気になるわ。でも目撃者の証言からすると、マンションから走り去ったのは男......」


「やっと、香ってきましたね!胸のカトレアのタトゥーから」


蘭子、胸元をパチンと弾く




























































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