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6章 王宮へ出張
38.同志の助力
まさかこの2人が結託して俺をいじめてくるとは……。
どうせいじめるならベッドの上で官能的なほうでお願いしたいんだけど。
神官長はこき下ろされる俺に同情もせず、とうとう笑い声をもらしている。
神官長の笑顔はこんな状況でも抱きしめたくなるほど可愛い。
アンが考え深げにジッと神官長を見つめた。
「とっても美しくて、その上とっても素敵な人ね。こんな人があの役人たちに蔑ろにされている状況に腹立たしさを覚えるわ」
「それには同意する」
「あの会議も酷いものだったわね! あんなのが集まってまともに仕事が回るのかしら」
「そこは神官長みたいな優秀な人が割を食って仕事してるんだろ」
「許せないわね」
「許せないな」
アンと目があった。完全に同志の目だ。
その中で神官長だけが、よくわかってない顔で首を傾げている。
「私を持ち上げてくれるのは嬉しいが、彼らも難しい立場なんだ。悪く言ってくれるな」
「神官長……あなたにお似合いの綺麗事はこの際横に置いておきましょう。これは政治闘争です。あなたに味方がいないから……舐められているから、こんなことになってるんですよ」
「そう……か?」
「神官長は何も悪くないと俺は思っています。多少強引だったところはありますが、人命優先で動いた結果なんですから。事件の関係で罰を受けるなら受けて終わりでいいじゃないですか。いつまでもネチネチと関係のないことで嫌がらせされてますよね? 神官長の実家との確執を知ってる奴らが増長してるんですよ」
「…………」
黙り込んだ神官長に変わり、俺の横に座ったアンが身を乗り出してきた。
「人命優先とか、事件とかって何があったのよ」
孤児が行方不明になって神官長と俺で救出に向かった経緯を、ちょっと大袈裟に同情を引くよう盛って説明すると、アンの目がキラッと光った。
「いい話じゃない。孤児の子供、人命優先、美しい見た目と心の神官長。これはウケるわ」
「ウケる?」
「メイドとか侍女とか、なんならクラレンスの被害者の会でもいいけど、女性の繋がりは多いのよね。そこに話を流せば同情が集まるでしょうし、神官長擁護派が増えるはずよ。まぁ、見てなさいな。王宮の女性陣に冷たい目を向けられて1週間も耐えられる役人なんていないんだから」
嫌な単語が聞こえたぞ。クラレンスの被害者の会……なんてものがあるのか?!
いや、詮索は身を滅ぼす。忘れることにしよう。きっと、井戸端会議で俺の悪口を言いながら盛り上がってるってやつだ。かわいいもんだ。
「それは……だが……」
「私が許せなくて勝手にするだけなの。間違っても恩に感じる必要なんてないんだから」
驚き戸惑う神官長は、しばらく悩むように眉間にしわを寄せた後、緊張を解くようにフッと笑った。
「状況を受け入れるだけだと思っていたが、あなたの気持ちに感謝しよう。……女犯を禁じられる神官が女性に助けられるとは、不思議な巡り合わせだ」
「女犯なんていって大聖堂に引きこもってるから知らないのね。同情したら親身になっちゃうのが普通でしょ。それにだいたいの女はイケメンが好き」
「そうか『好き』か」
神官長と目が合った。まだ少し困惑の残る目。その目を見ると、孤児院でしたやりとりを思い出した。
『好きかどうかは個人の性格や相性など総合的に判断する』とか言っていた、重たい思想の神官長。
とうとう女のライトな『好き』に出会い、助けられることになったわけだ。
どっちが正しいとかじゃない。
だけど、これから神と平和と孤児に埋められた神官長の視野が、もっと広がって行くんだろうか。
「恩を感じるなとはいうけど、間に受けない方がいいですよ。女性陣に対する、ちょっと良い菓子の差し入れと親しみの湧く笑顔と紳士的な態度、くらいは今後も継続したほうがいいです。なんていっても、女の手のひら返しは早いもんですから」
「肝に銘じよう」
言葉に実感がこもってしまう。
それを嗅ぎ取ったのか、神官長は神妙な顔で頷いた。
どうせいじめるならベッドの上で官能的なほうでお願いしたいんだけど。
神官長はこき下ろされる俺に同情もせず、とうとう笑い声をもらしている。
神官長の笑顔はこんな状況でも抱きしめたくなるほど可愛い。
アンが考え深げにジッと神官長を見つめた。
「とっても美しくて、その上とっても素敵な人ね。こんな人があの役人たちに蔑ろにされている状況に腹立たしさを覚えるわ」
「それには同意する」
「あの会議も酷いものだったわね! あんなのが集まってまともに仕事が回るのかしら」
「そこは神官長みたいな優秀な人が割を食って仕事してるんだろ」
「許せないわね」
「許せないな」
アンと目があった。完全に同志の目だ。
その中で神官長だけが、よくわかってない顔で首を傾げている。
「私を持ち上げてくれるのは嬉しいが、彼らも難しい立場なんだ。悪く言ってくれるな」
「神官長……あなたにお似合いの綺麗事はこの際横に置いておきましょう。これは政治闘争です。あなたに味方がいないから……舐められているから、こんなことになってるんですよ」
「そう……か?」
「神官長は何も悪くないと俺は思っています。多少強引だったところはありますが、人命優先で動いた結果なんですから。事件の関係で罰を受けるなら受けて終わりでいいじゃないですか。いつまでもネチネチと関係のないことで嫌がらせされてますよね? 神官長の実家との確執を知ってる奴らが増長してるんですよ」
「…………」
黙り込んだ神官長に変わり、俺の横に座ったアンが身を乗り出してきた。
「人命優先とか、事件とかって何があったのよ」
孤児が行方不明になって神官長と俺で救出に向かった経緯を、ちょっと大袈裟に同情を引くよう盛って説明すると、アンの目がキラッと光った。
「いい話じゃない。孤児の子供、人命優先、美しい見た目と心の神官長。これはウケるわ」
「ウケる?」
「メイドとか侍女とか、なんならクラレンスの被害者の会でもいいけど、女性の繋がりは多いのよね。そこに話を流せば同情が集まるでしょうし、神官長擁護派が増えるはずよ。まぁ、見てなさいな。王宮の女性陣に冷たい目を向けられて1週間も耐えられる役人なんていないんだから」
嫌な単語が聞こえたぞ。クラレンスの被害者の会……なんてものがあるのか?!
いや、詮索は身を滅ぼす。忘れることにしよう。きっと、井戸端会議で俺の悪口を言いながら盛り上がってるってやつだ。かわいいもんだ。
「それは……だが……」
「私が許せなくて勝手にするだけなの。間違っても恩に感じる必要なんてないんだから」
驚き戸惑う神官長は、しばらく悩むように眉間にしわを寄せた後、緊張を解くようにフッと笑った。
「状況を受け入れるだけだと思っていたが、あなたの気持ちに感謝しよう。……女犯を禁じられる神官が女性に助けられるとは、不思議な巡り合わせだ」
「女犯なんていって大聖堂に引きこもってるから知らないのね。同情したら親身になっちゃうのが普通でしょ。それにだいたいの女はイケメンが好き」
「そうか『好き』か」
神官長と目が合った。まだ少し困惑の残る目。その目を見ると、孤児院でしたやりとりを思い出した。
『好きかどうかは個人の性格や相性など総合的に判断する』とか言っていた、重たい思想の神官長。
とうとう女のライトな『好き』に出会い、助けられることになったわけだ。
どっちが正しいとかじゃない。
だけど、これから神と平和と孤児に埋められた神官長の視野が、もっと広がって行くんだろうか。
「恩を感じるなとはいうけど、間に受けない方がいいですよ。女性陣に対する、ちょっと良い菓子の差し入れと親しみの湧く笑顔と紳士的な態度、くらいは今後も継続したほうがいいです。なんていっても、女の手のひら返しは早いもんですから」
「肝に銘じよう」
言葉に実感がこもってしまう。
それを嗅ぎ取ったのか、神官長は神妙な顔で頷いた。
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タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。