【完結】覆面セクシーダンサーは昼職の上司に盲愛される

鳥見 ねこ

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4章 孤児院と神域

23.探索仕事がまいこんだ

 程よく汗をかいた頃、書類仕事を終えたらしい神官長と騎士仲間の姿が庭に来るのが見えた。子供たちの遊び時間も終わりらしく職員が呼びあつめている。

「任務達成しましたっ!」

 真面目な顔で報告すると、ジッと見つめられた。いつもの冷たい目と違い、少し優しくみえる。

「そのままで」

 神官長の手が伸びてきた。白い指だが骨張った手。
 その指が腰に食い込んだ記憶がよみがえってしまい、場所も考えず体の奥がうずいた。

 神官長の手がぴたりと額に止まると、とたんに全身が涼しくなり汗がひいた。なんなら体の奥のうずきまでスッキリしてしまった……。

「……涼しくなる魔法?」
「あぁ、清涼の魔法だ。ご苦労だったな」

 ポカンとしてしまった。神官長に命じられたとはいえ、魔法をかけてまで労ってもらえるとは。

「はっ! ありがとうございます!」

 ニマニマしてしまいそうな口元を引き結んで敬礼した。
 やっぱり優しいな~神官長。
 今日は病魔退散、清涼の魔法と魔法の大盤振る舞いだ。便利そうな魔法だけど、使える本人たちからするとなにやら制約があるらしい。

 魔法で疲れた神官長だ。今夜は店に来ないかもしれない。
 日がだいぶ傾き夕方近くなっている。もう帰るから俺を迎えに来たんだろう。

 その時、ガヤガヤした騒ぎに気づいた。子供たちの声だけじゃなく、職員の慌てる様子もある。

「なにを騒いでいる?」
「見て参ります!」

 少し青ざめた老女がスカートをはためかせながら早足で向かった。
 神官長もゆっくりした足取りながら、険しい顔で向かう。
 職員から聞き取ったらしい老女が、神官長に向き直ると青ざめた顔で報告してくる。

 いわく――子供が1人いなくなったと。

「いったいなぜ……まさかバシリオ神官がきたのか?」

 バシリオ神官は前に孤児の奴隷斡旋の容疑者と聞かされた男だ。
 子供が消えたことから、神官長はその関与を疑ったんだろう。

「バシリオ神官様……? いえ、いらしていません。子供たちの話では、勝手に裏の森へ行ったのかもしれない、と。この間のピクニックで見かけたシラキスの木について話していたそうで」
「森か……その木は遠いのか?」
「いえ、それほど遠くないのです。だからこそ、まだ帰らないのがおかしいのです」
「迷子か」
「今、職員を向かわせていますわ」
「わかった」

 俺にはなんとなくわかる。たぶん神官長がシラキスを好きだと知っている子供だ。
 神官長が来たから、プレゼントに実を森へ取りに行ったんだろう。もちろん、勝手に行くのは悪いことと知りながら、近くだからすぐに帰るつもりでさ。
 めちゃくちゃわかる~。俺の子供の頃に似てるな。後先考えずに行動しちゃうんだよ……。
 確認にいった職員からはすぐに、見つからないと連絡がきた。

「なんてこと……まさか、神域に入り込んでしまったんじゃ……」
「探索魔法をおこなう。ホールを借りるぞ」

 嘆く老女に、神官長はキビキビと指示を飛ばし始めた。そこからの行動は早い。
 ホールに森の地図を広げ、探索魔法で子供の居場所をつきとめた。
 地図についた印は、神域とされる場所の少し内側だ。

「やはり神域に入っているようだ。そこまで深くはないが、急いだほうがいい」
「あの、わたくし、すぐに救助隊に連絡を――」
「いや、救助隊は神域に立ち入る権限がない。許可を取るにも時間がかかる」
「そんなっ! それじゃあ――」
「問題ない、私がいく。どうせ救助隊がきたとしても同行せねばならん。私なら立ち入る権限があるし、目的地まで迷うこともない。すぐに準備を」

 神官長に迷いはない。その判断が正しいのか見極める根拠も俺にはない。
 でも、ひとつはっきりさせておきたいことはわかった。
 全くこちらを見ない神官長に近づく。

「神官長殿。もちろん私どもが同行してよろしいですね?」
「……騎士か」

 存在を今思い出したのか、虚を突かれたような顔で俺を見た。

「いや、だめだ。足手まといだ」
「神官長より体力があるつもりですが」
「そういう意味ではない。神域は……特別な場所だ。大人数で探索をおこなえるような場所ではない」
「意味が理解できませんが、……なんと言われても、お一人で行かせることはできません」

 上司とはいえ、俺たちの立場もある。護衛としてつけられた俺たちが、護衛対象1人で危険な場所に送り出せるはずがない。

 神官長だって、それがわからないはずがない。――が、何か特殊な事情があるのか、考えるように腕を組んだまま動かなくなった。

「神官長。大人数が難しいなら、俺だけでもお連れください。この中では俺が一番腕が立つし体力があります」
「元王宮騎士……だったな」
「それに加えて――」

 言葉を切ると、考え込んでいた神官長が顔を上げてこっちを見た。

「俺が一番ユーモアがあります! きっと楽しいピクニックになりますよ」

 ニッコリ笑うと、一瞬、神官長の口元もつられて微笑んだ。すぐにかき消えたが。

「……わかった。クラレンスだけだ。一緒にこい。ロープを準備しろ!」

 職員に飛んだ指示に首を傾げる。ロープ……? 崖を登るには必要だけど、そんなに険しい道のりなのか?
 ロープの意味は森のそばでわかった。2メートルほどのロープで神官長と体を繋がれてしまった。
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