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第二章 エウクラトア聖王国
5話 深淵の森
しおりを挟む広い聖域を出るのには時間が掛かった。正確な時間までは分からないが体感はとても時間が掛かったような気がする。
だって山越えしたからね……。この世界にトンネルとか無いしマジで登って下りたからね……。
その間、ルフスとリドは走りっぱなし。途中何回か休憩を取ったけど、それでも凄い体力……。
ルフスとリドに疲れてないか聞いたらこれくらい大精霊にとっては朝飯前と言われた。
凄いね……。大精霊……!
そんなこんなでついに聖域の端っこまで来た。ここまで来るといかに聖域の中心部が力に満ち溢れていたと理解できる。ここら辺は僅かばかり力があるが少し物足りないような感じと言えばいいだろうか……?
力は弱いようだがまだ聖域だと感じる。
するとルフスとリドは徐々にスピードを落とし走るのをやめた。
「アマネ様! そろそろ聖域から出ます!」
「アマネ様にはきっと境界線が見えると思いますわ」
「分かった。 そしたら人が言う深淵の森に出るんだよね?」
聖域も自然豊かな場所なんだけど、その聖域は人が簡単に入れないように山々に囲まれ、その山々の周りをぐるりと囲むように深い森に覆われている。この森は聖域とは違い鬱蒼としていて暗い。だから人々はこの森のことを深淵の森と呼んでいるらしい。
「ええ、そうです! 人には危険な森でも我々にとってはただの森ですから」
リドがゆっくり歩きながら言う。
「アマネ様、そろそろ変身魔法をした方がよろしいと……」
「そうだね!」
エウクラトア聖王国に向かうにあたってこの九尾の獣人姿ではまずい。だから、ウーラノスとアリーシアとで話し合った。
とりあえず、耳と尻尾は隠すことにした。エウクラトア聖王国は人族が多い国。全く違う種族がいないとは言わないが、目立ってしまうリスクを考えると今回は人間に変身した方がいいとなった。
最初だから髪色は変えないで、瞳の色だけ元の黄金ではなく、琥珀色にすることにした。
私は、ウーラノスとアリーシアと考えたイメージをしながら変身魔法を自分にかけた。
一瞬私を光が包みこみ、光が収まると私はイメージした通りの人間になっていた。
ちゃんと変化できたか尻尾を確認する……。うん、ない。耳も頭の上に……、ない!顔の横にある!
一応変なところがないか、リドに聞いてみる。
「リド、どう? 上手く変身できた?」
「ええ、大丈夫ですよ! 上手く変身できています」
よし!良かった!ちゃんと変身できたみたい!
変身できたところでもういよいよ聖域の境目に来ていた。
境目はとても分かりやすかった。だって明るさが違うから。聖域の方は日差しがあるのに対し、深淵の森の方は真っ暗だ。これでは誰だって境界線が見える。
こんなに分かりやすくて大丈夫なのかな?って思う。
まあ、そもそも深淵の森の奥に来ようとする命知らずな人達は中々いないか……。
それにしても……。深淵の森怖っ!!絶対入りたくないよ……。
「ねぇ……この森怖くない?」
「暗くて不気味ですが、我々より強き者などいませんよ」
ルフスがハハッと笑いながら言った。
……うん、確かにそうなんだけど。こう、気分的にね、怖いんだよ……。
きっとこの感覚は精霊達には分からないだろうな……。
いくらなんでもこの真っ暗な森の中を光もなしに駆け抜けるのは嫌だ!それに真っ暗な中走るのは危ないじゃん!だから私は光の魔法を使う!
イメージは車のヘッドライト!行く前方を照らす光をイメージし、魔法を使う。
すると私の掌から出た光の玉二つ。その光の玉はふわふわと浮いている。これはこれでちょっと怖い気もするが光の玉は私達が行く先を照らしてくれている。
その光の玉に精霊達は驚いている。
「わあ! アマネさま、これなぁに?」
「光が先を照らしています!!」
興味津々にしているのはシストとマリン。
「これは真っ暗な場所で走っても危なく無いように行く道を照らす魔法だよ」
決して真っ暗が怖いわけではない!ただ真っ暗な森の雰囲気が怖いだけ!
するとルフスとリドが感動していた。
「アマネ様! 我々が危なくないようにとしてくれたのですか!?」
「わたくし、アマネ様のお心が嬉しゅうございます!!」
あはは……。もう決して言えないね、暗い森の雰囲気が怖かったって……。
私は本心を隠しつつ笑顔で言う。
「よ、喜んでくれて良かったよ……!」
ちょっと吃ってしまったけど幸い精霊達は気付いてない模様。
「では、そろそろ聖域を出ますぞ!」
あっ……、ルフスが話を変えてくれた。
「うん、それじゃあ行こうか……」
私のその言葉を聞き、ルフスとリドは聖域と深淵の森の境界線を越えた。
境界線を越えた途端に空気が淀んだ気がした。やっぱり聖域は特別な場所だったんだと改めて気付かされた……。
「アマネ様、大丈夫ですか?」
リドが私ことを気遣ってくれる。
「うん、大丈夫。 だけど心なしか空気が淀んでいるような気もする……。 みんなは大丈夫?」
「我は大丈夫です」
「わたくしも大丈夫ですわ」
「私も大丈夫です!」
「ぼくもだいじょうぶだよ~」
「それなら良かった……」
みんなも大丈夫な様で安心した。みんな大丈夫そうなら……。
「ちょっとスピードアップして深淵の森を抜けようか……。 出来る? ルフス、リド……?」
何も害はない様だけど早くこの深淵の森から抜け出したい……。それからもうちょっと陽の光が差し込む場所まで行きたい……。
すると、ルフスとリドは自信を持って言う。
「大丈夫です! 我にお任せを!!」
「ええ、風の力も使いますわ!」
二人はしっかり掴まっていてと言うと格段にスピードアップした。
だけど精霊のスピードアップはもの凄かった……。
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