【完結】悪役令嬢になんてさせません。

夜船 紡

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本編

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あれからというもの、マリア様とクリスティーヌ様はご友人となられました。
本日も、クリスティーヌ様は当屋敷に来られマリア様と談笑されておられます。
ここ数日は毎日来られてますが、お二人共、とても楽しそうです。
マリア様がニコニコとしていると、本当に私まで嬉しくなってしまいます。

クリスティーヌ様は前世の記憶をお持ちだと思うのですが・・・私が作ったお菓子を食べても何も言ってこられません。
ただ、時折気にしているような目線を送ってこられますし、なによりも・・・

「マリア様は、本当に『可憐に咲き誇る華』のようですわね」
「まあ、クリスったら突然何をいうの」

と、どう考えても、小説のタイトルをもじったような事をおっしゃられたり、その際、私の言動をじっと見ておられます。

問題がもうないのならば、明らかにしてもいい気もします。
と、いうか問題ないと判断していい気もします。
なぜなら、クリスティーヌ様はルーク様よりマリア様がお好きなようですし。
というのも、先日のことですが、たまたまクリスティーヌ様がマリア様と遊んでいるときにルーク様が来られるということがあったのです。

普通はあり得ないことです。
少なくても、大概の貴族は先に連絡して了承してくることが多いですから。
が、最近、ルーク様があまりにもマリア様に会いにこられるのでほぼ顔パス状態な上に通達もあまりしなくなっていたのです。
まあ、常に王家の方が来られるということで、我々使用人も普段から念に念を込めて綺麗にしていますし、お食事だって色々と工夫しています。
それを見た公爵様やお方様も私達のお給料をあげてくださりました。
今、公爵家は王家に次いで働きたい場所になっているそうです。
お陰で、入る方々も優れた方ばかり。
子爵家以上の下級貴族の使用人もおられますが、みなさん懸命に働かれています。

まあ、そんな理由でルーク様とクリスティーヌ様はパーティ以来、2度目の再開なのですが、クリスティーヌ様はルーク様に少し挨拶するとすぐにマリア様とまた話始めてしまいました。
これには、ルーク様も唖然とされ、マリア様が少し席を外した際、

「随分仲が良いようだね。嫉妬してしまいそうだよ。」
意訳:俺の婚約者だ。遠慮しろ。

「まあ、そんなに親しくみえますか?嬉しいですわ。」
意訳: 羨ましいでしょう

「ここからの時間は是非、私に譲ってくれないかな?愛しい婚約者と語らいたいんだ」
意訳:邪魔者はとっとと帰れ

「申し訳ありません。マリア様が楽しそうにお話ししてくださるので・・・つい」
意訳:嫉妬ですかー?

裏の会話が見え隠れしているのですけど・・・静かに給仕をするのが我々侍女です。

「お二人共、楽しそうですわね」

ふふふ、はははと薄黒い会話をなさっておられたお二人でしたが、それを見たマリア様は自分と話している時より楽しそうだと、しょぼんと眉を下げられて悲しそうです。
それを見たお二人は、

「いや、そんなことないぞ!」
「そうですわよ!殿下には、婚約者であるマリア様と二人きりにして欲しいと・・・わ、わたくしは邪魔だと言われてましたのよ・・・」

うわぁ。クリスティーヌ様、マリア様にバラした。

「クリスティーヌ嬢、なにを・・・!」
「ルーク様・・・クリスはわたくしのお友だちですし、約束をしてきてくれたのですわ。そのように追い出すようなことはおっしゃらないでくださいませ!」
「す、すまなかった」
「でも・・・私・・・少し嬉しいですわ。ルーク様が私とそんなに一緒にと思っていてくださるなんて・・・」

桃色のほっぺが赤く染まりながらマリア様は嬉しそうに微笑まれる。
やばい、天使だ。天使がいる。
そう思っていたら、ルーク様も、クリスティーヌ様も、惚けておられました。

「マリア・・・」
「ルーク様・・・」

最初にはっと気を取り直されたのはルーク様です。

「・・・これは私、邪魔者よね。ねぇ、こっそり抜け出すからついてきてくれない?」
「は、はい」

甘々な空気に耐えきれなくなったのでしょう、クリスティーヌ様がそう言われました。
私は、他の侍女に後を頼みクリスティーヌ様の後についていきます。

廊下に出てしばらく経ってからクリスティーヌ様が決意したように言われました。


「あなた、異世界転生って信じるかしら?」
「は?」
「いつもここで出されるおやつや料理ってここでは異世界。前世のものでしょう?ねぇ、エルゼさん」
「あ、あの・・・」
「気づいてたわよ。料理も、おやつも、食べられていたものだったもの」
「は、はあ」
「ねぇ、貴方の前世でのお名前は?」


今、クリスティーヌ様はなんと言った?
前世での名前?
そんなの、もう覚えてない。

---うそつき

エルゼと呼ばれることが多くて忘れてしまった。

---違うでしょう?

私は、エルゼだ。

---そうだね。でも、その前は?

その前?
私は、わたしは、ワタシハ・・・


「わ、ワタシハ・・・」

私の意識はそこで遠のいた。
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