【完結】覆面セクシーダンサーは昼職の上司に盲愛される

鳥見 ねこ

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1章 神官長がきた

5.飲んで〜飲んで飲んで飲んで〜

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「喉が乾いてたんだよな~。俺ももっと飲んでいい? ショーってそんなに動いてないようにみえるだろ? でも何本もライトが当たるから暑くてさ~」

 一気飲みに目を丸くしたが、追加注文については頷くのを見て、席に呼んだボーイに2人分の追加の酒を頼む。
 隣でウォーレンの姿をみると、店長が金を持っていそうな客と評した意味がわかる。
 服は質素に見せようとしているが、見る目があればわかる質の良い生地と良い仕立てだ。

 手を見ても、すらっと長い指をしていて傷もない。手を酷使する下層の人間では到底なれない綺麗な手だ。
 なんてことをいうと探偵のようだけど、それよりなにより目立つのがある。

 立ち居振る舞いだ。洗練され過ぎだろ。
 平民の中に入ると浮いてしまうぞ。

 変装しているつもりなのかもしれないけど、詰めが甘すぎるというか、抜けているというか。
 普通に見る目があれば、それなりの身分ってことには気づく。

 そしてこの男の実態を知っている俺は正解も知っているわけだ。神官長が貧乏ってことはないだろう。
 神官は清貧の世界、とかいっても大聖堂のトップに近い身分だ。それなりの収入はある。
 それに性格的に見ても、仕事に打ち込むうちに、使う間もなく金が溜まってしまっているタイプだ。
 店長の見立ては当たりだな。

 追加の酒も飲み干して、さらに追加して飲みまくった。

「めっちゃうまいわ~染み渡る! ウォーレンはショーパブ初めて? それじゃあさ――」

 酒を飲む間にも、会話の持ちネタでショーパブ豆知識と、ショーパブあるあるを披露する。
 次第にウォーレンの緊張した顔がほぐれていくように見えた。

 今は緊張しているから気づかれていないだろうが、緊張がほぐれてじっくり観察されたらバレるかもしれない。
 そのスリルに首のうしろがゾワゾワする。
 いつその目が俺を見て冷たくなるか分からない。
 冷たい口調で「おまえは聖堂騎士のクラレンス・ミラーじゃないか」とか言い出すか分からない。

 緊張なのか興奮なのか恐怖なのか分からないもので、口はいつもよりもよく回るし、手は無駄にグラスを回してしまう。
 それでも、口元の笑顔は絶対維持だ。
 顔の上半分が覆面で隠れているおかげで、一番緊張を悟られやすい目を見られないのが不幸中の幸いか。

 その内心の混乱を酒で紛らわせるうちに、だんだん良い感じに興奮してきた。
 っていうか、酒を入れすぎた。

「んで? ウォーレンの好みの男は見つかったか? 男で楽しみたくて店にきたんだろ?」

 いや、わかってる。どうやら、男目当てのショーパブ来店じゃなさそうだってことは。
 男を探しているなら、緊張していてもせっかくのショーパブなんだから、舞台にいるダンサーくらい見るだろう。

 客はダンサーに気づかれていないと思って、普段は人と目を合わせられないタイプの人間でも、じっくり舐めるようにダンサーの痴態を見てくる。
 それがここのショーに興味のある一般的な反応だ。

 それが全くないってのは別の目的があるんだろう。
 そうはいっても、自分からショーパブにきておいて、目の前で接客してる俺に対してそんなことは言えないわな。
 案の定、しどろもどろになりだした。

「このみ……いや、そうだな……ええと……」
「俺とか?」

 ん? あ~~! 酒が回りすぎてる!!
 本当は俺を見ないで欲しいのに~、ついついノリで誘ってしまう……。「良い男いるだろ? おまえの目の前に」系の酒場ジョークなんだけど。

「好みかどうかは……人は内面で判断したく……お互いよく知り合った上でわかることだから…………うむ、すまない」

 うわー! なんか生娘みたいな返事がきた! それも即ふられた! 助かったけどなんかツラい!?

「おおい、マジメか! 内面を知るまでには時間がかかるだろ? 見た目の好みは? パッと見てイケてるな~とか感じたことねーの? 男でも女でもいいからさ」
「イケてる……。男前だと思うことはあるが」
「ほうほう、どんな」
「やはり体を鍛えている男は好ましいな」
「ふむふむ、マッチョと」
「髪は活動的に短い方がいい」
「短髪ね」
「誰にでもさわやかな笑顔で接するなら見ていて気持ちがいい」
「スマイルゼロ円と」
「…………まぁそれくらいだな」
「ただ今、俺の頭の中の計算機が弾きだしました当店おすすめの男性は……――」

 そこで言葉を切ると、ウォーレンと目が合った。
 ピーコックグリーンの目からはいつもの鋭さが消え、さっきよりも楽しそうな興味深げな表情に変わっている。
 切れ味のいいクールな表情も整った顔には似合うが、少し柔らかい表情になっただけで、グッと親しみやすくなる。

 そして、これだけ緊張がほぐれていても、俺の正体には気づかないのか。
 案外、聖堂騎士なんてみんな同じ置物のようにしか見てないのかもしれない。それか、よほどこの覆面が優秀なのか。

 俺の体のどこかに残っていた緊張の糸が切れた。
 思わず満面の笑みが漏れる。

「おすすめはやっぱり俺だな。マッチョダンサーで短髪のスマイルゼロ円でお渡しできる男は1人しかいない!」

 ウォーレンの顔が少しムグっと堪えるように歪んでうつむいた。
 短髪好みの神官長様だけど、職業柄なのか肩甲骨くらいの長髪を維持している。
 その金髪で、うつむくと顔が隠れて見えなくなる。それでも、どうやら揺れる肩から笑っているらしいのがわかった。

 2度の自分推しがツボった様子に、接客任務完了な気持ちになる。
 彫像みたいだった神官長がやっと笑ったか。
 いい汗かいたな。冷や汗も混じってるけど。

「んん……たしかに、引き締まったいい体だ。アイマスクをしていても、笑顔は明るくて好感がもてる。マスクをしていることが残念なくらいだ」
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