淫神の孕み贄

沖田弥子

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神の末裔たちの策略 1

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 数日後、寝室の隣にある円形のソファに座ったセナは、緊張の面持ちで視線を往復させていた。
 両隣にはハリルとラシードが腰かけている。そしてセナの向かいには、宰相であるファルゼフが冷淡な表情を浮かべて、丸い大理石のテーブルに置いた両手を組んでいた。
 まるでこれから重要な会議が始まるかのような雰囲気である。
 この部屋は神の末裔たちの他には、限られた召使いしか入れないと決められている。隣の寝室や浴室などは毎夜セナがふたりから愛されている場所だ。本来は会合を行うような部屋ではないのだが、本日の話し合いの性質を考慮すれば相応しい場と言えた。
 今日は、セナの懐妊の可能性についての話し合いを行うことを、事前にファルゼフより伝えられている。子どもを三人は産まないと、トルキア国が将来、安定した王位継承を行えない。その憂慮を払拭するためだ。
 セナとしても、子どもたちの好きな職業に就かせてあげたいという想いがある。
 槍騎士やアサシンになりたいと無邪気に将来の希望を語る子どもたちを見ていたら、王様になりなさいと押しつけるなんてやりきれない。もし三人の子どもたちがいれば、各自が分担して国を統治しながら好きな職業に就けるかもしれないのだ。
 ファルゼフは一同を見回して、挨拶を述べた。

「皆様、おそろいになりましたね。それではお話しさせていただきます。先日、陛下とセナ様にはご説明いたしましたが、安定的な王位継承のためには、三人は御子様を産んでいただかなければなりません。しかしセナ様にはご懐妊の兆候が見られない。その原因として、淫紋が動かないことが発情期を妨げ、妊娠率の低下に繫がっているのではないかと考えられます」

 淡々と説明するファルゼフに、ハリルは頷いた。

「まあ、おかしいとは思ってたけどな。儀式のときは生き物みたいに動いてたんだ。もしかすると、淫紋が動かないと発情期も来ないってわけか?」
「両者は密接に繫がっております。医師の診察では、現在のセナ様の発情の値は七パーセントです」
「それっぽっちか? あんなに、あんあん啼いて締めつけてくるのにか?」

 いたたまれないセナは大理石のテーブルに顔を伏せる。するとハリルは慌てたように肩を抱いてきた。

「おいおい、けなしてるわけじゃないぞ。セナのせいじゃないから安心しろ」
「いえ……僕のせいなんです。感じては……いるんですけど……」

 できればもっと発情して、子を孕みたい。ふたりには毎晩、熱心に愛されている。それなのに発情の値が上昇しないということは、セナの体や感じ方に問題があるのだ。
 ファルゼフに目を向けたラシードは冷静に指摘した。

「つまり、淫紋の挙動率も七パーセントということだな?」
「おそらく。大神官の見解によりますと、淫紋の動きがイルハーム神の性の悦びを表しているそうです。淫紋が動くほど神の贄は発情した証となり、神の子を授かるとのことです」
「懐妊するにはなんらかの方法で淫紋を動かし、発情を頂点まで持っていかなければならないようだな」
「そういうことになります。数値のお話しが出ましたが、わたくしからお伝えしておきたいことがございます」
「申してみよ」
「たとえば発情値が百パーセントに達したとしても、必ず懐妊すると保証されるものではありません。神の子はイルハーム神の授かり物という大神官の教えどおり、懐妊するには時期というものがございます。数値はあくまでも目安です」
「そうであろうな。だが、今のままでは懐妊の可能性は低いだろう」
「そのとおりでございます」

 発情が最高潮に達しても、必ず妊娠するわけではないのだ。あくまでも可能性が高まるという話である。
 けれどラシードの言うとおり、今のままでは妊娠する確率は極めて低いだろう。なんらかの方法で淫紋を動かすことが、懐妊へのもっとも近道と思えた。
 ファルゼフは眼鏡の縁を指先で押し上げる。彼の双眸が、きらりと煌めいた。

「そこでですね、もっとも有効な方法として、新たな儀式を行っていただくのがよろしいかと存じます」

 セナは過去、複数のアルファたちから精を注がれる奉納の儀、そしてラシードとハリルのふたりから交互に抱かれる受胎の儀を神殿で行った。
 その結果双子の王子を懐妊できたわけだが、淫靡な儀式は思い出すと恥ずかしいばかりだ。
 ぎくりとしたセナは、ファルゼフに問いかけた。

「新たな儀式……ですか? それは、以前行った儀式をもう一度やるということでしょうか」

 ファルゼフは、ゆるく首を振る。
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