タイムスリップした私は、前世の『私』を助けようと思います!

夜船 紡

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さて、そんな会話をするためにヴィーグさんが私を待っていたわけではない。ヴィーグさんが私を待っていたのは、これからの話をするためだ。
私の目的である、カレンを守るには学園に行く必要がある。そう、学園・・・王都エリゼ学園。
王族の方とその側近の子どもが入る3歳から5歳までの幼児院。王都内の貴族の教育を6歳から11歳まで受けることが出来る低学院。12歳から15歳までのデビュタント前の交流の場としての高等院。
これら全てが王都内の王家の敷地内にできている事と、幼い王族の御子息、つまりは皇太子や姫君と交流できるかもしれないという目的もあり、大抵の貴族の子どもはそこに入れられている。一応、断ることもできるのだけど、お金のない貴族からすれば、お金をかけることなく教育が受けられるのでありがたい話だし、上級貴族としても、人脈を掴む場としては有効的だと受け入れられていた。
何年か前の王家の使用人が起案して作ったという話もあり、その人の名前をつけたとされている。
それはさておき、そんな学園でイルミアはジュニアスの心を掴んでずっとそばに居り、カレンはそれを見るたびに心を痛め、イルミアにも「婚約者がいる異性に近づくのは・・・」と注意もしていた。まあ、ジュニアスに話されてジュニアスから「婚約者だからと私の友人関係に文句を言うのか!」と逆効果になってしまうのだけど。
要するに、学園に入れなければカレンを守ることが出来ないということだ。
学園では、身の回りの世話をする使用人が1、2名であればつけることが出来る。つまり、この座を私が得る必要があるのだ。
今現在、フェルデで使用人はいない。
彼は、ある程度のことは自分で出来ると豪語しているし、実際、学園と家の往復であれば困る事はないからだ。
学園は寮も建設されているが、入るのは地方の貴族だけで王都内に家を持つ貴族は皆自宅から通っている。
イルミアは確か寮に入っていたはずだけど・・・

「私は、使用人としてフェルデ・・・いや、フェルデ様のお側につかせていただき、カレン、様を守ってみせます!」
「まあ、そうなんですけど、貴方に使用人として動けますかね?」
「マナーは一応、思い出していますよ?」
「私が気にしているのは、そこではありません。カレン様は元々使う立場のお方でしたから、使われる立場というのには慣れていません」
「あー確かに・・・」
「そこで、カレン様が実際に熱を出し、貴方が無事採用されるまでの間、使用人の常識等を叩き込んでいただこうと思います」
「え、だ、誰に?」
「この屋敷の執事に相談し、トルテというベテラン使用人にお願いする事にしました」
「トルテさん・・・?」

トルテさんってカレンだった時代、めちゃくちゃよくしてもらった覚えのある使用人さんだ。
多分、ヴィーグさんもそれを知ってて付けてくれたのだろう。

「ちゃんとした使用人用の服が出来るまでは少しサイズが合いませんが、こちらの服を着ていただきます。それと、言葉遣いにも気を付けてください。これからの貴方は使用人の立場となりますから」
「わかりました」

ヴィーグさんはフェルデのお抱え占い師で、彼の参謀とか、助言者とか、相談役といった立場となるので、使用人からしたら『様』付けをしなくてはならなくなる。

「それと、当たり前ですが、フェルデ様には勿論、他の方々には貴方の素性は内密に」
「それはわかる・・・わかりますけど、どう説明しましょうか?」
「フェルデ様の『運命』を変える鍵として私が連れてきた事は執事や使用人頭には伝えています。出身地等も東の国から来たというあのままで大丈夫だとは思いますよ」
「そうですね」
「今日はもう遅いですし、明日の朝に早速トルテにこちらに来て色々教える様伝えていますから」
「え、来てもらっちゃっていいの?」
「言葉遣い」
「来ていただいてしまっていいのですか?」
「屋敷内の案内なしで動かれるほうが困りますからね」
「え?ある程度は来たことがあるので覚えていま・・・」
「それは前世での事で、貴方がここに来たのは初めての筈です。疑われる原因にもなるので勝手な行動は慎む事です」
「は、はい」
「それに、使用人には使用人の通路があります。主人の歩く廊下を使用人が歩いたりはしません」
「あ、そうか・・・いや、そうですね、わかりました」
「それでは、ゆっくり休んでください」
「はい、ありがとうございます」

ヴィーグさんが部屋から出て、シーンとなった途端に不安が押し寄せてきた。

「大丈夫、大丈夫・・・ちゃんと、覚えてるから、絶対なんとかしてみせるから、私、私、頑張るから・・・」

沢山の好奇心の目線、人からの憎悪の目線、それら全てを思い出し、身震いする。
もう、あんな思いはしたくない。
幸せになった姿を見て、安心して帰るんだ。絶対に。
ベットの中に入り、ギュッと目を閉じてタイムスリップの初日を終えた。
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