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本編
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「なんなのよ。ルーク様もこっち見なさいよ!そうすれば、運命の相手が私だってわかるのに!!」
ブツブツと、苛立ったように爪を噛み、靴で床を蹴るヒロインらしき人物。
「そうだぁー。そうだよ、相手が来ないなら、私がいけばいいんだわ。ふふふ」
彼女は配られている飲み物を1つ手に持つと、ルーク様とマリア様に向かって歩き出した。
何をする気だろう??
とりあえず、マリア様を守らなちゃ!と私はドリンクを載せたお盆を持って足早にマリア様に近づいた。
ダンスを終え、緊張がほぐれたのかホッとしているのがわかる。少し、照れたように頬を赤く染めるマリア様は本当に天使のよう!!
ルーク様とマリア様はこちらに気づいている様子もなくダンス会場から軽食会場へと歩いている。
その少し前にヒロインは立っていた。
マリア様がヒロインの横を通る。
「あ・・・」
ヒロインは当たってもいないのに、よろめきバタっとこけ、手に持っていたグラスの中身はヒロインの服にかかる。
グラスはパリーンと高い悲鳴をあげて割れてしまった。
「!?大丈夫ですか??」
周りの人はその音を聞き、こちらに注目する。
ぱっと見、ヒロインにマリア様がぶつかってコケたように見えたことだろう。
近くにいた使用人にお盆をお願いし、騒ぎの元へと駆けつけるフリをする。
「マリア様、どうなされました?」
「エルゼ!それが・・・」
私を見て安心したような表情を見せた後、マリア様は口ごもる。
「大丈夫ですか?お召し物が汚れてしまいましたね。どうぞ、こちらへ。代わりのものをご用意させていただきます」
私は口早にヒロインに伝えながら手を差し伸べる。
顔を下にしていたヒロインの口元が歪んでいたのを確かに見た。
ルーク様は、私がヒロインに声をかけているのを見て、別の使用人に割れたグラスを片付けるよう指示を出している。
ヒロインが私の手を取り、立ち上がる。
が、私ではなく、ルーク様を見つめる。
しかし、ルーク様は彼女を見ることなく、どうしようと手が震えるマリア様を慰めていた。
おー、紳士だ。よし、あとで褒めよう。
ヒロインを別室に案内しながら、マリア様を横目で見る。
ルーク様と目があったので、こっそりと手でいいね!とすると、ルーク様は破顔した。
「なんなの、普通私についてくるはずでしょ・・・」
ボソっとヒロインが言うのを無視して新しい衣装を持ってくる。
新作のドレスではないが、彼女からしたら高級なドレスだ。勿論、まだ袖を通していない、新品である。
「ご客人、どうぞ、こちらの衣装に」
「あ・・・ご、ごめんなさい。ありがとう」
気が弱そうに、言いながらも値踏みしたような目をしていたのを私は見逃さなかった。
着替えを手伝い、汚れたドレスを預かる。扉を閉める瞬間に、
「マリアのドレスと同じもの持ってこいよ・・・」
と、呟いているのを聴いた。
え、なにあの子。めちゃくちゃ性格悪くない??
とりあえず、汚れたドレスは洗濯の使用人にお願いしよう。
懇意にしている子に話しかけると、これならすぐ落ちるとのことでお任せする。
部屋に戻ろうと足を進めると、マリア様とルーク様の姿が見えた。
マリア様は私に気づくと声をかけてくださる。
「エルゼ、あの少女は大丈夫でしたか?」
「はい、お洋服にお飲み物がかかっただけのようでしたので、換えの服をお渡しして汚れた服はこちらで洗わせていただいております」
「そう・・・よかった」
「マリアが気にするから、一応挨拶をしようと思ってね。エルゼ、案内を」
「はい、かしこまりました」
こちらですと、案内を行う。
ノックをして、お部屋に入る。
「失礼します」
「あ、あの」
「ご客人のドレスですが、当館の者が責任を持って洗わせていただきます。失礼ですが、お名前をお伺いできますか?」
「は、はい。クリスティーヌと申します。伯爵家のクリスティーヌ」
「かしこまりました。では、綺麗になり次第、伯爵家に送らせていただきますね」
「ええ」
「それで、クリスティーヌ様。マリア様とルーク様が挨拶に参られておりますので、入らせていただいてもよろしいですか?」
「え、ええ!」
ルーク様の名前が出た瞬間、目を輝かせるクリスティーヌ様。
若干眉が歪みそうになるのを抑えながら、ルーク様とマリア様を招きいれる。
「失礼しますわ。私、今回の主催である当館の公爵家が娘のマリアと申します」
「私の婚約者が失礼したね。私はこの国の王太子、ルークだ」
「わ、わたくしのほうこそ、もうしわけありません。伯爵家のクリスティーヌと申します」
がばっと、頭を下げるクリスティーヌ様。
しかし、その顔はニヤついているのを私は見た。
「顔をあげて。もしよければ、仲良くして欲しい」
「まあ、ありがたきお言葉ですわ。では、わたくしのことはクリスと・・・」
「私も、よろしくお願いしますわ」
「は、はい。よろしくお願いします」
ルーク様はクリスティーヌ様に一目惚れはしていないようだ。
が、これからどうなるのだろうか。
普通の友人関係になれるのか・・・
それとも、マリア様は悪役令嬢になってしまうのだろうか・・・
原作の本がゆっくりと開いた気がした。
ブツブツと、苛立ったように爪を噛み、靴で床を蹴るヒロインらしき人物。
「そうだぁー。そうだよ、相手が来ないなら、私がいけばいいんだわ。ふふふ」
彼女は配られている飲み物を1つ手に持つと、ルーク様とマリア様に向かって歩き出した。
何をする気だろう??
とりあえず、マリア様を守らなちゃ!と私はドリンクを載せたお盆を持って足早にマリア様に近づいた。
ダンスを終え、緊張がほぐれたのかホッとしているのがわかる。少し、照れたように頬を赤く染めるマリア様は本当に天使のよう!!
ルーク様とマリア様はこちらに気づいている様子もなくダンス会場から軽食会場へと歩いている。
その少し前にヒロインは立っていた。
マリア様がヒロインの横を通る。
「あ・・・」
ヒロインは当たってもいないのに、よろめきバタっとこけ、手に持っていたグラスの中身はヒロインの服にかかる。
グラスはパリーンと高い悲鳴をあげて割れてしまった。
「!?大丈夫ですか??」
周りの人はその音を聞き、こちらに注目する。
ぱっと見、ヒロインにマリア様がぶつかってコケたように見えたことだろう。
近くにいた使用人にお盆をお願いし、騒ぎの元へと駆けつけるフリをする。
「マリア様、どうなされました?」
「エルゼ!それが・・・」
私を見て安心したような表情を見せた後、マリア様は口ごもる。
「大丈夫ですか?お召し物が汚れてしまいましたね。どうぞ、こちらへ。代わりのものをご用意させていただきます」
私は口早にヒロインに伝えながら手を差し伸べる。
顔を下にしていたヒロインの口元が歪んでいたのを確かに見た。
ルーク様は、私がヒロインに声をかけているのを見て、別の使用人に割れたグラスを片付けるよう指示を出している。
ヒロインが私の手を取り、立ち上がる。
が、私ではなく、ルーク様を見つめる。
しかし、ルーク様は彼女を見ることなく、どうしようと手が震えるマリア様を慰めていた。
おー、紳士だ。よし、あとで褒めよう。
ヒロインを別室に案内しながら、マリア様を横目で見る。
ルーク様と目があったので、こっそりと手でいいね!とすると、ルーク様は破顔した。
「なんなの、普通私についてくるはずでしょ・・・」
ボソっとヒロインが言うのを無視して新しい衣装を持ってくる。
新作のドレスではないが、彼女からしたら高級なドレスだ。勿論、まだ袖を通していない、新品である。
「ご客人、どうぞ、こちらの衣装に」
「あ・・・ご、ごめんなさい。ありがとう」
気が弱そうに、言いながらも値踏みしたような目をしていたのを私は見逃さなかった。
着替えを手伝い、汚れたドレスを預かる。扉を閉める瞬間に、
「マリアのドレスと同じもの持ってこいよ・・・」
と、呟いているのを聴いた。
え、なにあの子。めちゃくちゃ性格悪くない??
とりあえず、汚れたドレスは洗濯の使用人にお願いしよう。
懇意にしている子に話しかけると、これならすぐ落ちるとのことでお任せする。
部屋に戻ろうと足を進めると、マリア様とルーク様の姿が見えた。
マリア様は私に気づくと声をかけてくださる。
「エルゼ、あの少女は大丈夫でしたか?」
「はい、お洋服にお飲み物がかかっただけのようでしたので、換えの服をお渡しして汚れた服はこちらで洗わせていただいております」
「そう・・・よかった」
「マリアが気にするから、一応挨拶をしようと思ってね。エルゼ、案内を」
「はい、かしこまりました」
こちらですと、案内を行う。
ノックをして、お部屋に入る。
「失礼します」
「あ、あの」
「ご客人のドレスですが、当館の者が責任を持って洗わせていただきます。失礼ですが、お名前をお伺いできますか?」
「は、はい。クリスティーヌと申します。伯爵家のクリスティーヌ」
「かしこまりました。では、綺麗になり次第、伯爵家に送らせていただきますね」
「ええ」
「それで、クリスティーヌ様。マリア様とルーク様が挨拶に参られておりますので、入らせていただいてもよろしいですか?」
「え、ええ!」
ルーク様の名前が出た瞬間、目を輝かせるクリスティーヌ様。
若干眉が歪みそうになるのを抑えながら、ルーク様とマリア様を招きいれる。
「失礼しますわ。私、今回の主催である当館の公爵家が娘のマリアと申します」
「私の婚約者が失礼したね。私はこの国の王太子、ルークだ」
「わ、わたくしのほうこそ、もうしわけありません。伯爵家のクリスティーヌと申します」
がばっと、頭を下げるクリスティーヌ様。
しかし、その顔はニヤついているのを私は見た。
「顔をあげて。もしよければ、仲良くして欲しい」
「まあ、ありがたきお言葉ですわ。では、わたくしのことはクリスと・・・」
「私も、よろしくお願いしますわ」
「は、はい。よろしくお願いします」
ルーク様はクリスティーヌ様に一目惚れはしていないようだ。
が、これからどうなるのだろうか。
普通の友人関係になれるのか・・・
それとも、マリア様は悪役令嬢になってしまうのだろうか・・・
原作の本がゆっくりと開いた気がした。
応援ありがとうございます!
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