彼女は事件を欲す

NK作家団

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第2件 京都出張

第5話 4羽の烏

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 10月16日 午前10時 京都駅八条口
 僕と茜さんは、とある人を車で迎えに来ていたが…。
 「茜さん。今から来る人って誰なんですか?」
 僕は茜さんに言われ座っている後部座席から聞くと、
 「その人とその人の仲間がいればこの国でできないことはない」
 「できないことはない…?」
 そんなことを話していると茜さんはギターケースを持った1人の男性を見つけるとドアを開け外に出ると、
 「こっちだ!」
 と男性を呼ぶとその男性はこちらに来ると助手席に座り、茜さんも再び運転席に座り車を出した。
 「久しぶりだな。元気にしてたか?」
 茜さんが男性に聞くと、
 「零課の人間はほとんど死んだも同然ですけど、まぁ元気にやってますよ。それより君は?」
 男性は僕のを見て聞いてきた。
 「茜さんの助手をやらしてもらってる永谷 智也です。あなたは?」
 「あぁ! 君が噂の新しい助手か。俺は岡崎 修平(おかざき しゅうへい) 警視庁 公安零課の刑事さ。1つ言っとくが、俺のことは『足がある幽霊』と思ってくれ」
 「幽霊?」
 「あぁ。公安零課は超法規的な任務が多いうえ、普通の人間には知られてはいけないからな。だからこそ、こうやって管轄を無視して捜査が出来ているのだがね」
 「じゃあ。そのギターケースは?」
 「公安零課の刑事は幽霊とはいえ足があるし、実態もあるからな。だから架空の一般人になる必要があるのさ。俺の場合は売れないギターリスト」
 「自己紹介は済んだろ。 依頼者について分かることはあったか?」
 茜が話を中断させ、岡崎さんは胸ポケットから手帳を取り出し。
 「あぁ、松島 裕樹。彼の事が公安の超高度データベースにあったよ」
 「公安の超高度データベース! つまり、彼はなにか前科があったのか!?」
 茜さんが聞くと、
 「いや。彼自身はなにもなかった。 しかし、彼の両親はとある連続殺人犯の被害者で、彼の父親はその時に死亡。母親はなんとか助かったが彼を産んですぐに亡くなっており、彼は児童養護施設に入れられている」
 「じゃあ、探し人のほうは?」
 「松島 結衣という女性のデータベースは存在しない…」
 「じゃあ、松島 結衣という女性は? 依頼者の空想の女性ということですか?」
 岡崎さんは手帳をめくり、
 「いや。松島 結衣は松島 裕樹の妻で、旧姓を葉山 結衣(はやま ゆい)。でも妻といっても、書類上の話で、2人は同居はしていない。 その代わり、松島 結衣は松島 裕樹の家をよく訪れていた。そして、その松島 裕樹の住所が『四条烏丸 上ガル』」
 「えっ? 松島 結衣は姉じゃなくて妻!? それに、なんですか?そのややこしいのは?」
 「京都独特の住所でね。京都では平安京の名残で、道路が碁盤目になっていてね。場所によっては何番地とかがない場所もあるのだよ」
  「四条烏丸…なるほど『4羽の烏』って『四条烏丸』のことですね!」
 「そういうこと。そして、四条烏丸は京都を東西に走る四条通りと南北に走る烏丸通りとの交差点。そしてそれを上がる…つまりに北に行き1つめの通りの名前が錦小路通り…それを左に行った場合に、依頼者の元実家があり。そこは今は松島 裕樹の名で購入されている」
 「公安ってすごいんですね」
 などと話していると茜さんは、
 「これが烏丸錦小路で…これを左に行って…どの建物だ?」
 「え~と、左に…このビルの4階だ」
 岡崎さんに言われたビルの前に車を止めて茜さんは、
 「さぁ、探し人探しだ」
 と車を降りていく。


 岡崎さんが突き止めたそのビルは、6階建てで1階がアパレル店。それから上がマンションとなっており、僕達はそのビルに入ろうとしたがビルの玄関でロックがかかっていた。
 「修、頼む」
 茜さんがそういうと、
 「はぁ…面倒だが…」
 ため息をつきつつ岡崎さんは、玄関の近くにあった管理人室に行き管理人に警察手帳を見せながら、
 「警察の者だ。ここの2人がこのマンションに住む松島 裕樹という人を探していて、少し案内してほいんだが」
 それを聞いた管理人のおじいさんは合鍵を取ると、
 「どうぞ」
 と僕達を中に通し、
 「実は松島さんは、先月以来部屋から出とらんくてね。わしも心配しとったんよ…」
 「出てない!?」
 茜さんが聞くと管理人さんは、
 「えぇ。ちょうど、先月の始め頃に松島さんの友人かのぅ。男性とお姉さんが来て、ケンカみたいなやり取りが聞こえて。その日のうちに男性とお姉さんは帰ってね。それ以来出とらんのじゃ。ここです」
 管理人に連れられ僕達はとある部屋の前に行き、岡崎さんがインターホンを押しドアをノックしながら、
 「すみません。 警察です!」
 中から声や音は聞こえない、そして岡崎さんがドアノブを回すが開く気配すらない。
 「頼みます」
 管理人は合鍵で部屋の鍵を開け、ドアを開けると中から吐き気を催す匂いが漂ってきて…。
 「管理人さん! ここで待っといてください! 茜さん…」
 岡崎さんと茜さんは頷き、中に入っていき僕も中に入ろうすると茜さんが僕を止めて、
 「君が持っている鞄にはマスクとビニール手袋が2つ入ってるな?」
 「はい」
 「じゃあ、その鞄を私に渡して。君もここで待ちたまえ! それと警察に通報を! 人が死んでいると…」
 「え…? 分かりました」
 僕は慌ててスマホを取り出し、警察に通報した。 通報し終えて管理人さんが、
 「坊や達は一体何者なんだね?」
 「僕は…僕とあの女性は私立探偵で、とある人を探していて…」
 「それが松島さんじゃと?」
 「いや…そこは言えません」
 「そうか…。わしは周りの住人に事情を説明してこよう」
 「お願いします」


 その頃、家の中では…2人がリビングで、見るにも耐え難い遺体を見つけていた。
 「茜さん…」
 岡崎さんはあまりにの様子と匂いに吐き気に襲われていた。
 「修。マスクとビニール手袋、そしてビニール袋だ」
 茜さんは冷静に鞄から3点セットを取り出し岡崎さんに渡し、2人はマスクとビニール手袋を着けて、茜さんは遺体を触らないように診はじめた。
 「被害者は男性…30代前半…いや後半か…? 死因は横腹の様子を見る限り、腹を鋭利な物で刺されて出血多量死…」
 茜さんの様子を見ていた岡崎さんは、白手袋をはめて足元に落ちていた紙切れを拾い茜さんに見せた、
 「汚い字だなぁ。しかもまた住所…山科区…どこだここは?」
 岡崎さんは白手袋を取り、ズボンのポケットからスマホを取り出しその住所を調べると、
 「これは倉庫跡ですかね…?」
 岡崎さんが地図に写し出された場所を茜さんに見せて聞くと、
 「そうだろうな…なにか嫌な予感はするが…行ってみるか」
 「その前に、この血を辿ってみます」
 「頼む。この様子だ、身元を割り出すのに苦労するだろうからなにか身元が分かるものがあれば助かる」
 「分かってます」
 岡崎さんは家中を探すと寝室から、
 「茜さん! 寝室に来てください!」
 と呼ばれ茜さんは寝室に行くと、寝室はリビングより多量の血液があった。
 「なにかあったか??」
 「財布があってそこに、顔の部分は血で汚れて見えませんが免許証が入ってました」
 岡崎さんは茜さんに免許証を見せた(茜さんは遺体を診ていたビニール手袋をまだはめているので外すまではなにも触れない)。
 「金田 卓也(かねだ たくや)。34歳、和歌山県在住か…」
 「茜さん。もしかしたら、探し人や松島 裕樹と関係があるのでは?」
 「そうだろうな…」


 それからしばらくして京都府警がやって来ると茜さんや岡崎さんに、
 「あなた達が第1発見者ですね。お名前と職業聞きたいのですが?」
 「私は田原 茜。和歌山県で私立探偵をやっているのだが、とある件でここに来て遺体を発見したという感じだ」
 「俺は岡崎 修平。警視庁 公安零課の刑事だ」
 と2人が名乗ると、京都府警の刑事も。
 「あぁ、まさか公安零課の方が居るとは! 私は、京都府警 綾小路 武久(あやねこうじ たけひさ)刑事です。 それで、そちらの探偵さんの言う、とある件について教えていただきのですが?」
 茜さんは松島 裕樹から受けた依頼、そしてここで見つけた住所のことを伝えた。
 「なるほど。そういうことでしたら、こちらでなにか分かりましたらお伝えいたします。それと身元確認などは我々で行います」
 「そうしてくださると助かります。 とりあえず、この男性と松島 裕樹の関係を探ってほしいのですが?」
 「分かりました」
 「それでしたら、公安として私も手伝いましょう」
 「お願いします」
 そうして、岡崎さんは僕達から一旦別れ警察署へ、僕達は例の倉庫跡へと向かった。
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