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8話
しおりを挟むセシリアの瞳に強い光が宿ったことをパトリシアとシュトラールは気がついた。
『さて、セシリーそろそろ髪と瞳の色を変えましょうね』
「はい、おかあさま」
私が返事をすると、お父様は私の頭をひと撫でした。再び私を温かい風が包む。鏡を見ると今までと同じ金髪、緑の瞳に戻っていた。
その事が少し残念だったが先程お母様と約束したばかりなので我慢する。
『また、今日の夜に本来の姿に戻ろうな』
「はい! おとうさま!」
そうだ、誰も来ない夜ならまたお父様と同じ姿になれる!
今日はその事を楽しみに頑張ろう!そんな気持ちだった。
『そろそろ来るわね……』
『ああ、そうだな……』
お母様とお父様は少しだけ険しいお顔になった。そして名残惜しそうにお父様は私を抱っこから降ろした。
多分そろそろ起きる時間だからあの意地悪な侍女が私のことを起こしに来るのだろう……。
すると、お母様が思い出したかの様に私に言う。
『セシリー、一つ言い忘れていたわ』
「なあに? おかあさま」
『お母様とお父様はセシリー以外の人には見えないわ。セシリーだけがお母様とお父様を見れるのよ』
「みんなにはみえないの?」
『そうよ。精霊は特別な人しか見えないの。だから他の人が居る時はお母様とお父様とは今みたいにお話出来ないわ』
『セシリー、もしお父様とお母様と話したくなったら心の中で話しかけなさい』
「こころのなかで?」
『そうだ。声に出さずともお父様とお母様には伝わる。今少しやってみようか』
お父様は声に出さなくてもお話しできると言う。だから、早速心の中でお母様とお父様にお話ししてみる。
(おかあさま、おとうさま)
とりあえず、心の中で呼んでみた。するとお母様とお父様は返事をくれた。
『何かしらセシリー』
『セシリー、上手に出来ているぞ!』
私の呼びかけにお母様とお父様には伝わった。
『セシリー、そんな感じで伝えたい相手を思いながら心の中で話せば伝わる。他者がいる場合はその様にしてお父様とお母様に伝えなさい』
「わかった!」
心の中でならあの人達にバレることはない。
『もう来るな……』
『セシリー、そろそろ人が来るからお母様とお父様にお話がある時は心の中でね』
(うん! こんなかんじでしょ、おかあさま!)
『さすがセシリーだわ! うちの子賢いわ!』
最後にお母様が頭を撫でてくれる。その後にお父様も撫でてくれた。
すると、足音が聞こえてきた。普通ならこんなにうるさく足音なんて立てて来ない。こんなに足音を立てて来るなんて相当嫌なのか、セシリアに対しての嫌がらせなのか……。多分どちらもあるのだろう。
うるさい足音が扉の前で止まったと思うと、いきなりバタンッと音を立てて扉が開く。
「ほら! 朝だよ! さっさと起きなさい!」
今日の始まりだ……。
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