【完結】覆面セクシーダンサーは昼職の上司に盲愛される

鳥見 ねこ

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1章 神官長がきた

2.覆面ダンサーでよかった

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 何を隠そう、これでも俺は昼間は真っ当な職についている。
 王国軍所属、王都騎士団の騎士だ。揃いの制服に身を包み、帯剣して王国を守っている。
 部隊が十隊にわかれていて、宮殿や城下町、町と外を隔てる通行門などに配備され、戦時中以外は王都の治安維持につとめている。

 俺はもともと、王宮を警備するもっとも名誉ある第一隊・通称王宮騎士隊に所属していた。
 エリートと言っていい。
 それが、股間の息子がやらかしてしまったせいで、第三隊・通称聖堂騎士隊に左遷され、今は大聖堂の警備をしている。

 だから、部隊の上司とは別に、大聖堂という枠の上司がいる。
 大聖堂のほぼトップに位置するのが、大聖堂の聖職者を束ねる神官長だ。神官長の上には半分隠居している大司教のじじいどもと、法皇を兼務している国王しかいない。

 こんなことになったのは、可愛い息子が王宮の可愛い侍女ちゃんに懸想したから……。
 いや、いつまでも息子のせいにしてばかりもいられまい。
 正直にいおう。俺は女が好きだ! 綺麗な! すました! 禁欲的なフリして脱ぐとエロい女が好きだ! 

 そして王宮での破廉恥な現場を見つかった……。
 ただそれだけのことだが、そんなことが一度や二度、1人や2人ではないとバレた……。
 1件バレたらめちゃんこ密告されたんだわ。

 当時の上司から、「去勢してこい!」と怒鳴られて王宮を追い出され、同じ王都内にある大聖堂に叩き込まれたというわけだ。
 その大聖堂の勤務は女人禁制。男ばかりの職場だ。

 結果、昼も男ばかり、夜も男ばかりの職場勤務となった。
 マジ地獄。
 おかしいな~。俺はゲイじゃないんだけど。運命が狂っている。

「そうか、神官! 性欲なんて何もなさそうな涼しい顔で禁欲の誓いを立てる。だけど、実際のところは男しかいない世界だ。男同士の行為はお盛んで、コッチに目覚める人も多いんじゃないか?」
「なるほど? リックの考察は鋭いな」
「つまり、ただの客だ。頑張れ」
「おいっ、冷たすぎないか?! おまえの上司が来たら、俺はもっと助けてやると思うよ? 仮病に協力するとかっ!」
「ランスがショーに出ないと俺の負担が増えるからヤダね。ほらいつもの覆面すればバレないバレない。そうだ良いものをあげよう! このノリは顔の皮が外れそうなほど強力だぞ。覆面に塗ってやるよ」
「やめろ! 後腐れありありの物理で解決すんな! そこは覆面が外れなくなる魔法の出番だろ!」
「魔法は疲れる。使わせるなら金払え」

 俺は覆面セクシーダンサーとして働いている。
 イケメンすぎて目立つし、顔バレして昼職に影響が出ると困るからな。顔の上半分を隠すような布製の覆面をしている。

 同僚のリックはなんと、昼職でも同僚だ。部隊は違うが同じ王都騎士団の騎士だ。
 こいつの特技は類い稀なるモブ顔。
 舞台で顔を隠さなくてもモブすぎて騎士とセクシーダンサーが同一人物とは気づかれない。

 モブ顔を羨ましく思う日がくるとはな。
 リックは平民には珍しく魔法の適正があるから魔法が使える。さすがにモブらしく器用貧乏なささいなものばかりだ。

 汚れを綺麗にするクリーン魔法とか、少し明るくなるライトの魔法とか、風がソヨソヨ吹く魔法とか。
 だが、種類が多いから使い方次第。便利なこともある。

 そんなリックの器用貧乏魔法をかけてもらい、外れる気配のなくなった覆面に少しホッとした。
 支払いは出世払いでよろしく。

「ランス! いつまで裸でいるんだ? 早く着替えろ! もうすぐ出番だぞ!」

 店長のジェイが楽屋に顔を出すなり怒鳴った。モジャモジャ頭に小太りの男で、乱暴な口調のわりに面倒見は良い。
 この店長はいつも俺を反面教師に仕立てようとする。

 俺に怒鳴っているけど、実際のところはモタモタ支度しているキャストの尻を叩いているわけだ。
 ジェイの声に押されるように、バタバタとキャストが舞台袖へ移動していった。
 いつも叱られ役ではあるが、本当は気に入られているのも知っている。優遇されていることも多い。
 持ちつ持たれつだ、文句は言うまい。

「へいへい」

 もたれかかっていたリックから離れて、舞台で脱ぐ前提のシャツとジャケットと短パンを履くと、俺も舞台袖へと向かった。
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