18 / 29
本編
17
しおりを挟む
「なんなのよ。ルーク様もこっち見なさいよ!そうすれば、運命の相手が私だってわかるのに!!」
ブツブツと、苛立ったように爪を噛み、靴で床を蹴るヒロインらしき人物。
「そうだぁー。そうだよ、相手が来ないなら、私がいけばいいんだわ。ふふふ」
彼女は配られている飲み物を1つ手に持つと、ルーク様とマリア様に向かって歩き出した。
何をする気だろう??
とりあえず、マリア様を守らなちゃ!と私はドリンクを載せたお盆を持って足早にマリア様に近づいた。
ダンスを終え、緊張がほぐれたのかホッとしているのがわかる。少し、照れたように頬を赤く染めるマリア様は本当に天使のよう!!
ルーク様とマリア様はこちらに気づいている様子もなくダンス会場から軽食会場へと歩いている。
その少し前にヒロインは立っていた。
マリア様がヒロインの横を通る。
「あ・・・」
ヒロインは当たってもいないのに、よろめきバタっとこけ、手に持っていたグラスの中身はヒロインの服にかかる。
グラスはパリーンと高い悲鳴をあげて割れてしまった。
「!?大丈夫ですか??」
周りの人はその音を聞き、こちらに注目する。
ぱっと見、ヒロインにマリア様がぶつかってコケたように見えたことだろう。
近くにいた使用人にお盆をお願いし、騒ぎの元へと駆けつけるフリをする。
「マリア様、どうなされました?」
「エルゼ!それが・・・」
私を見て安心したような表情を見せた後、マリア様は口ごもる。
「大丈夫ですか?お召し物が汚れてしまいましたね。どうぞ、こちらへ。代わりのものをご用意させていただきます」
私は口早にヒロインに伝えながら手を差し伸べる。
顔を下にしていたヒロインの口元が歪んでいたのを確かに見た。
ルーク様は、私がヒロインに声をかけているのを見て、別の使用人に割れたグラスを片付けるよう指示を出している。
ヒロインが私の手を取り、立ち上がる。
が、私ではなく、ルーク様を見つめる。
しかし、ルーク様は彼女を見ることなく、どうしようと手が震えるマリア様を慰めていた。
おー、紳士だ。よし、あとで褒めよう。
ヒロインを別室に案内しながら、マリア様を横目で見る。
ルーク様と目があったので、こっそりと手でいいね!とすると、ルーク様は破顔した。
「なんなの、普通私についてくるはずでしょ・・・」
ボソっとヒロインが言うのを無視して新しい衣装を持ってくる。
新作のドレスではないが、彼女からしたら高級なドレスだ。勿論、まだ袖を通していない、新品である。
「ご客人、どうぞ、こちらの衣装に」
「あ・・・ご、ごめんなさい。ありがとう」
気が弱そうに、言いながらも値踏みしたような目をしていたのを私は見逃さなかった。
着替えを手伝い、汚れたドレスを預かる。扉を閉める瞬間に、
「マリアのドレスと同じもの持ってこいよ・・・」
と、呟いているのを聴いた。
え、なにあの子。めちゃくちゃ性格悪くない??
とりあえず、汚れたドレスは洗濯の使用人にお願いしよう。
懇意にしている子に話しかけると、これならすぐ落ちるとのことでお任せする。
部屋に戻ろうと足を進めると、マリア様とルーク様の姿が見えた。
マリア様は私に気づくと声をかけてくださる。
「エルゼ、あの少女は大丈夫でしたか?」
「はい、お洋服にお飲み物がかかっただけのようでしたので、換えの服をお渡しして汚れた服はこちらで洗わせていただいております」
「そう・・・よかった」
「マリアが気にするから、一応挨拶をしようと思ってね。エルゼ、案内を」
「はい、かしこまりました」
こちらですと、案内を行う。
ノックをして、お部屋に入る。
「失礼します」
「あ、あの」
「ご客人のドレスですが、当館の者が責任を持って洗わせていただきます。失礼ですが、お名前をお伺いできますか?」
「は、はい。クリスティーヌと申します。伯爵家のクリスティーヌ」
「かしこまりました。では、綺麗になり次第、伯爵家に送らせていただきますね」
「ええ」
「それで、クリスティーヌ様。マリア様とルーク様が挨拶に参られておりますので、入らせていただいてもよろしいですか?」
「え、ええ!」
ルーク様の名前が出た瞬間、目を輝かせるクリスティーヌ様。
若干眉が歪みそうになるのを抑えながら、ルーク様とマリア様を招きいれる。
「失礼しますわ。私、今回の主催である当館の公爵家が娘のマリアと申します」
「私の婚約者が失礼したね。私はこの国の王太子、ルークだ」
「わ、わたくしのほうこそ、もうしわけありません。伯爵家のクリスティーヌと申します」
がばっと、頭を下げるクリスティーヌ様。
しかし、その顔はニヤついているのを私は見た。
「顔をあげて。もしよければ、仲良くして欲しい」
「まあ、ありがたきお言葉ですわ。では、わたくしのことはクリスと・・・」
「私も、よろしくお願いしますわ」
「は、はい。よろしくお願いします」
ルーク様はクリスティーヌ様に一目惚れはしていないようだ。
が、これからどうなるのだろうか。
普通の友人関係になれるのか・・・
それとも、マリア様は悪役令嬢になってしまうのだろうか・・・
原作の本がゆっくりと開いた気がした。
ブツブツと、苛立ったように爪を噛み、靴で床を蹴るヒロインらしき人物。
「そうだぁー。そうだよ、相手が来ないなら、私がいけばいいんだわ。ふふふ」
彼女は配られている飲み物を1つ手に持つと、ルーク様とマリア様に向かって歩き出した。
何をする気だろう??
とりあえず、マリア様を守らなちゃ!と私はドリンクを載せたお盆を持って足早にマリア様に近づいた。
ダンスを終え、緊張がほぐれたのかホッとしているのがわかる。少し、照れたように頬を赤く染めるマリア様は本当に天使のよう!!
ルーク様とマリア様はこちらに気づいている様子もなくダンス会場から軽食会場へと歩いている。
その少し前にヒロインは立っていた。
マリア様がヒロインの横を通る。
「あ・・・」
ヒロインは当たってもいないのに、よろめきバタっとこけ、手に持っていたグラスの中身はヒロインの服にかかる。
グラスはパリーンと高い悲鳴をあげて割れてしまった。
「!?大丈夫ですか??」
周りの人はその音を聞き、こちらに注目する。
ぱっと見、ヒロインにマリア様がぶつかってコケたように見えたことだろう。
近くにいた使用人にお盆をお願いし、騒ぎの元へと駆けつけるフリをする。
「マリア様、どうなされました?」
「エルゼ!それが・・・」
私を見て安心したような表情を見せた後、マリア様は口ごもる。
「大丈夫ですか?お召し物が汚れてしまいましたね。どうぞ、こちらへ。代わりのものをご用意させていただきます」
私は口早にヒロインに伝えながら手を差し伸べる。
顔を下にしていたヒロインの口元が歪んでいたのを確かに見た。
ルーク様は、私がヒロインに声をかけているのを見て、別の使用人に割れたグラスを片付けるよう指示を出している。
ヒロインが私の手を取り、立ち上がる。
が、私ではなく、ルーク様を見つめる。
しかし、ルーク様は彼女を見ることなく、どうしようと手が震えるマリア様を慰めていた。
おー、紳士だ。よし、あとで褒めよう。
ヒロインを別室に案内しながら、マリア様を横目で見る。
ルーク様と目があったので、こっそりと手でいいね!とすると、ルーク様は破顔した。
「なんなの、普通私についてくるはずでしょ・・・」
ボソっとヒロインが言うのを無視して新しい衣装を持ってくる。
新作のドレスではないが、彼女からしたら高級なドレスだ。勿論、まだ袖を通していない、新品である。
「ご客人、どうぞ、こちらの衣装に」
「あ・・・ご、ごめんなさい。ありがとう」
気が弱そうに、言いながらも値踏みしたような目をしていたのを私は見逃さなかった。
着替えを手伝い、汚れたドレスを預かる。扉を閉める瞬間に、
「マリアのドレスと同じもの持ってこいよ・・・」
と、呟いているのを聴いた。
え、なにあの子。めちゃくちゃ性格悪くない??
とりあえず、汚れたドレスは洗濯の使用人にお願いしよう。
懇意にしている子に話しかけると、これならすぐ落ちるとのことでお任せする。
部屋に戻ろうと足を進めると、マリア様とルーク様の姿が見えた。
マリア様は私に気づくと声をかけてくださる。
「エルゼ、あの少女は大丈夫でしたか?」
「はい、お洋服にお飲み物がかかっただけのようでしたので、換えの服をお渡しして汚れた服はこちらで洗わせていただいております」
「そう・・・よかった」
「マリアが気にするから、一応挨拶をしようと思ってね。エルゼ、案内を」
「はい、かしこまりました」
こちらですと、案内を行う。
ノックをして、お部屋に入る。
「失礼します」
「あ、あの」
「ご客人のドレスですが、当館の者が責任を持って洗わせていただきます。失礼ですが、お名前をお伺いできますか?」
「は、はい。クリスティーヌと申します。伯爵家のクリスティーヌ」
「かしこまりました。では、綺麗になり次第、伯爵家に送らせていただきますね」
「ええ」
「それで、クリスティーヌ様。マリア様とルーク様が挨拶に参られておりますので、入らせていただいてもよろしいですか?」
「え、ええ!」
ルーク様の名前が出た瞬間、目を輝かせるクリスティーヌ様。
若干眉が歪みそうになるのを抑えながら、ルーク様とマリア様を招きいれる。
「失礼しますわ。私、今回の主催である当館の公爵家が娘のマリアと申します」
「私の婚約者が失礼したね。私はこの国の王太子、ルークだ」
「わ、わたくしのほうこそ、もうしわけありません。伯爵家のクリスティーヌと申します」
がばっと、頭を下げるクリスティーヌ様。
しかし、その顔はニヤついているのを私は見た。
「顔をあげて。もしよければ、仲良くして欲しい」
「まあ、ありがたきお言葉ですわ。では、わたくしのことはクリスと・・・」
「私も、よろしくお願いしますわ」
「は、はい。よろしくお願いします」
ルーク様はクリスティーヌ様に一目惚れはしていないようだ。
が、これからどうなるのだろうか。
普通の友人関係になれるのか・・・
それとも、マリア様は悪役令嬢になってしまうのだろうか・・・
原作の本がゆっくりと開いた気がした。
3
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」
この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。
けれど、今日も受け入れてもらえることはない。
私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。
本当なら私が幸せにしたかった。
けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。
既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。
アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。
その時のためにも、私と離縁する必要がある。
アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!
推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。
全4話+番外編が1話となっております。
※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。
パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、
クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。
「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。
完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、
“何も持たずに”去ったその先にあったものとは。
これは誰かのために生きることをやめ、
「私自身の幸せ」を選びなおした、
ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
卒業パーティーのその後は
あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。 だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。
そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。
悪役令嬢がヒロインからのハラスメントにビンタをぶちかますまで。
倉桐ぱきぽ
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私は、ざまぁ回避のため、まじめに生きていた。
でも、ヒロイン(転生者)がひどい!
彼女の嘘を信じた推しから嫌われるし。無実の罪を着せられるし。そのうえ「ちゃんと悪役やりなさい」⁉
シナリオ通りに進めたいヒロインからのハラスメントは、もう、うんざり!
私は私の望むままに生きます!!
本編+番外編3作で、40000文字くらいです。
⚠途中、視点が変わります。サブタイトルをご覧下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる