【完結】覆面セクシーダンサーは昼職の上司に盲愛される

鳥見 ねこ

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3章 ちゃんとお仕事します

15.神官長に魅せられた蛾

 神官長は本当に連日、夜の店にくる。その相手をさせられる俺。
 相手といっても、たまに俺が悪戯するくらいで、たいした接触はない。
 俺の金はチャリンチャリンと貯まるけど、神官長のメリットなさすぎん?

 人格的にかけ離れすぎていて、何でそこまでするのか想像もできんわ。
 そんな神官長と、結果、昼も夜も一緒にいるもんだから、1番長く一緒にいるのは俺じゃないか?
 いや、言いすぎた。昼は一緒の職場ってだけで全然近くない。

 実際、今も神官長は大聖堂のホールで聖典を朗読中。俺は遠く離れた大聖堂の大扉横で警備中。

 遠く離れているわけだけど、俺は目がいいからよく見える。今も警備しながらずっと視姦してる。
 サラサラの金髪にステンドグラスの光が落ちて神々しいな~とか、書物をめくる手つきがエロ~とか、白い神官服が禁欲的~とか。

 まつ毛が長くて、影が落ちてみえるのは……さすがに記憶で補完されてるか。
 その下には神官長の緑の目が――不意打ちでバチッと目があった気がした。

 いや、朗読が終わっただけらしい。
 顔を上げた神官長が読んでいた聖典を閉じて神官長付きの副官に渡していた。

 礼拝で心清らかになる……ってのよりも、うっとりしてしまうのはなんだろうな? なんなら欲情してしまいそう。
 これ、俺だけじゃないと思う。
 大聖堂に入っていく人々を観察していたところ、その浮き足だった雰囲気から、神官長の朗読会だからこそ来たってやつも多そうだ。もちろん、熱心な信者もいるんだろうけど。

 本日は貴族以外の市民の入場が許可された礼拝の日で、来場者多数につきホールの椅子は満席だ。立ち見までいる。
 8割女性なのも、普段より若者が多いのも、そういう目的なんじゃねーの?

 って、考えてるそばからまた1人、神官長の魅力に釣られた蛾が入場。
 ………………と思ったけど、はて……?

 俺の横の大扉から入場した男は、目が血走っていて、息は短く荒い。明らかに興奮した様子で、体を固く強ばらせながらポケットの中の何かを握りしめている。
 え? 入ってきたとたんに興奮? イクの早すぎねぇ?
 おやぁ? これは神官長に魅せられた蛾というか、毒蛾じゃねーか?

「おい」
「あっ?!」

 男は裏返った声を上げてこっちを見た。
 ちょっと声をかけただけで、跳び上がるくらいに驚くとは、周りが見えてないな。

「もうここからだと人が多くてよく見えないだろ? 別の場所に案内してやるよ」
「あ、いや、おれはっ」
「まぁまぁ、もうこっちはいっぱいなんだ。周りの迷惑にもなるし、さ?」

 男のポケットに入った手首を握り、素早く引っ張り出すと動かせないように背後に回して固定する。
 静かな聖堂で騒がれないように口も片手で塞ぐ。
 近くにいた騎士に目をやると、向こうも緊張した顔でこっちを見ていて目があった。
 暗黙の了解で後の警備を頼むと、モゴモゴ言っている男を聖堂から引きずり出した。



「どうした? あのホールでの騒ぎは何事だ」

 警備室で縛り上げた男を取り調べ中、神官長が顔をだした。
 なるべく静かに退散したつもりだったけど、正面でこちらを見ていた神官長は気づいていたらしい。

 室内にいた騎士は俺も含めて神官長に敬礼する。
 男の取り調べをしていた騎士隊長は、警備室に来た神官長に目を向けた。

「神官長殿。なに、不審者がいたから捕まえただけです」
「不審者?」
「えぇ、聖堂内に持ち込み禁止の刃物を持って侵入したのでね。酒も大量に飲んで挙動もおかしい様子です」

 そう聞くと、神官長が難しい顔で顎に手を当てた。

「なぜ刃物を」
「こういう輩はたまにいるんです。他の町からの流れ者ですが、この町での境遇に満足できず、人の多いところで暴れて注目されたい。たとえ牢にぶち込まれることになっても。そういう自暴自棄な輩がいるんですよ」
「……恐ろしいことだ」
「まったくですな。まぁ、この手のことは私どもに任せて、神官長殿の職務にお戻りください」

 神官長はしばらくジッと不審者の男を見たあと、もう一度隊長に顔をむけた。

「わかった、あなたに任せよう。ただ、この大聖堂の責任者は私だ。私にも一報を入れるように」
「これは失礼しました。……おい、クレランス。休憩に入る前に神官長殿をお部屋まで護衛しろ」
「はっ!」

 やった~! 神官長とお散歩だ~! 不審者を捕まえてから休憩無しで3時間、取り調べに付きあってたかいがあった~~~! 昼飯も食ってないけど~!

 部屋を退室すると、神官長の斜め後ろに付きながら廊下を歩く。
 隣には神官長の副官もいるから変な動きはできない。ただつきしたがって歩くだけ。
 そんな状況で、神官長の後ろにいると、たまにさわやかな柑橘のにおいが漂ってくる。

 うは……やばい、あの夜を思い出しちゃう!
 耳の後ろに香水をつけているんだろうか? 綺麗な金髪をかき上げるといいにおいがするんだよな~。
 それに、顔を近づけると、戸惑いと欲情で頰を染めちゃったりして……エロっ!!
 いやちょっと、妄想も入っていたかな。ははは。

 不意に立ち止まった神官長が振り向いた。
 やばっ! 真面目な顔ができているだろうか!
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