上 下
142 / 147
第八章

勇者と宝呪

しおりを挟む
「ネーヴェよ、こちらが知りたいのはお前の真意だ。我をたぶらかすのが目的ではあるまい。さっきタイミングはいましかないと言っておったな。あれはどういう意味だ?」

 アドルフの問いかけに天使は平然と開き直って応じる。

「随分と単刀直入に聞きおるの」
「無駄口を叩けばきりがないのだ。我はお前にいくつかの点で激怒しておる」

 そう、アドルフはこれでも我慢していることがあった。
 異世界に馴染んだ途端に収容所送りとなり、長い雌伏のときを過ごしたこと。ついであのスターリンがこの世界に転生していたこと。特に後者に関してよほど恨みが溜まっていたのか、彼はそれを過失としてネーヴェに問うた。

「いずれ顔を合わせたら文句を言ってやろうと思っておったのだ。スターリンの件はどうあっても許せる気がせん。お前も知っているはずであろ。いますぐ謝罪して貰わんと友好的な話し合いにはならんぞ」
「それはすまぬことをしたの。さすがにスターリンの転生は儂も寝耳に水だったのじゃ」

 肩をすくめたネーヴェが口をしかめ、軽い調子ではあるが詫びを入れてくる。しかしその後、すぐさま言い訳が追いかけてくる。

「とはいえ事情はやむを得ぬことじゃ。責任転嫁に聞こえたら申し訳ないが、スターリンという男を転生させたのは元を正せば《主》がお主のためになると判じたのが発端。そういう裁定に、儂らは異を唱えることができぬ」
「スターリンの転生は我のためだと?」

 天使にしては腰が低いと思った矢先、恩着せがましい口ぶりにアドルフは表情をこわばらせるが、ネーヴェはそれをよそに話を続ける。

「スターリンという好敵手を置くことで、お主の成長が早まると《主》は見なされたのじゃ。事実きょう、ビュクシの民衆の生命、財産を見事に守り抜きながら、同胞たる亜人族の解放を勝ちとった。もしスターリンがいなければ、こたびの戦勝はもっと迅速で、民衆に感銘を与えるものにならなかった。派手な撃ち合いは民の心を動かす要素の一つじゃからな」

 何やら計算どおりと言わんばかりの口ぶりにアドルフは呆れてしまう。しかし同時に、話の筋が通っていることにも気づく。正論に正論をぶつけても、議論は平行線をたどるばかりだ。よってスターリン転生への怒りは横に置き、彼は元々切り出した話題に話を巻き戻す。

「お前たちが用意周到に動いているのはわかった。だとすれば、なぜこのタイミングでお前が現れた? 戦勝を祝うため、非常に慌ただしい時である。迷惑きわまりないぞ」

 不機嫌さも手伝い、アドルフはつい難癖をつけてしまった。

「せっかちじゃな、お主は。儂がフリーデを乗っ取ったことで気分を害しているのか?」

 天使は表情こそ済まなそうだが、達者な口で論点をずらしつつ、しぶとく弁解をはじめた。

「大前提として儂らは本来の姿のまま人の子の世界に降臨することはできぬ。それでも直接話を伝えねばならぬ重大な用件があったのじゃ。迂遠なやり方になったのはそのためよ。腹立ちは収めて貰えぬか」

 天使の態度は言い訳がましかったものの、これまた理屈は通っていた。ゆえにアドルフは険しい表情を弛めつつ片手を振った。

「ならば、とっとと本題に入れ」

 これを聞いたネーヴェは、ソファの手すりに手を置き、そこにあごを載せて思わせぶりに言った。

「儂が来訪した理由を聞いて驚くな。密かに進めておったが、お主を《勇者》にする計画がたったいまその全体像を整えられたところじゃ。儂はそのことをいち早く伝えにきた」

 主人を見あげ、エサを待ちわびる犬のような姿勢だったが、アドルフはそのしぐさを華麗に無視した。注意をむけたのはむろん、ネーヴェの発言である、すかさず姿勢を起こし、鋭い眼光をむけた。

「計画を整えただと?」
「そのとおり。お主はこれから同胞や味方である者たちに戦勝を告げ、今後の工程表を述べる立場にいる。だとすれば、《勇者》になるための道のりは無視できぬ要素のはずじゃ。ほれ、儂の話を聞く気になったじゃろ?」

 軽薄に煽るようなことを言うネーヴェ。アドルフは少しムカついたが、話題の重みを尊重して、沈黙を浮かべながら頷き返す。
 そのしぐさを見てとった天使は軽く咳払いして言葉を継いだ。

「実はな、《勇者》を生み出す仕組みは世界によって異なるのじゃ。お主が元々いた世界では、そうした仕組み自体最初から存在しなかった。翻ってこのセクリタナでは、長らく《勇者》の伝統があったものの、儂らの調査ではあるときからそれが途絶えておったのじゃ。ゆえにその仕組みを再構築する必要があったわけじゃ」

 あごを起こしたネーヴェは、ソファに寝そべって話を続ける。どうやら長い話になりそうだと、アドルフが思っていると――

「なに、短くまとめてやる。方法自体はごく簡単。《勇者》になるには、宝呪を集めることじゃ」
「宝呪?」

 要領を得ない返事をするアドルフを眺め、ネーヴェはニヤつきながら説明を続けた。

「ここセクリタナには元来、宝呪という人知を超えたアイテムを集めし者が《勇者》の称号を得る伝統があった。しかし結論から言うと、その宝呪は二〇〇年近く前、当時の《勇者》によって破棄されたのじゃ。その行為の裏にどんな意図があったかは推測の域を出ぬ。だが事実として、この世界から一度は《勇者》になるための仕組みは消え失せた。そこで儂らは新たな宝呪を作成し、再度この世界に住む人の子へと分配した。それぞれに一つひとつメッセージを託してな」

 込み入った話ではないため、イメージは容易くついたが、アドルフは真っ先に嫌な気持ちがした。残念ながらそれは図星だった。

「世界中に散らばる宝呪を集め、《勇者》をめざせ。そうしたメッセージを儂はセクリタナに棲む六人の人間に授けた。そしてお主が七人めじゃアドルフ・ヒトラー。これよりその宝呪をくれてやろう」

 ネーヴェはぐいぐい説明を進め、どこからともなく真っ青な色の宝石を取り出した。普段ならその輝きに目を奪われる場面だが、アドルフはかろうじて待ったをかける。

「ふざけるな、ネーヴェ。我を《勇者》にしたいなら、その宝呪とやらを全部我に与えればよいであろ」

 またしても機嫌を損ねたアドルフだが、その怒りは的を射ている。しかしネーヴェは。その宝呪なるものを一旦しまい、にべもなく却下した。

「それでは意味がない。セクリタナにおける《勇者》とは元々、七つの宝珠を集めた者に与えられし称号。それによって人知を超えた権威をまとうための資格じゃ。よって集めるという行為に意味がある。お主にくれてやったらズルになるじゃろ?」

 それを聞き、アドルフは言い返せない。反論できるほどの余地がなく、くわえてネーヴェがいたずらに自分を困らせているわけではないと理解できたからだ。
 けれど、引っかかる点はなくもない。彼はその疑問を少々ためらいつつ口にした。

「根本的な質問をさせて貰ってもよいかね。お前は我が転生するとき、《勇者》とは正義の使徒、倫理の根拠となるような存在だと言っておったな。だとすれば、お前の言う宝呪の持ち主は皆そのような資格を持った者である、と見てよいのか?」

 アドルフがここで懸念したのは、複雑な事柄であった。自分でもすぐに言語化できない。
 その様子を察したのか、ネーヴェは親切にも彼の意図を汲んでくれた。

「善人だらけではやりにくいと思ったか。しかし安心せよ、宝呪の持ち主となった六人は皆、正義の使徒たる資格を持った者であるものの、お主と同じく腹黒いやつもいる。現にお主が戦ったスターリンだが、あれは天界の者より宝呪を授かっている。先ほどの戦闘で巨人を召喚できたのはそれを用いたおかげじゃ」

 この答えを聞き、さすがのアドルフも驚きを隠せなかったが、ある部分では得心がいった。

 ――なるほど。どうりで未知の魔法を目にしたわけだ。

 彼は数時間前の出来事を思い返し、自分を死地に追い込む手段が天界由来のものであったことを当然腹立たしく思ったが、その感情はどういうわけか具体的な形をとらない。

 なぜならいまは、ネーヴェの説明のほうが重要に思えたからだ。邪魔して口喧嘩をしても、得るものは少ないと判じられたわけである。
 他方で天使は、そんなアドルフの心に頓着なく、真面目くさって会話を続ける。

「とはいえお主が薄々感じたように、腹黒いままでは《勇者》になれぬ。最終的な判定基準は宝呪を集める過程で蓄積した善性じゃ。よって相手を騙し討ちし続けた者、人格的成長を得られなかった者は失格となるわけじゃ。そうした心性を試すべく、宝呪を授かりし者たちは皆、それぞれの倫理を辛辣にも問われることになっている。さしづめお主の場合、こたびの戦闘で案外善いことをなした。評点はもちろんプラスについている」

 この判断はアドルフにとって意識の外だったが、戦闘の様子を想起するとひとつだけ思いあたるふしがあった。ネーヴェが言っているのは、アドルフがエディッサの攻撃からビュクシの群衆を守り抜いた点だろう。とはいえ公平に見れば、あれは自作自演だったはず。

 そのことを口にしかけたとき、ネーヴェは全て織り込み済みといった口調でこう言い放った。

「顔色を見る限り、お主は勘違いをしている。儂らの判定のおける善性とは結果重視で、そもそもビュクシの民を蔑ろにしようと思えばいくらでもできたはずじゃ。その後の統治を考慮したとはいえ、お主は住民保護を貫徹した。儂はこの点を高く評価したのじゃ」

 何がどう作用するかわかったものではないが、少なくともアドルフは、内面的な変化とは無関係に《勇者》たる資格へと一歩近づいたようだった。それこそが結果重視という判定の意味なのだろうが、彼の目的からいってこれは歓迎すべきことである。

 本当のところアドルフはこの転生世界を、ネーヴェが告げたとおりの試練の場、おのれが正義の使徒へと成長するための舞台だと純粋に考えていなかった。

 何しろ転生以前の段階で、アドルフ・ヒトラーはドイツ国の救世主、つまり一貫して正義の立場だというのがアドルフの認識だったからだ。けれど転生に関わる天使の言い分を認めてしまえば、かつての自分は正義にもとる存在、すなわち悪ということになってしまう。

 だが結果的に、彼は天使の願望を受け入れた。そして自分の価値観を変えることもなく、このセクリタナに転生を果たせた。

 どうしてそんなことが可能になったのか。転生生活を過ごしつつ、アドルフは密かにこう考えていたのである。

 自分は元々正義を任ずるに足る存在であった。しかし連合国に妨害され、敗北したことにより、その実現をなし遂げられなかったのだと。
 正義の使徒たる《勇者》になるとは、一度めの人生で潰えた目的を異世界で叶えることに他ならない。それが転生当時、彼の得た認識だった。

 アドルフの正義は決して敗れたのではない。彼の正義はまだ途上であったと認識し直すことで、彼はネーヴェの啓示と自分の認識を両立することに成功したのである。
 こうした内なる理解とネーヴェの判定は、現時点で齟齬はない。裏を返すとこの調子で宝呪の所持者を駆逐していけば、失った栄光を取り戻す目的は首尾よく達成できることになる。この事実はアドルフの風向きを俄然良い方向に変えた。

 もっとも、正義の使徒という立ち位置と、史上最悪の犯罪者であるヒトラーの関係が、この時点ではまともに釣り合うはずもないわけだが、少なくとも彼の内心では均衡がとれた。人格的成長など皆無に等しかったが、ネーヴェはそれを難詰するそぶりもなかったのだから。

 好都合な理解を得て、会話はひとつの山を越えた。

 とはいえ先ほど唐突に《勇者》になるための宝呪システムを告げられたアドルフには、他にも尋ねておきたい事柄がまだあった。紅茶を淹れて一服したい場面ではあったものの、同じ思いで息を吐いたとおぼしきネーヴェを捉え、彼は率直に切り込んでいく。

「もう少しばかり疑問を述べてよいか?」
「ああ、そうじゃな、構わぬ」
「さっきスターリンが宝呪を手にしておると言ったな。そうなると他に五人の所持者がおることになる。そいつらをどうやって探せばよいのだ?」

 宝呪集めが主眼となる以上当然避けて通れない質問だったが、ネーヴェの答えは勿体ぶる様子もなく、淡白で呆気なかった。

「お主を含めた宝呪の所持者は、これから激動の日々を過ごすことになる。何しろそれを持つ者たちは天空に瞬く星々のごとく、互いを引き寄せ合う運命に導かれるのじゃからな」
「ふむ。ようするに引力のようなものが介在し、いずれ必ず出会うようになっておると?」
「そのとおり。今日とて現にお主とスターリンは引き合えた。同じことが他の所持者との間にも起こる」

 ネーヴェの開示した論理は、アドルフにとってなかなかに好都合だった。
 セクリタナ制覇の野望と、宝呪集めを別途おこなえば路線は錯綜するが、前者を目指す過程で後者が必然的に関わってくるのであれば戦略はひとつでよい。《勇者》になるという天使との契約に足を引っ張られずに思う存分目的を追求できる。この結論は、アドルフの心に小さくない安堵を生んだ。

 しかしこのとき、ネーヴェの話を聞いた彼にもうひとつの疑問が芽生えていた。余談というほど軽くないし、この機会を逃すと次はいつになるかもわからず、憂いは速やかに払いのけておきたい。そんな心持ちが彼の口を再度開かせた。

「ネーヴェよ、これはお前の説明を聞きつつ、異世界に転生して以後の一七年を振り返って思ったこと、そして短くない期間、セクリタナを生きながら感じておった、実にシンプルな疑問なのだが――」

 物静かに切り出しながら、アドルフは天使を見つめる。その瞳にあるのは先ほどまでの警戒心でなく好奇心に近かったが、より厳密に言うと困惑の色が混じっていた。

「気の済むまで何なりと申せ」

 鷹揚に答えたネーヴェに深い目の色を向け、アドルフは躊躇せず言った。

「我にとって疑問なのは、この一七年間、《勇者》という存在、もっと言えば《勇者》という概念とほぼ無縁に生きてきたことだ。お前はセクリタナに《勇者》を生み出す仕組みが存在してきたと言ったが、その発言と矛盾した事実に思えてならん。この齟齬はどう説明する?」

 アドルフとて、ネーヴェの話を漫然と聞いていたわけではない。その都度過去を振り返り、手持ちの情報と逐一照合させていた。

 しかし《勇者》の件ばかりは、完全なエラーが返ってきたのだ。

 何しろ記憶を掘り返してみても、まだ少年だった頃に、院長先生が口を滑らした場面が一度きりある程度。収容所暮らしが長く、優先順位の関係でスルーされてきたものの、あらためて考えると不自然としか言いようがない。

「見聞を広げていけば、いずれはきっかけが掴めると思っておったが、今日お前と出会い、突然真相を知るはめになった。しかし率直に言えば、火のないところから急に煙が立った気分である」

 まったくの純粋な謎めきが半分。もう半分はこの世界に騙されてきたような気がするという、生理的嫌悪感からくる感情。アドルフは《勇者》の件に限らず、異世界に転生して以後、貪欲に知識を求めた自負がある。それが空振りに終わってきた事実を再認識したことは、彼の心にいわく言いがたい違和感を生じさせていた。

 お互いの瞳を覗き見るような姿勢のなか、ネーヴェもアドルフの態度に真剣さを感じとったらしく、ここまでの茶化すような声色を抑え、ため息混じりにつぶやき返してきた。

「ちょっとでも知的好奇心があれば気になるところよの。しかしこの件に深入りすると二、三時間程度あっという間に経ってしまう。そのくらい込み入った事情があるのじゃ」
「それを三行にまとめるのが天使の役目であろ」
「無茶を申しな、無茶を」

 アドルフが詰めた口調で言うと、ネーヴェは手をばたばたと暴れさせた。
 しかしそんな児戯は一瞬のことだった。天使は顔をしかめ、もう一度ため息を吐きつつ言った。

「先ほど、宝呪が破棄されたこと、その裏事情は推測の域を出ぬと言ったが、逆にいえば状況証拠ならある。なぜそんなことが起こり、この世界から《勇者》に関する情報が消えたかを裏づける憶測含みの証拠なら」

 ネーヴェはここで物静かに、顔を天井にむけた。そして悩ましげな表情を戻し、言葉を紡いでいった。

「儂らの調査じゃと、二〇〇年以上前に起きた世界大戦の裏では、どうやら《勇者》をめぐる争いが勃発しておったようなのじゃ。そして最終的に勝者となり、《勇者》の称号を得た者が宝呪を全て破棄し、《勇者》という概念自体を歴史の闇に葬った。あいにくセクリタナには常駐の天使がおらぬゆえ、これらはまさに推測でしかない。だがはっきりしていることのひとつは、ここセクリタナのうち、中央大陸を支配するイェドノタ連邦の為政者たちは、過去から現在に到る全ての書物から《勇者》の存在を消し去った。これだけは判然と調べがついていることじゃ」

 そこまで語るとネーヴェは目線を移し、アドルフを見据えた。しかし彼は、天使の顔つきに何ら感想を抱かず、意識はすっかり頭のなかに集中していた。

 思えば幼少の頃、あれほど図書館へと入り浸って多くの文献を通読しながら、彼はそこに《勇者》の片鱗さえ発見できなかったことを思い出した。題材として扱いそうな古典文学なども恋愛小説ばかりで、英雄譚のたぐいはなぜか蔵書に存在しなかった。そうした体験を裏づける理由を、彼はネーヴェの語る言葉のなかに見出だした。

 この二〇〇年の間に、いわゆる焚書坑儒が実施されたのだろう。歴史の改ざん作業と言ってもいい。だとすれば、それがだれの意志を汲んだものか、すでに疑問の余地はない。

 そこまで思考を及ぼすと、発想の豊かなアドルフのこと、大まかな全体像がくっきりと見えてきた。

 連邦の為政者によって《勇者》という概念は社会から消された。

 宝呪というアイテムの喪失はその出発点のようなものだが、宝呪を破棄して、この世界から《勇者》の痕跡を消すきっかけを作った者はとうの《勇者》自身だとネーヴェは言った。

 だとすれば、二〇〇年前、いったいだれが《勇者》だったのか。そしてみずからを否定したのか。
 その答えを想像し、アドルフは戦慄を覚えた。恐怖に怯えたのではない。歴史の闇を覗き込んだ気分をあじわい、武者震いに近い感覚を覚えたのだ。

「もうそれ以上言わずともよい。お前のおかげで我が一番知りたかった謎が解けた」

 アドルフの脳裏をよぎった先代の《勇者》とはいったいだれか。それは間違いなく、この連邦の――

「なんじゃ。独り合点か。種明かしくらいさせて欲しいのじゃ」

 口をつまらなそうに尖らせ、ネーヴェは雑然とした心情を垣間見せたが、アドルフの双眸はもう天使になど向けられてはいなかった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

その子爵は、婚約者達に殺されてしまった娘を救うために時を逆行する

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:5,194pt お気に入り:342

そこまで言うなら徹底的に叩き潰してあげようじゃないか!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:4,290pt お気に入り:46

箱入りの魔法使い

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:986pt お気に入り:11

ただの使用人の私が、公爵家令息の婚約者に!?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:21

お前を誰にも渡さない〜俺様御曹司の独占欲

恋愛 / 完結 24h.ポイント:695pt お気に入り:15

進芸の巨人は逆境に勝ちます!

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:156pt お気に入り:1

親友彼氏―親友と付き合う俺らの話。

BL / 完結 24h.ポイント:1,010pt お気に入り:21

不完全防水

BL / 完結 24h.ポイント:582pt お気に入り:1

夢見の館

ホラー / 完結 24h.ポイント:979pt お気に入り:1

処理中です...