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6章 王宮へ出張
35.ケツに入れる拷問を考案中
王宮は左遷前の職場だから勝手を知っている。
いったい王宮で何の仕事かと思ったら、向かったのは会議室だった。ロの字に置かれたテーブルに着席する神官長の後ろの壁際に控えた。
なんとなく嫌な予感がする。この手の会議室は王宮の官吏同士が打ち合わせに使う場所だ。
身分の高い者が多く出席する会議ならもっと内装の凝ったランクが上の会議室に呼ぶ。
もしくは、神官長の立場なら、官吏が大聖堂まで出向いて意向を伺ってもいいくらいだ。
こんな会議室に呼ばれるというのは……神官長がなめられてるってことか。
始まった会議も、世間話やら、回りくどい話を二転三転させるやらで、時間を浪費するような内容だ。そして神官長に関係する話もなかなか出ない。
こんな会議に時間を潰されて、仕事が圧迫されてるのか……。
「お茶でございます」
目の前に立つお茶汲みメイドの姿を見てひっくり返りそうになった。
「あ、あぁ」
会議に対して憤っていて全然意識していなかったけど……。
おいおいおい、この人王宮時代のセフレのひとりじゃん……。
ジローっと流し目をよこされて肝が冷える。
いかがわしい行為が芋づる式にバレて左遷されたのは俺だけだから、彼女はたいした罰は受けてないはず。
だけど……俺の複数セフレ事情はほとんどの女が知ってしまったと思っていい。いや、つまり……痴情のもつれで刺される可能性あり、と。
俺としては、根に持たないさっぱりしたタイプとしか遊んでいないつもりだ。ただそんなことは男側の都合のいい幻想だろう……この冷たい目を見て気づいた。
背筋が寒くなりながらティーカップをソーサーから持ち上げたとたん、カップの下に紙が挟まっていたのに気づいた。
『怒ってないわ。いつもの調理場裏で』
わーい! 怒ってないんだ~! やっぱり俺ってばモテモテだなぁ。
……って単純に受け取っていいんだろうか?!
護衛中なのが不幸中の幸い、逢い引きの暇もなかろう。刺される確率を考えるのはまた今度にしよう……。
冷えた肝を温めるために紅茶を飲み下した。
会議は特に紛糾するでもなく終わった。ただ、会議の進みが悪く、神官長と関係する議題は次回に回されたわけだが……。
完全に嫌がらせだろう、これ。
結局、神官長が出る意味が全くない会議となったわけだ。怒っていいのに怒らないのは、例の事件から負い目があるからか?
官吏がゾロゾロと退室する中、神官長も眉間に皺を寄せながら立ち上がった。その後ろに俺もついていく。
「神官長、あの会議は……!」
「あぁ、くだらないだろう? わかっている。ただおまえは護衛だ。下手に首を突っ込むなよ」
諦め半分の口調で忠告してくる神官長は、また昨日の疲れた顔に戻っている。
下手な首を突っ込みたい。嫌がらせしている奴らのケツにデカいものを突っ込んで立てなくしてやりたい。
いや、せめて何か……俺にできることがないのか?
無意味な会議の後も、提出書類の不備とか言われて重箱の隅を突くような修正で書類を返却されたり、担当が違うと部署間をたらい回しにされたり、夜は無駄なパーティーに呼ばれている現状が見えて来た。
これじゃ、ストレスが溜まるのも当たり前だ。
ついていくだけの護衛にしても、見ているだけで気が滅入る。なるほど、神官長の護衛が不人気なはずだ。
王宮は左遷前と同じく美しい。凝った内装に、高級な調度品、幅広い廊下には大きな窓から気持ちのいい陽光が差し込んでいる。
なのに、裏側の人間たちの陰湿さときたら……神官長の真面目一途とは相性が悪いだろう。
前を歩く神官長の足取りが遅くなり、止まった。
何かと思ったら、向かいから来るのは宰相の息子じゃないか。
整った顔立ち、明るい金髪、貴公子然とした立ち居振る舞いが目を引く。そして口元のホクロは色気がある。
たしか、クロフォード公爵子息のグレンか。内政関係の役職についていたはずだ。
もうひとりの子息は俺と同じ王国軍所属の騎士団副長をしているから、そっちの子息の方が俺には馴染みがあるが。
神官長は端によって会釈して通り過ぎるのを待っていたのに、向こうから声をかけてきた。
「やぁウォーレン殿、久しぶりですね」
「……あぁ、王宮に出向く機会はそうないからな」
「仕事でもないと顔を見せることもないか。寂しいものですね」
なんだ? 口調はお互い気安いものだ。なのに、なんでこんなにピリピリしたムードなんだ?
っていうか、立場的にはグレンの方が上っぽいのに、言葉遣いはグレンの方が敬語? どういう関係なんだ。
「私も忙しい身でな。そろそろ失礼する」
「あぁ、……そうだ、孤児院に寄贈される予定の本が第2倉庫に積まれていますよ。少し確認されて行かれてはどうだろう」
今日の流れからすると、これは嫌なものを感じる。
ただ、孤児院に、と言われると弱い神官長だ。神官長は少し悩むように固まった後、結局頷いた。
「……わかった。そうしよう」
「案内はこの者に」
ニッコリ笑いながら、なにやら従者に耳打ちしたグレンはそのまま歩き去った。
そして従者に案内された倉庫で――案の定、トラブルだ。
倉庫に閉じ込められた。
いったい王宮で何の仕事かと思ったら、向かったのは会議室だった。ロの字に置かれたテーブルに着席する神官長の後ろの壁際に控えた。
なんとなく嫌な予感がする。この手の会議室は王宮の官吏同士が打ち合わせに使う場所だ。
身分の高い者が多く出席する会議ならもっと内装の凝ったランクが上の会議室に呼ぶ。
もしくは、神官長の立場なら、官吏が大聖堂まで出向いて意向を伺ってもいいくらいだ。
こんな会議室に呼ばれるというのは……神官長がなめられてるってことか。
始まった会議も、世間話やら、回りくどい話を二転三転させるやらで、時間を浪費するような内容だ。そして神官長に関係する話もなかなか出ない。
こんな会議に時間を潰されて、仕事が圧迫されてるのか……。
「お茶でございます」
目の前に立つお茶汲みメイドの姿を見てひっくり返りそうになった。
「あ、あぁ」
会議に対して憤っていて全然意識していなかったけど……。
おいおいおい、この人王宮時代のセフレのひとりじゃん……。
ジローっと流し目をよこされて肝が冷える。
いかがわしい行為が芋づる式にバレて左遷されたのは俺だけだから、彼女はたいした罰は受けてないはず。
だけど……俺の複数セフレ事情はほとんどの女が知ってしまったと思っていい。いや、つまり……痴情のもつれで刺される可能性あり、と。
俺としては、根に持たないさっぱりしたタイプとしか遊んでいないつもりだ。ただそんなことは男側の都合のいい幻想だろう……この冷たい目を見て気づいた。
背筋が寒くなりながらティーカップをソーサーから持ち上げたとたん、カップの下に紙が挟まっていたのに気づいた。
『怒ってないわ。いつもの調理場裏で』
わーい! 怒ってないんだ~! やっぱり俺ってばモテモテだなぁ。
……って単純に受け取っていいんだろうか?!
護衛中なのが不幸中の幸い、逢い引きの暇もなかろう。刺される確率を考えるのはまた今度にしよう……。
冷えた肝を温めるために紅茶を飲み下した。
会議は特に紛糾するでもなく終わった。ただ、会議の進みが悪く、神官長と関係する議題は次回に回されたわけだが……。
完全に嫌がらせだろう、これ。
結局、神官長が出る意味が全くない会議となったわけだ。怒っていいのに怒らないのは、例の事件から負い目があるからか?
官吏がゾロゾロと退室する中、神官長も眉間に皺を寄せながら立ち上がった。その後ろに俺もついていく。
「神官長、あの会議は……!」
「あぁ、くだらないだろう? わかっている。ただおまえは護衛だ。下手に首を突っ込むなよ」
諦め半分の口調で忠告してくる神官長は、また昨日の疲れた顔に戻っている。
下手な首を突っ込みたい。嫌がらせしている奴らのケツにデカいものを突っ込んで立てなくしてやりたい。
いや、せめて何か……俺にできることがないのか?
無意味な会議の後も、提出書類の不備とか言われて重箱の隅を突くような修正で書類を返却されたり、担当が違うと部署間をたらい回しにされたり、夜は無駄なパーティーに呼ばれている現状が見えて来た。
これじゃ、ストレスが溜まるのも当たり前だ。
ついていくだけの護衛にしても、見ているだけで気が滅入る。なるほど、神官長の護衛が不人気なはずだ。
王宮は左遷前と同じく美しい。凝った内装に、高級な調度品、幅広い廊下には大きな窓から気持ちのいい陽光が差し込んでいる。
なのに、裏側の人間たちの陰湿さときたら……神官長の真面目一途とは相性が悪いだろう。
前を歩く神官長の足取りが遅くなり、止まった。
何かと思ったら、向かいから来るのは宰相の息子じゃないか。
整った顔立ち、明るい金髪、貴公子然とした立ち居振る舞いが目を引く。そして口元のホクロは色気がある。
たしか、クロフォード公爵子息のグレンか。内政関係の役職についていたはずだ。
もうひとりの子息は俺と同じ王国軍所属の騎士団副長をしているから、そっちの子息の方が俺には馴染みがあるが。
神官長は端によって会釈して通り過ぎるのを待っていたのに、向こうから声をかけてきた。
「やぁウォーレン殿、久しぶりですね」
「……あぁ、王宮に出向く機会はそうないからな」
「仕事でもないと顔を見せることもないか。寂しいものですね」
なんだ? 口調はお互い気安いものだ。なのに、なんでこんなにピリピリしたムードなんだ?
っていうか、立場的にはグレンの方が上っぽいのに、言葉遣いはグレンの方が敬語? どういう関係なんだ。
「私も忙しい身でな。そろそろ失礼する」
「あぁ、……そうだ、孤児院に寄贈される予定の本が第2倉庫に積まれていますよ。少し確認されて行かれてはどうだろう」
今日の流れからすると、これは嫌なものを感じる。
ただ、孤児院に、と言われると弱い神官長だ。神官長は少し悩むように固まった後、結局頷いた。
「……わかった。そうしよう」
「案内はこの者に」
ニッコリ笑いながら、なにやら従者に耳打ちしたグレンはそのまま歩き去った。
そして従者に案内された倉庫で――案の定、トラブルだ。
倉庫に閉じ込められた。
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