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朝食後は、与えられた客室に戻ってトルテさんより使用人用の試験を渡され、一般教養からマナー、使用人の心構え等、1時間程の座学の時間が続き、実務練習へと移行した。一般教養やマナーは前世の知識のおかげで何とかなったが、立ち振る舞い等は現世の私の癖や習慣が色濃く、ダメ出しを喰らう。
「背筋はピンと、まっすぐに!」
「反るんじゃありません!弓ですか!貴方は」
真っ直ぐに歩く時も、今の私では優雅ではなく怪獣が歩くようにドカドカと音が鳴ってしまう。
優雅に歩くというのは、意外と体力も筋力も必要だったようだ。カレンの時は小さな頃からやっていたが故に無意識でもできるようになっていたのだろう。
足がガクガクになり立てなくなった頃に、ようやく昼食の休憩がとられた。
「動けないでしょうから、私が持ってきます」
そういって食べやすいサンドイッチを持ってきてくれたトルテさんは、本当に優しいと思う。
そして、体力の復活を待つ間、お茶を入れる練習をすることになった。
「違います。そのままでは渋味が強く出てしまいます」
ため息を吐かれながらの入れ直しが何度も続く。
前世の時に覚えたお茶の葉の種類やブレンドは思い出した時に鮮明に思い出せるようになっていた。
しかし、お茶を入れる技術は別。
こればかりは何度も練習して覚えなくては一朝一夕で出来るような物ではない。
だが、フェルデのお気に入りの紅茶ぐらいはちゃんと美味しく入れれるようにならなければ、付き添い使用人としては失格だ。
フェルデの好きなお茶は、キームンやウバの様な良い香りのするものでキームンの様に少し蒸らし過ぎてもいけるものもあるが、ウバの様に程よい渋味が美味しいお茶なんかは上手くしないと旨味が消える。
「難しい・・・。すみません、もう一度やってみせていただけませんか?」
「いいでしょう」
トルテさんが入れる様は流れる様にスムーズで、絵に描いたようなら優雅さすら見える。
そして、茶葉本来の香りがふんわりと薫る。
「貴方の場合、この茶葉を踊らせる部分が勢いが良すぎるんです。あそこまで勢いがあると、空気は入りますが・・・」
トルテさんの解説を聞きながらもう1度入れてみる。
結局、10回程して漸くお許しが出た。
「まあ、いいでしょう」
許しが出たお茶とトルテさんのお茶を比べてみると、味は同じ茶葉とは思えないけれどもなんとか飲めるような味にはなった。
「本日はこれで終わりです。お疲れ様でした」
「ありがとうございました」
「また、夕食時に訪ねにきますからここにいてくださいね」
「はい。わかりました」
妬み恨みを持った使用人がいる。そんな中に1人で入ればどうなるか・・・。それを避ける為に一緒に行ってくれるというトルテさんはとても優しい人なんだろう。
教えはスパルタだけど。
「ふぅ・・・」
明日は筋肉痛だな。そう思う程度には酷使したと自負する。前世と今、歩き方などの違い、やっぱり、自分と彼女は似て非なるものなんだと実感する。
ふと、窓を見ると、木に綺麗な花が沢山咲いていた。
窓を開けるとふんわりといい香りが部屋に広がる。
窓枠に乗り上げて一輪の花を取ろうと手を伸ばす。
すぐに取れそうなのに・・・グッとさらに身を乗り出し、花に手が届きそうになった時だ。
「何してやがる!!」
「え、あ・・・っ!!!」
下からの怒号に驚いて、体のバランスが崩れてそのまま下へと落下してしまった。
思わず目を瞑り、衝撃がくると覚悟した。
・・・あれ?来ない・・・
「っ!大丈夫かよ」
そろーと目を開けるとそこにはラフな格好をした青年が私を抱きかかえていた。
「背筋はピンと、まっすぐに!」
「反るんじゃありません!弓ですか!貴方は」
真っ直ぐに歩く時も、今の私では優雅ではなく怪獣が歩くようにドカドカと音が鳴ってしまう。
優雅に歩くというのは、意外と体力も筋力も必要だったようだ。カレンの時は小さな頃からやっていたが故に無意識でもできるようになっていたのだろう。
足がガクガクになり立てなくなった頃に、ようやく昼食の休憩がとられた。
「動けないでしょうから、私が持ってきます」
そういって食べやすいサンドイッチを持ってきてくれたトルテさんは、本当に優しいと思う。
そして、体力の復活を待つ間、お茶を入れる練習をすることになった。
「違います。そのままでは渋味が強く出てしまいます」
ため息を吐かれながらの入れ直しが何度も続く。
前世の時に覚えたお茶の葉の種類やブレンドは思い出した時に鮮明に思い出せるようになっていた。
しかし、お茶を入れる技術は別。
こればかりは何度も練習して覚えなくては一朝一夕で出来るような物ではない。
だが、フェルデのお気に入りの紅茶ぐらいはちゃんと美味しく入れれるようにならなければ、付き添い使用人としては失格だ。
フェルデの好きなお茶は、キームンやウバの様な良い香りのするものでキームンの様に少し蒸らし過ぎてもいけるものもあるが、ウバの様に程よい渋味が美味しいお茶なんかは上手くしないと旨味が消える。
「難しい・・・。すみません、もう一度やってみせていただけませんか?」
「いいでしょう」
トルテさんが入れる様は流れる様にスムーズで、絵に描いたようなら優雅さすら見える。
そして、茶葉本来の香りがふんわりと薫る。
「貴方の場合、この茶葉を踊らせる部分が勢いが良すぎるんです。あそこまで勢いがあると、空気は入りますが・・・」
トルテさんの解説を聞きながらもう1度入れてみる。
結局、10回程して漸くお許しが出た。
「まあ、いいでしょう」
許しが出たお茶とトルテさんのお茶を比べてみると、味は同じ茶葉とは思えないけれどもなんとか飲めるような味にはなった。
「本日はこれで終わりです。お疲れ様でした」
「ありがとうございました」
「また、夕食時に訪ねにきますからここにいてくださいね」
「はい。わかりました」
妬み恨みを持った使用人がいる。そんな中に1人で入ればどうなるか・・・。それを避ける為に一緒に行ってくれるというトルテさんはとても優しい人なんだろう。
教えはスパルタだけど。
「ふぅ・・・」
明日は筋肉痛だな。そう思う程度には酷使したと自負する。前世と今、歩き方などの違い、やっぱり、自分と彼女は似て非なるものなんだと実感する。
ふと、窓を見ると、木に綺麗な花が沢山咲いていた。
窓を開けるとふんわりといい香りが部屋に広がる。
窓枠に乗り上げて一輪の花を取ろうと手を伸ばす。
すぐに取れそうなのに・・・グッとさらに身を乗り出し、花に手が届きそうになった時だ。
「何してやがる!!」
「え、あ・・・っ!!!」
下からの怒号に驚いて、体のバランスが崩れてそのまま下へと落下してしまった。
思わず目を瞑り、衝撃がくると覚悟した。
・・・あれ?来ない・・・
「っ!大丈夫かよ」
そろーと目を開けるとそこにはラフな格好をした青年が私を抱きかかえていた。
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