29 / 82
第二章 エウクラトア聖王国
6話 サポーターと対面
しおりを挟む私がスピードアップをお願いしておいてなんだけど、なんていうか……ええ、速かったですよ。とてもとてもね……。それはもう吹き飛ばされるんじゃないかというくらいにね。
危うく本当に飛ばされるか置いてけぼりにされるところだった……。すぐさま風の抵抗を受けない魔法を使ったから良かった。
シストとマリンにももちろんかけたよ。この一瞬の判断力を褒めてほしいとちょっとだけ思った。
それであっという間に深淵の森の暗い場所を抜けた。ルフスとリドのスピードに驚いて森の雰囲気が怖いとか言ってた自分が懐かしい……。怖がる暇も無かったわ!
結果オーライということにしておきましょう。
そして、まだ深淵の森だけどもうそろそろ森から出るのか鬱蒼とした雰囲気の森ではなく日差しもさすくらいに明るい。
だから、ルフスとリドはスピードを緩めていった。
「アマネ様、そろそろ森の出口かと思われますわ」
「森の出口ら辺にエウクラトア聖王国に潜んでいる大精霊が迎えに来てくれるんだよね?」
「ええ、その約束ですわ。 森を出たら気配で気づくと思いますわ」
精霊は、精霊同士近くにいればなんとなく居場所が分かるらしい。
「なら、そろそろルフスとリドも人化していた方がいいかも」
「承知した!」
「分かりましたわ!」
そう言うとルフスに乗っていた私と、リドに乗っていたマリンとシストは二人から降りた。
ルフスとリドは慣れたように人化する。
いつものイケメンのルフスとクールビューティーなリドが現れた。
「ここからは徒歩で申し訳ありませんが森の出口を目指しましょう」
「我が先導いたします」
ルフスを先頭に私達は森の出口に向かって歩き始めた。
先程の森の奥とは違い、普通の森。空気が淀んでいるような感じもしない。
深淵の森は結構危ない森だとアリーシアから教わった。強い魔獣がゴロゴロといるらしい……。だけど、私達には襲って来ないだろうとも言っていた。
まず、私の溢れ出している力に恐れ慄き出てこない。それに加えて大精霊もいる。本能で近寄って来ないとアリーシアは言った。
そんなこと言っても……と若干私は信じてなかったけど、やっぱり私や大精霊の溢れ出している力は魔獣達には分かるみたい。
だってここまで魔獣に出会ってないもん。まあ、スピードを出し過ぎたっていうのもあるかもしれないけど……。
という感じで私達は平和に深淵の森を抜けた。
割とあっさり深淵の森を出たら今度はどこまで続いているのかなという様な広大な草原に出た。
「わーあ……。 草原だ。 これはもう深淵の森を抜けたんだよね?」
「ええ、もうここはエウクラトア聖王国に属する領地ですわ」
「ここは、かの大精霊達が治めている領地でもあります」
えっ? サポーターの大精霊ってエウクラトア聖王国で結構偉い人なの!?
「その、大精霊達って結構お偉いさん?」
私はルフスに聞く。
「申し訳ございません……。 我はそこまでは分かりません……」
「リドは?」
「どこまで権力を持っているかは存じませんが、エウクラトア聖王国の貴族だということは聞いていますわ」
「!!」
貴族!!まさかの貴族!!というかアリーシアからサポーターについては何も教えてもらえなかった。
アリーシアは『会う時のお楽しみです♪』と楽しそうに言っていた。絶対私が驚くことを見越して言ってなかったに違いないと今なら思う。
それにしても……。
「本当にここへ迎えに来てくれるの?」
この広大な草原で私達のことを見つけられるのだろうか?
私達は深淵の森が見える所から動いていない。下手に草原のど真ん中に行って戻れなくなるのは嫌だから……。
もし、戻れなくなっても転移で聖域まで帰るけどさ。
ちょっと待っているのも暇だからアリーシアが出る時にくれた旅グッズでも見てみようかな~と思い始めた時――。
ドドドドドッと音を上げながら近づいてくる何か。
「えつ!?」
思わず声に出してしまった私。そして、マリンはビクッとし、近くにいたリドの肩へと登った。シストも少し怖いのだろうか?私の側へピタッとくっついて来た。
だけど、ルフスとリドは冷静。そして私も思わず声を出してしまったけど、敵意や悪意などは感じないからきっと大丈夫だと思っている。
そんなことを思っていると近づいて来ているものが何なのか正体が分かった。ゾウだ。あの、大きなゾウ。ただ、白っぽい色をしているゾウ。
そのゾウがめっちゃ早いスピードでこちらへと向かって来ている。これではあの地響きは納得だ。
「――っ!! ――~!!」
何か言いながら来ているみたい……。どっから声出してんの?とか思うけどそこはまあ、ツッコまない……。
「――ぁ~!! ――と様ぁー!!」
「何言ってんだアイツ……」
ルフスはあのゾウと親しい仲なのだろうか?アイツ呼ばわりしている。
結構近づいて来たゾウ。そろそろスピードを下げて欲しいね。あのままじゃ追突して来そうな勢いだし……。
それに距離が近くなったことで何を言っているのかも聞こえて来た。
「使徒様ぁーーー!! 使徒様ぁーーー!!」
「……アマネ様のことを呼んでいますわよ」
「……」
ずっと『使徒様ぁー』って呼んで来たの?あのゾウ……。頭大丈夫?とか思われそうだよ。
そしてとうとうゾウは私達の目前に迫っていた。
「使徒様ぁーーー!!」
「お前!! そこでスピード落とせ!!」
ルフスがゾウに向かって叫ぶと、キキーッと音が聞こえてきそうな程に急停止したゾウ。
ルフスとリドは私の前に立ち私を守るようにしていた。
運良く無事に追突することなくゾウは私達の前で止まった。
そして……。
「ああ!! 使徒様!! お初にお目に掛かります!!」
ゾウの姿のままそう言った……。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
67
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる