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本編
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ルーク様がソファにお座りになられたと同時に、さっとお茶をお出しします。
そして、寛げる体制に入られたのを見計らってマリア様が片手を挙げ、私に合図を送ります。
そう、クラウス様をお連れするという大事な使命があるのです。
クラウス様の支度もすでに整っているので後はお呼びするだけです。
ーーーコンコン
「クラウス様、入りますよ」
「エルゼ、いよいよなんだね。はぁ・・・」
「大丈夫ですわ。何時ものクラウス様でしたら皇太子殿下もきっと側近になさいますわ」
「う、うん・・・がんばるよ」
「はい」
よし行こうっ!と両手でファイトっとされてから歩き始めるクラウス様。
しかし、その手はわずかに震え、少し顔が青ざめており、かなり緊張されている様子。
ポケットを探るとちょうど良いものが入っていました。
「クラウス様、あーん」
「え?あむっん」
本来私の身分だとこのような真似はできませんが、まあ、まだ見習いであることと最近のクラウス様ならば許してくださるだろうという甘えからの暴挙である。
「ん、甘い・・・。ってなにするんだ!!」
先ほどよりも緊張がほぐれたのか、いい表情になられました。少し頬が赤いですが、先ほどの青ざめた顔よりずっといいですわ。
「私のおやつのべっこう飴ですわ。うん、リラックスできたようですわね。参りましょう」
ニッコリと微笑むとブツブツと「こちらの気も」「まったくもー」と小言を言っておられましたが急に微笑んで
「うん、ありがとう。行こう」
そういって私の手を握り廊下を歩き始められました。
そして、ゲストルームに到着すると先ほどまでの緊張はなかったかのように凛々しいお顔になり扉を叩かれます。
「公爵が嫡男、クラウスと申します。ご挨拶に伺いました」
「入れ」
「失礼します」
素晴らしいマナーで入られたクラウス様をとても褒めたい気持ちでいっぱいです!!
これが幼稚園とかのお遊戯会で最後までやりきった子どもへの感動なのねっ!と1人思っておりました。
まさか、私がいない間、マリア様がルーク様に私のことを話しているだなんて思いもよりませんでしたわ。
そして、マリア様の話を聞いてルーク様が私に興味を持たれたなんて知る訳がなかったのです。
クラウス様とルーク様の顔合わせの後、3人で穏やかにお茶会が行われました。
そして、お茶会も終盤の様子だったので最後に前世でいうロシアンティーを勧めてみようと思います。
ジャムはこの公爵家で咲いていた綺麗な薔薇の花で作りました。
カチャッと新しいお茶を置き、その横に生花の薔薇を添えた薔薇のジャムを横に置きます。
「これは?」
ルーク様がマリア様に訊ねられましたが、マリア様もわからないと言った表情をされておられます。
唯一、ロシアンティーを飲んだことのあるのはこの中ではクラウス様だけです。
以前、たまたまクラウス様が落ち込んでおられたのでお出ししたのです。
それはもう喜ばれて、以来いつもジャムを添えたロシアンティーを好まれていました。
「殿下、これはマリア姉様の侍女エルゼの考案した新しい飲み方でございます。このようにジャムを少し口に含みお茶を飲む。するとジャムの甘みとお茶の味が口の中に広がるのです」
クラウス様はそういってジャムを口に含みお茶を飲まれました。
それを手本にマリア様もルーク様も真似をなさいます。
「これは・・・美味しいな。お茶の味を損なうわけでもなく、ジャムの香りがふわりと香りお茶が飲みやすい・・・」
母上も喜びそうだとルーク様はぼそりと言いました。
そして、その様子をみてクラウス様は誇らしそうにこちらを見ます。
まるで、ちゃんと説明できたよ!と褒めて褒めてと言わんばかりに。
それに頷きながら微笑んでいると、
「エルゼ」
「はい、マリア様。こちらに」
マリア様がすっとこちらをみて、私はすぐに薔薇のジャムを瓶に詰めたものを差し出します。
「こちらは公爵家の庭で咲き誇る薔薇の花で作りました、香り豊かなジャムでございます。是非、お土産にお持ち帰りくださいませ」
なお、このジャム。公爵様達にもお出ししてお土産としても大丈夫だろうと許可を得たものです。
流石に勝手にしたら首が飛んでしまいそうですからね。
「ありがとう。これも、君が?」
「はい、ですが、私はあくまで提案のみで作ったのは料理長にございますのでご安心くださいませ」
「そうか、ではありがたくいただこう。ーーーしかし、君は不思議だな。他の侍女はここまで自分の雇い主に愛情は持たない。むしろ・・・いや、なんでもない。忘れてくれ」
あれ?もしかしてさっきのクラウス様とのやりとり見られてしまいましたでしょうか?
むしろ・・・のところで一瞬瞳に影がさしたように見えたけれど・・・
「私は・・・侍女です。ですが、マリア様もクラウス様も愛しています。大切な方だと思っております。そして、マリア様の殿方となられるルーク様も・・・そうなれたらと思っております」
「は、ふふふ。ありがとう。なら、期待してるよ、エルゼ」
初めて、仮面じゃない笑顔を見たような気がします。
こうして、ルーク様の初の訪問は終わったのでした。
全てが終わったあと、ふと思っていたのですが・・・もしかして私、なんかの能力でもあるの?
子どもとはいえこんなに警戒心がなくて大丈夫かしら・・・
そして、寛げる体制に入られたのを見計らってマリア様が片手を挙げ、私に合図を送ります。
そう、クラウス様をお連れするという大事な使命があるのです。
クラウス様の支度もすでに整っているので後はお呼びするだけです。
ーーーコンコン
「クラウス様、入りますよ」
「エルゼ、いよいよなんだね。はぁ・・・」
「大丈夫ですわ。何時ものクラウス様でしたら皇太子殿下もきっと側近になさいますわ」
「う、うん・・・がんばるよ」
「はい」
よし行こうっ!と両手でファイトっとされてから歩き始めるクラウス様。
しかし、その手はわずかに震え、少し顔が青ざめており、かなり緊張されている様子。
ポケットを探るとちょうど良いものが入っていました。
「クラウス様、あーん」
「え?あむっん」
本来私の身分だとこのような真似はできませんが、まあ、まだ見習いであることと最近のクラウス様ならば許してくださるだろうという甘えからの暴挙である。
「ん、甘い・・・。ってなにするんだ!!」
先ほどよりも緊張がほぐれたのか、いい表情になられました。少し頬が赤いですが、先ほどの青ざめた顔よりずっといいですわ。
「私のおやつのべっこう飴ですわ。うん、リラックスできたようですわね。参りましょう」
ニッコリと微笑むとブツブツと「こちらの気も」「まったくもー」と小言を言っておられましたが急に微笑んで
「うん、ありがとう。行こう」
そういって私の手を握り廊下を歩き始められました。
そして、ゲストルームに到着すると先ほどまでの緊張はなかったかのように凛々しいお顔になり扉を叩かれます。
「公爵が嫡男、クラウスと申します。ご挨拶に伺いました」
「入れ」
「失礼します」
素晴らしいマナーで入られたクラウス様をとても褒めたい気持ちでいっぱいです!!
これが幼稚園とかのお遊戯会で最後までやりきった子どもへの感動なのねっ!と1人思っておりました。
まさか、私がいない間、マリア様がルーク様に私のことを話しているだなんて思いもよりませんでしたわ。
そして、マリア様の話を聞いてルーク様が私に興味を持たれたなんて知る訳がなかったのです。
クラウス様とルーク様の顔合わせの後、3人で穏やかにお茶会が行われました。
そして、お茶会も終盤の様子だったので最後に前世でいうロシアンティーを勧めてみようと思います。
ジャムはこの公爵家で咲いていた綺麗な薔薇の花で作りました。
カチャッと新しいお茶を置き、その横に生花の薔薇を添えた薔薇のジャムを横に置きます。
「これは?」
ルーク様がマリア様に訊ねられましたが、マリア様もわからないと言った表情をされておられます。
唯一、ロシアンティーを飲んだことのあるのはこの中ではクラウス様だけです。
以前、たまたまクラウス様が落ち込んでおられたのでお出ししたのです。
それはもう喜ばれて、以来いつもジャムを添えたロシアンティーを好まれていました。
「殿下、これはマリア姉様の侍女エルゼの考案した新しい飲み方でございます。このようにジャムを少し口に含みお茶を飲む。するとジャムの甘みとお茶の味が口の中に広がるのです」
クラウス様はそういってジャムを口に含みお茶を飲まれました。
それを手本にマリア様もルーク様も真似をなさいます。
「これは・・・美味しいな。お茶の味を損なうわけでもなく、ジャムの香りがふわりと香りお茶が飲みやすい・・・」
母上も喜びそうだとルーク様はぼそりと言いました。
そして、その様子をみてクラウス様は誇らしそうにこちらを見ます。
まるで、ちゃんと説明できたよ!と褒めて褒めてと言わんばかりに。
それに頷きながら微笑んでいると、
「エルゼ」
「はい、マリア様。こちらに」
マリア様がすっとこちらをみて、私はすぐに薔薇のジャムを瓶に詰めたものを差し出します。
「こちらは公爵家の庭で咲き誇る薔薇の花で作りました、香り豊かなジャムでございます。是非、お土産にお持ち帰りくださいませ」
なお、このジャム。公爵様達にもお出ししてお土産としても大丈夫だろうと許可を得たものです。
流石に勝手にしたら首が飛んでしまいそうですからね。
「ありがとう。これも、君が?」
「はい、ですが、私はあくまで提案のみで作ったのは料理長にございますのでご安心くださいませ」
「そうか、ではありがたくいただこう。ーーーしかし、君は不思議だな。他の侍女はここまで自分の雇い主に愛情は持たない。むしろ・・・いや、なんでもない。忘れてくれ」
あれ?もしかしてさっきのクラウス様とのやりとり見られてしまいましたでしょうか?
むしろ・・・のところで一瞬瞳に影がさしたように見えたけれど・・・
「私は・・・侍女です。ですが、マリア様もクラウス様も愛しています。大切な方だと思っております。そして、マリア様の殿方となられるルーク様も・・・そうなれたらと思っております」
「は、ふふふ。ありがとう。なら、期待してるよ、エルゼ」
初めて、仮面じゃない笑顔を見たような気がします。
こうして、ルーク様の初の訪問は終わったのでした。
全てが終わったあと、ふと思っていたのですが・・・もしかして私、なんかの能力でもあるの?
子どもとはいえこんなに警戒心がなくて大丈夫かしら・・・
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