【完結】悪役令嬢になんてさせません。

夜船 紡

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本編

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今日は珍しく侯爵様もお方様も家におられます。
皇太子であるルーク様が館に来るといってから1週間経ちました。
そして、ついに明日皇太子であるルーク様が来られるので、その準備の為に大忙しなのですね。
かくいう私も、お菓子作りと昼の献立で真新しいものはないか?とぶっちゃけ拐われるように食堂に放り込まれました。
誰にって?ドルマン様とマーク様にだよ。
ドルマン様に至っては、マリア様ににっこりと笑顔で「エルゼをお借りしますね」と拒否できないようにがっちり両肩を掴んで言われました。
で、今はマーク様や他の調理師の方々に囲まれている状況です。
「で、なんかないか?」
「そうですね・・・」
うーんと悩みながら考えます。
この世界の食事は焼く、煮るが主になっています。
ならば、華やかな蒸し餃子はどうだろうか?

説明するよりもやって見せた方が早いからとほうれん草、トマト、南瓜を用意し煮てもらう。
新しい料理とあって、マーク様も他の皆様も興味深々だ。
煮上がった野菜をそれぞれペースト状にして小麦粉に別々に入れて混ぜます。
トマトは溶け込んでしまいましたがトマトソースとしてそのまま利用し、他の水分は煮汁を混ぜました。
程よく混ざったら濡れ布巾に包み冷蔵庫へ。
この時点で、色がついた生地をみておお~と目を輝かせる。
まるで、小さな子どもが新しいことにチャレンジをするみたいだ。
次に具だ。個人的に肉たっぷりのものより野菜が多い方が柔らかくて好みなので肉3:野菜7の割合で作ろうと思う。
肉は鶏肉と豚肉のミンチ、そしてエビのすり身の3種類。
せっかく色が違うのですもの。味も変えた方が楽しいでしょう?と鶏肉には玉ねぎ、しいたけを。豚肉にはニラとキャベツを。エビのすり身には白菜と生姜を混ぜ合わせます。
寝かせた生地を取り出して小さく丸を作って潰して円状にするとマーク様がやってみたいとおっしゃったので別の生地をお任せします。
もう1人も立候補されましたのでお任せ。
皮が出来たところである思いつきをしました。
それは薔薇餃子です!
トマトの皮を三枚ずらして重ね、具を中に入れ込み3分の1ヒラヒラが出るようにくるくるっと巻きます。
さらにお花に見えるように先ほどとは別に巻くとヒラヒラが花びらのようになり、これを蒸すと薔薇のように見えるのです。
それを見て、マーク様が南瓜の皮で真似をされます。
私はほうれん草の皮を普段のひらひら包みにして葉っぱに見立てるようにすると周囲から歓声が上がりました。
完成してから喜んでくださいなとある程度完成したら耐熱の皿に載せます。
で、大きい鍋に水を入れ、皿を乗せます。蒸し器、まだないんですよねぇ・・・公爵家専門のとこに頼んでるんですけど、まだ完成してないようで。
しばらく蒸して、ふわぁっと蓋をあけると白い蒸気が出て行き中の色彩豊かな薔薇餃子が顔を出します。
見た目の美しさに皆、目を奪われました。そして待ちに待ったお味見のお時間です。
酢醤油はないので酢に塩胡椒を入れてタレにしました。マーク様や調理師の方々に渡して行きます。さりげなく、ドルマン様が混ざっているのは気にしない。
うん、美味しくできました。
皮はもちもち、具はジューシーです。
他の方々もこれはいいと感動されました。
デザートは、ゼラチンを使ったミルク ババロアを提案しました。
さらっと口の中でとろけるような食感でこれもメニュー化されたところで私は食堂から出てマリア様の元へと急ぎます。

マリア様の部屋の扉の前、ノックし入ろうとすると話し声が聞こえます。
耳をすましてみるとどうやら中にいるのは公爵様とお方様のようです。
「マリア、この間のお茶会での仕草、とても素敵でしたわ。よく、学んでいたようですね」
「お母様・・・!ありがとうございます」
「陛下も褒めていたよ。聡明な子だと」
「お父様・・・」
「忙しくてあまり話せなくてごめんなさいね、でも、愛していますよ」
「わた、わたくしもですわ、お母様」
「おやおや、私だって愛しているよ?マリアも、君もね」
「まあ旦那様ったら」
ああ、ここにクラウス様がいたら完璧なのに。
とりあえず、家族の団欒を邪魔してはいけないわ。
でも、本当に良かった。
マリア様、とても嬉しそうですもの。
今後も、おひまを見てお方様も公爵様もマリア様にもクラウス様にも会いにきてくださるようになれば、お二人の孤独はきっとなくなるわね
ふふっと微笑んでいると、ドルマン様が来られ独り言のように、
「公爵様もお方様もお子のことは気にはしていても忙しさにかまけていたと仰った。しかし、今回マリア様の成長を見て感動なされていたのも確かだ」
そう仰って廊下を歩いていかれた。
明日は、ルーク様が来られる日。
どんなことが起きるのか、想像もつかないけれど、きっと良い方向に行くと思いたい
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