【完結】覆面セクシーダンサーは昼職の上司に盲愛される

鳥見 ねこ

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2章 VIPルームへご招待

7.夢じゃなかった…

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 昨夜のスリルは一夜明けるともう遠い記憶になった。

 さすがに脳汁ドバドバすぎて夜はなかなか寝つけなかった。
 朝起きるとすっかり落ち着いた脳みそは、普段の神官長とショーパブにくる神官長の姿の乖離に混乱して、夢だったと思わせようとしてきたくらいだ。

 夢じゃなかった証拠に、洗面所の鏡に高額紙幣が貼り付けられていたけど。神官長のおひねりという置き土産だ。

「やば……まじか……夢じゃなかった」

 昨夜、神官長を追い出した俺が楽屋に戻ると、店長のジェイが来てうろんな目で睨んできた。

「おまえ……まさか、またなにか問題でも起こしたんじゃないだろうな?」
「黒服にきけよ。ちゃ~んと、酒飲んで楽しくお話しして帰ってもらったよ」
「それにしては早かったじゃないか? 客が逃げるように慌てて帰るところも見えたぞ?」
「急ぎの用事でも思い出したんだろォ?」

 ベッと舌をだしたら、ジェイは大きくため息をついて肩を落とした。

「ありゃあ……デカい財布だったぞ。もったいない。拗らせそうな雰囲気もなかったし、綺麗に遊んでくれそうな……」
「店長、夢見てんなよ? こんな店にあんな上等な客は似合わねぇんだよ」

 ポンポンと背中を叩いてやると、クソデカため息が出た。
 店長だけあって苦労してんね。おつかれさん。



 昨夜なかなか寝つけなかったおかげで、少し睡眠不足のまま職場の大聖堂に向かうことになった。
 若手騎士用の寮もあるけど、俺は門限の厳しい寮だと副業がバレるから外に部屋を借りている。

 王宮でのヤンチャに加えて、外に部屋を借りているせいでヤリチンの噂が増している気がする。
 部屋に女を連れ込んで遊びまくっているんだと。

 うるせぇ、そんな時間ないほど男だらけの大聖堂を警備して、男の前でダンスってるわ!
 マジでもう女と遊ぶ隙がなくなった……退勤後はショーパブだから、王宮内でこっそり遊んでいたのに……。

 部屋はショーパブのある繁華街に近いところだから、うるさいし治安も悪い。路地裏には酔っぱらいや浮浪者も転がっている。
 ただなんと言っても安い。安いは正義。
 大聖堂まで少し距離はあるが、歩けないこともない。

 前に所属していた王城は町の中央。大聖堂は町の北の端にある。
 夜の店がある花町は東、貴族の館は王城を挟んで西にある。
 南は王都を出入りするための一番大きな通用門があるため、宿や商店が多い。

 うるさい繁華街から大聖堂に向かうと周りが静かになっていくのは、土地の値段も関係しているだろう。
 この辺りは平民の中でも金持ちが多く住む。
 そんな静かな場所で、ひときわ荘厳な空気を放つのが大聖堂だ。

 白大理石で組み上げられた背の高い建物は、尖った尖塔が空に伸びる荘厳で繊細な美しさ。
 緻密な彫刻が内外に施され、大きく天井近くまで伸びる窓には美しいステンドグラスがはまり、歴史を語る。

 裏手に居住用の寄宿舎がコの字に繋がるように建てられ、中庭を囲んでいる。
 さらに別棟として裏手に孤児院が建設され、最近さらに増築された。
 孤児院のさらに向こうには神域を含む森がある。

 この大聖堂を見ると、神官長が思い浮かぶ。
 どちらも美しく、静かな厳しさをはらみ、繊細だ。
 ただ、昨日の神官長の笑顔を思い出すと、ちょっと考え違いをしていたかもしれない。

「神官長のほうが大聖堂の雰囲気に合わせている、だけなのか?」

 素のあの人は、もっと柔らかい人間味があるような気がする。
 って、まてまて。そんな想像をするほど肩入れするんじゃない。一夜の客と男娼の関係だろ。

 夜勤の騎士に挨拶の手をあげ、寄宿舎内にある騎士隊の待機室へ向かった。
 待機室で制服の上着を羽織り、騎士団の紋章が入った制帽をかぶる。
 さぁ、神官長の様子でものぞいてくるか!
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