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丘の下の村 1
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貴重な冬の太陽が眩い陽射しを地上に振りまいている。見上げた天は一面の蒼穹。
晴れ渡ったある日の昼下がり、結羽とユリアンはレオニートに連れられて馬車に乗り、丘の上に建つ城を下りて麓の村へやってきた。
アスカロノヴァ皇国に来て以来、城以外の場所へ赴くのは初めてのことだ。結羽の心はまだ見ぬ世界への期待に弾む。
「わあ……綺麗な白樺。湖もすぐ近くなんですね」
車窓に映る広大な白樺の森を過ぎれば、ぽつりぽつりと雪を乗せた屋根の合間に煌めく湖が見える。湖も凍っているようで、白刃のような氷に輝いていた。すべてが純白の世界に覆われた幻想的な光景だ。
寒くないよう厚手のコートを着込み、毛皮の帽子を被ったユリアンは嬉々として外を眺める。
「村には子どもたちがいっぱいいるんだよ。みんなで雪合戦したり、雪だるま作ってるんだ」
きっとユリアンも村の子どもたちと一緒に遊びたいのだろう。本日は、村の子どもたちにかき氷をごちそうしてはどうかというレオニートの提案で、かき氷機と食材、器一式を持参してきた。もちろん結羽の新作シロップも用意してある。
どうやら晩餐会の一件で落胆した結羽に配慮してくれたらしい。挽回の機会を与えられたこと、そしてレオニートが気遣ってくれたことを嬉しく思う。
馬車は村のはずれにある広場に到着した。雪のない時季は公園になっているようだが、広場は一面が真っ白な雪に覆われている。
その広場は子どもたちの歓声に包まれていた。沢山の子どもたちが手袋を嵌めた手で雪玉を作り、雪合戦に興じている。
馬車から降りたユリアンは瞳を輝かせてその様子に見入っていたが、結羽の影に隠れている。恥ずかしいのかもしれない。
「ユリアン、皆で雪合戦しましょうか」
「ん……でも、ぼく、見てるだけで村の子たちと遊んだことないんだ……」
そのとき後続の馬車から降りたダニイルが荷台から荷物を下ろし始めた。すべてかき氷のための道具だ。ダニイルは皇帝のお伴が結羽だけでは心許ないという理由で付いてきたのだが、レオニートに荷物係に任命されてしまった。
「おい、結羽。荷物下ろしを手伝え。おまえのかきごお……ぶっ!?」
ばしゃり、と突然ダニイルの顔面に雪玉がぶつけられる。
雪塗れになった近衛隊長を、一同は息を呑んで見守った。
雪玉が飛んできた方向に目をむけると、男の子が悪戯めいた笑顔でダニイルの反応を窺っている。
手のひらで顔を拭ったダニイルは、ぎり、と歯噛みした。
「この悪ガキめ! 良い度胸だ!」
吠えたダニイルが広場に駆け出すと、子どもたちは大きな嬌声を上げながら蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。逃げながら雪玉をダニイルに投げつけるので、広場には大量の雪玉が飛び交った。
「どうやらダニイルは鬼に仕立てられてしまったようだな」
笑いながら鬼ごっこを眺めているレオニートの傍にも雪玉が飛来する。子どもの作った雪玉とはいえ、雪は結構な重さなので、投げると飛距離が出るのだ。
「ひゃあ!」
結羽の頭にぶつかりそうになった雪玉を、レオニートは腕を伸ばして受け止めた。
「防戦一方ではよくないな。ようし、結羽、ユリアン。我々も雪合戦に加勢するぞ!」
走り出したレオニートを慌てて追いかける。皇帝が雪合戦に参加するなんて怪我でもしたらどうするのかと危惧したが、レオニートを警護するはずのダニイルは雪玉の標的と化している。
「待ってください、レオニート! ダニイルさんに加勢するんですか?」
「鬼に雪玉をぶつけながら逃げるのだ。捕まるなよ!」
そっち!?
縦横無尽に追いかけてくるダニイルから逃げ惑いながら、子どもたちに混ざり、雪玉を作っては投げる。広場は鬼を避けながら雪玉を投げ合うという遊びに大変な盛り上がりを見せた。
晴れ渡ったある日の昼下がり、結羽とユリアンはレオニートに連れられて馬車に乗り、丘の上に建つ城を下りて麓の村へやってきた。
アスカロノヴァ皇国に来て以来、城以外の場所へ赴くのは初めてのことだ。結羽の心はまだ見ぬ世界への期待に弾む。
「わあ……綺麗な白樺。湖もすぐ近くなんですね」
車窓に映る広大な白樺の森を過ぎれば、ぽつりぽつりと雪を乗せた屋根の合間に煌めく湖が見える。湖も凍っているようで、白刃のような氷に輝いていた。すべてが純白の世界に覆われた幻想的な光景だ。
寒くないよう厚手のコートを着込み、毛皮の帽子を被ったユリアンは嬉々として外を眺める。
「村には子どもたちがいっぱいいるんだよ。みんなで雪合戦したり、雪だるま作ってるんだ」
きっとユリアンも村の子どもたちと一緒に遊びたいのだろう。本日は、村の子どもたちにかき氷をごちそうしてはどうかというレオニートの提案で、かき氷機と食材、器一式を持参してきた。もちろん結羽の新作シロップも用意してある。
どうやら晩餐会の一件で落胆した結羽に配慮してくれたらしい。挽回の機会を与えられたこと、そしてレオニートが気遣ってくれたことを嬉しく思う。
馬車は村のはずれにある広場に到着した。雪のない時季は公園になっているようだが、広場は一面が真っ白な雪に覆われている。
その広場は子どもたちの歓声に包まれていた。沢山の子どもたちが手袋を嵌めた手で雪玉を作り、雪合戦に興じている。
馬車から降りたユリアンは瞳を輝かせてその様子に見入っていたが、結羽の影に隠れている。恥ずかしいのかもしれない。
「ユリアン、皆で雪合戦しましょうか」
「ん……でも、ぼく、見てるだけで村の子たちと遊んだことないんだ……」
そのとき後続の馬車から降りたダニイルが荷台から荷物を下ろし始めた。すべてかき氷のための道具だ。ダニイルは皇帝のお伴が結羽だけでは心許ないという理由で付いてきたのだが、レオニートに荷物係に任命されてしまった。
「おい、結羽。荷物下ろしを手伝え。おまえのかきごお……ぶっ!?」
ばしゃり、と突然ダニイルの顔面に雪玉がぶつけられる。
雪塗れになった近衛隊長を、一同は息を呑んで見守った。
雪玉が飛んできた方向に目をむけると、男の子が悪戯めいた笑顔でダニイルの反応を窺っている。
手のひらで顔を拭ったダニイルは、ぎり、と歯噛みした。
「この悪ガキめ! 良い度胸だ!」
吠えたダニイルが広場に駆け出すと、子どもたちは大きな嬌声を上げながら蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う。逃げながら雪玉をダニイルに投げつけるので、広場には大量の雪玉が飛び交った。
「どうやらダニイルは鬼に仕立てられてしまったようだな」
笑いながら鬼ごっこを眺めているレオニートの傍にも雪玉が飛来する。子どもの作った雪玉とはいえ、雪は結構な重さなので、投げると飛距離が出るのだ。
「ひゃあ!」
結羽の頭にぶつかりそうになった雪玉を、レオニートは腕を伸ばして受け止めた。
「防戦一方ではよくないな。ようし、結羽、ユリアン。我々も雪合戦に加勢するぞ!」
走り出したレオニートを慌てて追いかける。皇帝が雪合戦に参加するなんて怪我でもしたらどうするのかと危惧したが、レオニートを警護するはずのダニイルは雪玉の標的と化している。
「待ってください、レオニート! ダニイルさんに加勢するんですか?」
「鬼に雪玉をぶつけながら逃げるのだ。捕まるなよ!」
そっち!?
縦横無尽に追いかけてくるダニイルから逃げ惑いながら、子どもたちに混ざり、雪玉を作っては投げる。広場は鬼を避けながら雪玉を投げ合うという遊びに大変な盛り上がりを見せた。
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