【完結】覆面セクシーダンサーは昼職の上司に盲愛される

鳥見 ねこ

文字の大きさ
24 / 69
4章 孤児院と神域

24.神隠しなら神官長と共に

しおりを挟む
 用意された2メートルほどのロープで神官長と体を繋がれてしまった。

「あの~……俺は犬じゃないんですが……」

 恐る恐る老女と話している神官長にたずねる。俺に背負わせる荷物の中身を確認していた神官長が、ジロリと睨んでくる。

「おまえは……何も知らないんだな。森にある神域では『神の気まぐれ』という現象がおこる。迷子になったり、幻覚をみたり、神隠しにあったり。……過去に聖女が異界から現れたのも神域だ。このロープはおまえの命綱だ。神域の影響を受けない私から離れないためのな」

 まさか神域がそんな恐ろしいところだとは!
 大聖堂勤務が長ければ、そのうち噂で聞いたのかもしれないが、勤め出して間もない俺は知らなかった。

 一市民としては、聖女についてのそんな詳しいことまで歴史で習った覚えはない。
 でも聖女が異界からきたってことは、神隠しは逆に異界に迷い込んでしまうってことなのか? 聖女様の故郷……つまり聖女さまがいっぱいいるところ?

 大聖堂に飾られた聖女の絵のような美女がいっぱいいる世界が思い浮かんだ。なんて極楽だろう……。
 いや、いまは探索だ! それに護衛対象の神官長を置いて神隠しにあうわけにはいかない。

 神官長は手に杖を、俺は荷物を背負って帯剣すると、森に入った。

 神域までの道のりは何事もなかった。ただ、夕暮れが近づいているため、影が深くなってきた森は少し恐ろしさがある。
 訓練している俺と遜色ない神官長の身のこなしや足取りにも感心した。
 杖で草木を分けいり、道なき道を辿って一直線に目的地へ向かう気だろう。かなり足元に凹凸があり歩きにくい。

 確実に子供が通った道を辿っているわけではないはずだ。
 探索で最終目的地がわかっているからこそのショートカットだろう。やっぱり魔法は便利だな。

「そろそろ神域へ入る! ロープは絶対に外すな!」
「はっ!」

 少し息が切れている神官長だが、まだ覇気がある。
 神域に入ると少し森の雰囲気が変わったように感じた。静けさが増し、肌が泡立つような緊張感がある。
 少し気温が下がって感じられたのは陽が落ちたからか。いや、陽が落ちるにはまだ時間が早い。やっぱり、どこか薄寒い場所ってことだ。

 クンッとロープが引かれ、戸惑いに足が止まっていることに気づいた。なぜか思考力も鈍くなっているように感じる

「大丈夫か?」
「はっ! 問題ありません。森の気配が変わったと感じて驚いただけです」
「おまえ……目をつけられたかもしれんな」

 何に?! え、ちょっと怖いんですけど……。神域だから神様? それともまさか幽霊?!

「幽霊なんてことは……ないですよね?」
「不安なら、手でもつないでやろうか?」
「はっ?! あ~~~それはまたの機会でっ」

 前を向いた神官長の気配で笑っているのがわかる。
 俺とは逆に、神官長は神域に入ってから余裕が出てきた。さっきよりも体が軽そうだし、あの神官長からジョークまで飛び出すとは。

 ……やっぱり本気にして手をつないでおけば良かったかな!? いや、騎士というキャラ崩壊と「冗談に決まってるだろ」って冷めた目を招くだけだ。
 想像するだけでゾッとする。

「神官長は神域の影響を受けないとおっしゃっていましたが、やっぱり影響はあるんじゃないですか? さっきよりも動きに余裕がみえます」
「おまえはよく見ているな。神域は神聖属性の神官にはプラスの効果がかかる。魔力、体力、気力ともに上昇した」
「なるほど……魔法的なやつですね。俺は魔法が使えないので詳しくないんですが……」
「平民で魔法が使えるのはマレだからな。おいそこ、蛇だ。気をつけろ」

 なんだか嫌な予感がする。同行を申し出た時に言われた、足手まといって言葉が浮かんでくる。
 ザクザクと草やツルや蜘蛛の巣をはらいながら進む。たまにロープが引っかかって邪魔になった。

 これは命綱。邪魔で外したい誘惑に精神力で蓋をする。それに、職員たちによってギチギチに強く結ばれているから簡単には解けない。
 まぁでも剣で切ればあるいは……いや、ダメだってば。

 目の端に人の姿を見た気がした。

「?!」

 子供の後ろ姿が草木の間に見えた。

「神官長! 子供がいました!」
「なんだと?」

 後を追おうとした俺の腕を神官長につかまれる。

「まて! 私には見えん。それは幻覚だ」
「えっ?!」

 あんなにはっきり見えるのに?! もう一度そっちの方角をみると、その姿は掻き消えていた。

「いない……ですね」
「想定内だ。問題ない。いくぞ」

 やっぱり神域だ。これが幻覚か。
 騎士は魔法耐性をつけるために、魔法にかかる訓練もする。でも、気づかずにかかって現実と幻覚が曖昧になる状況の恐ろしさは段違いだ。

 また遠くに子供の姿がみえた。さっきと同じ後ろ姿だ。
 目をこすると掻き消えた子供の姿にゾッとする。本当に幻覚なんだろうか? まさか俺にしか見えていない幽霊とか……そんなことはないだろーな?!

 いや、もしも幽霊だとしても、今の探し人とは別だ。無視だ無視。
 その後も、何度も子供の後ろ姿をみた。神官長には伝えなかったが、もう脳がバグりそうだ。
 また子供の姿に気を取られた。頭から振り払おうとした時、めまいが――

 顔を上げた先で、神官長の姿を一瞬見失った。
 いや、向こうの茂みに神官長の後ろ姿がある。

「まって――」

 追おうとした。その時、逆側にロープが引っ張られる衝撃が走った。

「?!!!」
「どうした」

 体勢を崩して地面に手をついていた。顔を上げると目の前にはロープを握る神官長がいた。
 さっき見えたのはその神官長と逆側だったのに。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?

米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。 ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。 隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。 「愛してるよ、私のユリタン」 そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。 “最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。 成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。 怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか? ……え、違う?

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

処理中です...