淫神の孕み贄

沖田弥子

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宰相の奸計 5

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 今の愛撫で、体の奥が淫液を滴らせてしまったのだ。
 滑りが良くなった指は濡れた内壁を擦り上げ、快楽を燃え立たせる。

「あ……あん……だめ……」

 もっと太いものがほしい。
 心の奥底が訴える。オメガの本能が雄を求める。 
 太い男根で感じるところを穿たれて、精をぶちまけられて、孕みたい。
 セナの心を見透かしたかのように、ファルゼフは赤くなった耳朶を甘噛みした。

「あなた様は美しい。この愛しい媚肉をわたくしの肉棒で味わいたい。わたくしの濃厚な精で、子を孕んではくれませんか?」
「そんな……だめです。だって、僕にはラシードさまとハリルさまがいます」

 直截な台詞で誘いをかけられ、驚いたセナは首を左右に振った。
 そのとき初めて、ファルゼフが宰相ではなく、欲望を漲らせる雄として目に映る。
 慇懃な宰相の仮面を剥がした不遜な男は喉奥で笑う。

「神の末裔たちに遠慮する必要はありません。わたくし自身も王族のアルファですから、淫紋の一族なのです。セナ様がわたくしの子を孕んでも、なんら問題はないのですよ?」
「……え?」

 耳元に囁かれたファルゼフの言葉に、瞳を瞬かせる。
 ファルゼフも王族のアルファだという話は初耳だ。

「わたくしの高祖母は王の娘でした。貴族に嫁いだのち家は没落しましたので、名ばかりの王族ですがね。ですが王家の血がわたくしにも流れています。つまり、わたくしはセナ様を孕ませる資格を有しています」

 ファルゼフはセナの遠縁にあたるのだ。高祖母が王の娘となると、かなり遠い傍系血族になるが、彼も王族の一員である。
 しかし、それだけでセナを孕ませる理由になるというのは少々強引ではないだろうか。理屈としては間違っていないかもしれないが、王であるラシードや儀式を司る大神官の承認が不可欠ではあるまいか。
 懇願するように頬にくちづけられて、雄の匂いを嗅いだセナの体が、かぁっと火照る。 
 ひとりでに腰が揺れてしまい、まるで押しつけるような動きを見せる。体が勝手に雄を欲して暴走してしまう。
 セナは心の隅に残った理性で必死に抵抗した。

「だめ、だめ……ちゃんと、しないと……」
「手続きはのちほどでも構いません。今ここで、あなた様を抱かせてください」
「だめぇ……抜いて……感じちゃう……」

 自分でも何を言っているのかわからなくなる。
 いやいやと首を振ったそのとき、扉の向こうから慌てたような声が耳に届いた。

「お待ちください、王。ただいま取り込み中でございます」

 先程の側近だ。彼の他にも、複数の足音がこちらに向かってくる。 

「私が立ち入れない場所など、この国のどこにもない。どうしても立ち塞がると言うのなら、屍になる覚悟をせよ」

 聞き慣れた低い声音に、はっとして顔を上げる。
 するりと、蕾に挿入されていた指が引き抜かれた。
 その隙にセナはローブを引き下ろし、長椅子の端に身を寄せる。

「王のお越しにございます」

 召使いによって扉は開け放たれた。
 現れたラシードは、長椅子で俯いているセナを目にして眉根を寄せる。
 慇懃な礼をしたファルゼフは、いつもどおりの平静な声を出した。

「ただいまセナ様と、淫紋についてお話ししていたところでございます」

 確かにそうなのだけれど、もしラシードが現れなかったら、あのまま抱かれていたかもしれない。
 中途半端に快楽を与えられた体は、じんじんと疼いている。体の火照りが収まらず、つい今まで指を咥え込んでいた蕾は、物欲しげに口を開けていた。
 顔を真っ赤にして俯いているセナは、ぎゅっとローブの裾を握りしめる。
 その様子から、執務室で何があったのか、ラシードには察せられてしまうだろう。
 ラシードは冷淡な双眸をファルゼフに向けた。

「会話だけで済んでいないようだな」
「はい。セナ様から儀式以来、淫紋が動かないとのご相談を受けましたので、無礼を承知で下腹部を拝見させていただきました。陛下もご存じのとおり、セナ様はすでに四年間懐妊されておりません。安定した王位継承のためには御子様を三人は産んでいただくことが将来のために必須であります。懐妊から遠ざかっているのは、淫紋が動かないことと関連があるのかもしれません。そこで、一片たりとも淫紋は動かないのかと確認を取りました」
「ほう。それで、淫紋は動いたのか?」

 ラシードは平静さを保っているが、その気配は刃を交わすかのように怜悧だ。
 兄さまは、怒ってるんだ……
 唇を震わせるセナはラシードを恐れた。
 王であり、つがいでもあるラシードの知らぬところで、他のアルファに抱かれそうになっていただなんて、彼の面目を潰す行為だ。どんな誹りや罰を受けても文句は言えない。
 ファルゼフは平然として、ラシードの問いに答えた。

「動きました」
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