緋黒の焔〜ヒトラー異世界戦記〜

第三章

用語集3

〈地名〉

・ソ連
人類史上初めて誕生した共産主義国家、ソビエト連邦の略称。第二次大戦の戦勝国になった結果、ナチスドイツに代わって欧州の半分を支配し、旺盛な軍事力の増強を通じて世界第二位の超大国となった。その生みの親となったのがスターリンであり、歴史の常として、大多数の民は、彼の悪行より功績を重く見て、スターリンをロシア史に残る英雄と見なしている。



〈人名〉
・ルツィエ・スターリン・バロシュ
言わずと知れた地上最悪の暴君、ヨシフ・スターリンの転生体。詳しいことは本編に書いたのでそちらを読んで頂きたく思うが、権力の階段の頂点に立つまでは野心と残弱さを隠し続けてきたように、この度の転生においてもまだ猫を被っており、地位が上がるにつれて本性がむき出しになるだろう。

・グレアム
スターリンの転生、及び管理を託された悪魔。真の名前を含め、ネーヴェ同様性別も不明でわからないことだらけだが、何らかの重要な背景をもっていると思われる。「フヒハハ」という奇妙な笑いが特徴。

・ヘレナ
《魔王》の三番目の夫人でパベル、ミカル、ルツィエという三兄妹を産んだ。《魔王》の妻たちはおろか、王都でも屈指の美貌として知られているが、娘であるルツィエはその特徴を継ぎつつも、人相が悪いためせっかくの美貌を損ねている。

・エルヴィン・イェーガー
特殊部隊出身で、近衛師団、参謀本部といったエリート機関を渡り歩き、なおかつ現場経験も豊富な生粋の軍人。ルツィエに魔法を教える家庭教師だが、王族に忖度しない人物であり、厳しい修行で彼女を育て上げた。
《魔王》がもっとも信頼を置く軍人で、仮にムスカウ共和国と戦争になった場合、総司令官につくものと人々から目されている。

〈魔法関連〉

・デーシュト
Ｓクラスの魔導師として国家に認められた者に送られる称号。冒険者なら選りすぐりのパーティを率いる人物となり、軍人なら大軍を率いる司令官に就くことができるとされる。もちろん単独でも一騎当千で、竜属とも互角以上に渡り合う。

・伝導性の岩石
土属性の魔法によって生み出された岩石で、敵を攻撃するためにも使えるが、本編のように〈稲妻〉の威力を削ぐためにも利用される。

・ゴーレム
土属性の支援魔法によって生み出された傀儡で、敵と戦わせることもできるが、本編のように訓練の相手として利用されることもまれではない。その強さは魔導師の位階によって決まり、本気になればイェーガーはもっと強力なゴーレムを現出することができる。

〈その他〉

・天使と悪魔
天使は天国への導き手、悪魔は地獄の管理人といったイメージで捉えられているが、実際のところ魂は無へと還り、審判の時もない。したがって彼らの役割も魂がしかるべき場所に収まるよう働きかけるだけで、死という受け入れがたい現実を死者に受容させることが目的となる。

・スターリンの罪
合計すると三〇〇〇万人以上の命を奪ったとも言われており、とりわけ第二次世界大戦では敵の占領を無効化すべく、放棄した村を村人ごと灼き払うなど味方の犠牲を平気で踏みにじるような悪行が観察されており、また質の悪いことにスターリン自身はそれを正しい行いだと信じているように見えるが、実際はヒトラー同様、その罪深さをある程度自覚している。
言い換えれば悪人は、みずからの正義を信じながら、自分が悪人であることを知っていると言えるわけだ。

・統一党
イェドノタ連邦は、建国直後は人種、出身地ごとにいくつもの政党が存在しており、《魔王》の権力もまだ弱かったが、世界大戦でこうむったダメージから立ち直る過程で、政党が分散していると強い指導力を発揮できないことが問題視され、政党をひとつに「統一」し、同時に権力を高めた《魔王》による指導で国家が発展にむかったために、急速に独裁体制が確立されていった。現代中国の共産党のような存在だと言えばイメージがつくだろうか。

・革命
シレジアに住む亜人族たちによる共和政国家の樹立のこと。彼らは《主》を否定し、宗教の存在を新たな社会から根こそぎ排除した。宗教を通じた《主》の統治にたいする人間の反乱と言え、《主》が不能に陥った原因のひとつ。