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本編

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そしてついに、ルーク様を迎える日となりました。
いつもに増して、部屋はピカピカ、お庭は整備がしっかりされております。

「マリア様、本日のアクセサリーはこちらでよろしいでしょうか?」
ルーク様の瞳に合わせた紫色のアメジスト。それをシンプルな薄い赤のドレスに身を包んだマリア様は、とてつもないぐらいの美少女です。
「ねぇ、エルゼ」
「はい。なんでしょうか、マリア様」
「昨日ね、お母様とお父様が私を褒めてくださったの」
白い頬を朱に染めて嬉しそうに微笑まれながら言われます。
「それはよかったですね」
「ええ。エルゼ。あなたが私の側にいてくれるおかげだわ。これからも側にいてね」
「もちろんですわ」
ああ、もう本当にうちのマリア様は天使だわ。大好き!!
原作では考えられないほどマリア様にメロメロになりながら、いつルーク様が来られてもいいようにマリア様を飾ります。
「そういえば・・・」
「なあに?」
「クラウス様はどうされておられるのでそうか?」
最近、マリア様の婚約があったこともあり、お二人の交流会も途絶えがちでクラウス様のお姿を見る機会があまりなかったことを思い出しました。
「そうね・・・あの子にもルーク様を紹介したいし、エルゼ、ここはいいからあの子のところへ行ってくださる?」
「かしこまりました」

小説の設定では、クラウス様はルーク様との年齢も近いため、側近候補に選ばれるはず。
ならば、今ここでルーク様とクラウス様が会うのもおかしくはないのかしら?
クラウス様の部屋につきノックをする。
「誰だよっ!ほっといてよ」
涙声だ。
それに、クラウス様付きの侍女や小間使いの姿もない。
「申し訳ありません、エルゼでございます。マリア様より言付けを承り、参りました」
「エルゼ?・・・・ねぇ様から?」
「はい。ですが、後にしたほうがよろしいでしょうか?」
「・・・いいよ。入って」
「失礼いたします」
ガチャっと扉を開けるとクラウス様が抱きついてまいりました。
「ねぇ様が、結婚するって。僕にはもう会わないって本当なの!?」
涙目でおっしゃられる姿はとても可愛いですが、ひとまず、安心していただかなくては・・・
「いいえ、クラウス様。確かに王家と公爵家の意思で皇太子様とマリア様の婚約は決まりましたが、結婚はまだまだ先ですわ。それに、こうして私めをクラウス様の元に来させたのもマリア様から言われたからですわ」
「・・・エルゼは、僕に会いたくなかったの?」
おっと、誤解させるような言い方でしたね。
「もちろん、会いたかったですわ。今回は、皇太子様が直々にこちらにお見えになられるので、公爵様も皆も慌ただしく、クラウス様には不安にさせてしまったようですが、これが終われば、また、マリア様とお茶会をしましょうね」
「うん。・・・・それで姉様がなんて?」
「はい。是非に大事な弟君であるクラウス様を婚約者である皇太子様にご紹介したいとのこと。今からその支度をしていただけるよう伝えにまいりましたの」
「・・・大事?姉様、僕が大事??」
「ええ」
「そっかぁ・・・わかった!!」
先ほどまでと打って変わって機嫌良くなられ、使用人を呼び寄せられ支度を始めます。
「また後でね!!」
「はい、失礼します」

戻ってマリア様にお伝えすると「まあ、あの子ったら」とクスクスと笑われておられました。
そして、すべての支度が整い、皇太子であるルーク様が参られたのです。


「突然の訪問、申し訳ないな」
「いえ、光栄なことですので」
「ようこそ、公爵家へ」
「「「ようこそ、公爵家へ」」」
使用人がずらりとホームに並び、ルーク様を出迎えます。
ルーク様の接待は、公爵様、お方様、そしてマリア様。クラウス様は後ほど落ち着いてから呼びに行く予定になっています。
「早速ですが、当家自慢の料理を食べながら、お話でもいかがでしょうか?」
「ええ、ありがとうございます。とても美味しいと聞いて楽しみにしておりました」
「どうぞ、こちらへ」
スッとスムーズに食事の席までマリア様がエスコートします。
そして、食事の開始です。
前菜、副菜と一見変わった様子がないことにルーク様の表情を読むと「なんだこんなものか」といった様子。
そして、ついにメインの薔薇餃子が出てきました。あの後、盛り付けに辛子によく似たものがあり、それをつけても美味しかったからと、マーク様は張り切っておられたのですよね。
出された薔薇餃子を見てルーク様は目を開かれ、恐る恐る、口に運ばれます。
赤いトマト餃子は鶏肉と玉ねぎの甘みが程よくトマト生地の酸味と混ざり合うのですが・・・ルーク様も気に入られた様子です。
前回同様、美味しそうに召し上がられておられます。
「すごいな、まるで絵の中の花を食べているようだ。それに初めて食べる味だ。とても美味しい」
と賞賛されました。
その後も、穏やかに食事会はすみ、ミルクババロアも美味しく召し上がられ、
「マシュマロに似ているが・・・こちらの方が口当たりが良いな・・・」
とご満悦のご様子。
「素晴らしい食事だった。父上にも食べさせたいほどだ」
「ありがとうございます」
そんな感じの話をした後は、マリア様とご一緒に滞在時における客間へとご案内します。
いよいよ、クラウス様の紹介です。
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