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4章 孤児院と神域
20.オラネコ色恋営業
勤務終わりに楽屋にいると、ショーパブの店長ジェイが入ってきた。
「ほらよ、まかない飯だ」
「まかない飯?」
目の前に置かれた丼には、白米と上に魚の蒲焼きが乗っている。
ホカホカと湯気が出ているようすからは作りたてにみえた。
「この店、まかない飯なんてあったのか」
「いんや。俺の夜食のついでに作った。もうホールのスタッフも帰って店じまいしたし、あとは数組泊まりの客がいるだけだからな。泊まりのほうから呼ばれることなきゃ暇でよ」
「ゴチになりまッス!」
さっき、媚薬後の疲労で眠っていた神官長も帰った。
神官長が夜な夜な出かけて、酒飲んで帰ってくるって、問題ないんだろうか?
神官たちは大聖堂裏の寄宿舎で生活しているはずだ。一部の高位神官は外に家を持つことが許可されているけど、神官長もそうなんだろうか。
それにしても、神官長が朝帰りってイメージ良くないな。
そんなわけで、神官長の名誉を守るために、神官長を起こしてお帰り願った。
楽屋に他のキャストの姿はない。
そんな楽屋で着替えてるところに来た店長は、やけに機嫌がいい。
「めっちゃ美味いな! まさか店長にこんな特技があったとは!」
「オーバーな。本当は飲みにでも連れて行ってやりたいところだけどな、明日の昼間も仕事だろ?」
「店長の奢りなら飲みたいなぁ……めっちゃ高い店でボトル開けまくって女をはべらせたい」
「ばか! そこまでの金はねーわ!」
店長なのに金がないとは! 雇われ店長だからかな。まぁ店長に行く金が少ない分、俺たちキャストに回ってるのかも。うむむ、飯がうまい。
「いや~店長の手料理が食えるなんて。俺、贔屓されてんね~」
「そうだな。おまえに惚れてるからな」
「……え?」
小太りもじゃ髪の店長ジェイをまじまじと見てみた。
「ひぇっ! すんません……店長に対してその気はないんで」
「惚れてるっていっても、恋愛的なやつじゃねぇ。人間的なやつだ」
「……えぇ? たとえばどういうところ?」
「めっちゃニヤついた顔してて探り入れてくるんじゃねーよ。……まぁ、おまえの境遇でこんな店で働いてるのに、馬鹿みたいに前向きなところとか、な。こういう店だと、色んなやつ見るけど、おまえ見てるとなんか癒されるよ」
「ほおん?」
「妹を借金のかたに取られないために、親の借金返してるんだろ。それも昼は高級取りの仕事してるのに、夜も体売るって、ノンケの男じゃなかなか決心できねーよ。プライド折れるだろ。夜の店で男が大金稼ごうと思ったら、男相手の男娼が一番稼げるとはいえ……なぁ」
「男娼なんて露骨な! セクシーダンサーですって!」
「どっちもどっちだろが」
「んえ~?」
「……やっぱり女の方が好きなんだよな? 女相手の男娼があればよかったのになぁ」
「需要ねーなぁ」
「あぁ、でも男とはいえ、あのデカい財布は別か?」
店長がニヤニヤしながらこっちをみた。デカい財布ってのは店長がつけた神官長のあだ名だ。
初めて来た時は、すぐに追い返せると思ってたのに、いつの間にやら俺の1番の太客になっちまったな……。本人は気づいてないだろーけど。
「まぁ、あの人は特別なんよ」
「特別なぁ」
「今度は店長がニヤけてんじゃねーの」
「特別とかいってVIPルーム取るくせに、全然ヤってなかっただろ」
「はい?」
なんでバレた?
「バレてるに決まってんだろ。顔見てりゃわかるし、部屋掃除してんのは裏方の俺らだ」
「ひぇ~」
「ま~た、焦らしてヤバイ客になるんじゃないかとヒヤヒヤしてたんだ。VIPなんてかかる金も多いからなぁ……こじれたら血を見るかもな、とか」
まさか、媚薬入りカクテルを混ぜたのは、店長の差し金じゃあるまいな?
「いや~まぁあの客は、そういうのなくても来るんでね? まぁ俺に会いに?」
「あぐらかきすぎ! 高級キャバ嬢きどりか!」
「まぁこちとら、高級キャストですから?」
「ばか、そういうオラネコ色恋営業してるくせに、絶対寝ないマンだったから、鬱憤溜まった客が暴走するんだよ」
「おらねこってなに?」
「オラオラしてる穴役ってこと」
「なんで?! 竿役じゃダメなんか?!」
「え? おまえがオラタチ? 需要ねーなぁ。ちゃらんぽらんで隙があるのになんか強引で偉そう。そういうところがオラネコに見えるから可愛げがあって客がつくんだよ。そんでノンケなのにすぐ惚れられるし……おまえは色恋のつもりはないんだろーけどさ」
「まさか、そういうふうに見えているとは……。これでも女相手には男らしいイケメンでモテモテ大人気なのに……!」
「女の前では猫でも被ってんのか? まぁ、今回みたいに、さっさと寝てやって鬱憤を抜いとくのがいいってことだ。長く客として引っ張りたいならな」
「へ~~~い」
まぁ、ウォーレンは客だけど、目的が違うところに向いてるからなぁ……店通いも俺目当てじゃないし。ってか、ゲイかどうかもわからんし。……経験はありそうだけど。
何かの魚の蒲焼丼をスプーンでかきこんだ。
黙り込んだ店長はまだ出ていく気配もなく、俺をみてくる。
「なぁ、あのデカい財布」
「んむ?」
「やっぱりかなりの金持ちだよな? なんか探り入れたか?」
「……年収は知らんけど、まぁ、かなりの身分の人ッス」
「ぼかすじゃねーか。知ったら消される系か?」
「えぇ、俺の昼職の知り合いなんでね」
「……それ、ギャグじゃなかったのか?」
「マジです。店長より先に俺が消されます」
「おまえ……そんな相手と寝たのか! ギャンブルもほどほどにしろよ?! バレたらどーする!」
「むりやり客取らせたのは店長でしょーがっ!」
「………………スマンかった」
まぁ、許してやるとしよう。
日常に神官長というピリリと辛いスパイスがかかったおかげで、毎日楽しいし。
「ほらよ、まかない飯だ」
「まかない飯?」
目の前に置かれた丼には、白米と上に魚の蒲焼きが乗っている。
ホカホカと湯気が出ているようすからは作りたてにみえた。
「この店、まかない飯なんてあったのか」
「いんや。俺の夜食のついでに作った。もうホールのスタッフも帰って店じまいしたし、あとは数組泊まりの客がいるだけだからな。泊まりのほうから呼ばれることなきゃ暇でよ」
「ゴチになりまッス!」
さっき、媚薬後の疲労で眠っていた神官長も帰った。
神官長が夜な夜な出かけて、酒飲んで帰ってくるって、問題ないんだろうか?
神官たちは大聖堂裏の寄宿舎で生活しているはずだ。一部の高位神官は外に家を持つことが許可されているけど、神官長もそうなんだろうか。
それにしても、神官長が朝帰りってイメージ良くないな。
そんなわけで、神官長の名誉を守るために、神官長を起こしてお帰り願った。
楽屋に他のキャストの姿はない。
そんな楽屋で着替えてるところに来た店長は、やけに機嫌がいい。
「めっちゃ美味いな! まさか店長にこんな特技があったとは!」
「オーバーな。本当は飲みにでも連れて行ってやりたいところだけどな、明日の昼間も仕事だろ?」
「店長の奢りなら飲みたいなぁ……めっちゃ高い店でボトル開けまくって女をはべらせたい」
「ばか! そこまでの金はねーわ!」
店長なのに金がないとは! 雇われ店長だからかな。まぁ店長に行く金が少ない分、俺たちキャストに回ってるのかも。うむむ、飯がうまい。
「いや~店長の手料理が食えるなんて。俺、贔屓されてんね~」
「そうだな。おまえに惚れてるからな」
「……え?」
小太りもじゃ髪の店長ジェイをまじまじと見てみた。
「ひぇっ! すんません……店長に対してその気はないんで」
「惚れてるっていっても、恋愛的なやつじゃねぇ。人間的なやつだ」
「……えぇ? たとえばどういうところ?」
「めっちゃニヤついた顔してて探り入れてくるんじゃねーよ。……まぁ、おまえの境遇でこんな店で働いてるのに、馬鹿みたいに前向きなところとか、な。こういう店だと、色んなやつ見るけど、おまえ見てるとなんか癒されるよ」
「ほおん?」
「妹を借金のかたに取られないために、親の借金返してるんだろ。それも昼は高級取りの仕事してるのに、夜も体売るって、ノンケの男じゃなかなか決心できねーよ。プライド折れるだろ。夜の店で男が大金稼ごうと思ったら、男相手の男娼が一番稼げるとはいえ……なぁ」
「男娼なんて露骨な! セクシーダンサーですって!」
「どっちもどっちだろが」
「んえ~?」
「……やっぱり女の方が好きなんだよな? 女相手の男娼があればよかったのになぁ」
「需要ねーなぁ」
「あぁ、でも男とはいえ、あのデカい財布は別か?」
店長がニヤニヤしながらこっちをみた。デカい財布ってのは店長がつけた神官長のあだ名だ。
初めて来た時は、すぐに追い返せると思ってたのに、いつの間にやら俺の1番の太客になっちまったな……。本人は気づいてないだろーけど。
「まぁ、あの人は特別なんよ」
「特別なぁ」
「今度は店長がニヤけてんじゃねーの」
「特別とかいってVIPルーム取るくせに、全然ヤってなかっただろ」
「はい?」
なんでバレた?
「バレてるに決まってんだろ。顔見てりゃわかるし、部屋掃除してんのは裏方の俺らだ」
「ひぇ~」
「ま~た、焦らしてヤバイ客になるんじゃないかとヒヤヒヤしてたんだ。VIPなんてかかる金も多いからなぁ……こじれたら血を見るかもな、とか」
まさか、媚薬入りカクテルを混ぜたのは、店長の差し金じゃあるまいな?
「いや~まぁあの客は、そういうのなくても来るんでね? まぁ俺に会いに?」
「あぐらかきすぎ! 高級キャバ嬢きどりか!」
「まぁこちとら、高級キャストですから?」
「ばか、そういうオラネコ色恋営業してるくせに、絶対寝ないマンだったから、鬱憤溜まった客が暴走するんだよ」
「おらねこってなに?」
「オラオラしてる穴役ってこと」
「なんで?! 竿役じゃダメなんか?!」
「え? おまえがオラタチ? 需要ねーなぁ。ちゃらんぽらんで隙があるのになんか強引で偉そう。そういうところがオラネコに見えるから可愛げがあって客がつくんだよ。そんでノンケなのにすぐ惚れられるし……おまえは色恋のつもりはないんだろーけどさ」
「まさか、そういうふうに見えているとは……。これでも女相手には男らしいイケメンでモテモテ大人気なのに……!」
「女の前では猫でも被ってんのか? まぁ、今回みたいに、さっさと寝てやって鬱憤を抜いとくのがいいってことだ。長く客として引っ張りたいならな」
「へ~~~い」
まぁ、ウォーレンは客だけど、目的が違うところに向いてるからなぁ……店通いも俺目当てじゃないし。ってか、ゲイかどうかもわからんし。……経験はありそうだけど。
何かの魚の蒲焼丼をスプーンでかきこんだ。
黙り込んだ店長はまだ出ていく気配もなく、俺をみてくる。
「なぁ、あのデカい財布」
「んむ?」
「やっぱりかなりの金持ちだよな? なんか探り入れたか?」
「……年収は知らんけど、まぁ、かなりの身分の人ッス」
「ぼかすじゃねーか。知ったら消される系か?」
「えぇ、俺の昼職の知り合いなんでね」
「……それ、ギャグじゃなかったのか?」
「マジです。店長より先に俺が消されます」
「おまえ……そんな相手と寝たのか! ギャンブルもほどほどにしろよ?! バレたらどーする!」
「むりやり客取らせたのは店長でしょーがっ!」
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日常に神官長というピリリと辛いスパイスがかかったおかげで、毎日楽しいし。
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