【完結】覆面セクシーダンサーは昼職の上司に盲愛される

鳥見 ねこ

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8章 飲み会とアフター

50.神官長の弱み…?

 流し目してくる姉さんの目が笑ってる。なんなら冷たい表情の女の子までジーッとこっちをみてくる!

「いや、任務で一緒になった時に着替えで見ちゃっただけで……ちょっと! 変な目で見ないでくださいよっ!」

 肘で姐さんを押すと、すんなり離れてくれた。
 やばいやばい、一気に体温が上がるぜ。

「こいつ、酔うと変な絡み方するんだ。すまんな」

 武闘家の兄さんが取りなしてくれたけど、まだお姐さんはぶちぶち言ってる。

「ウォーレンってソッチだと思うのよねぇ。冒険者時代にも寄ってくる女全部ふってたしさぁ」
「んなこと言ったら、男に言い寄られてもふってたぞ。おまえ誘導してるだろ~」

 顎髭オヤジがトロンとした目でお姐さんを見た。それにお姐さんもペロッと舌を出す。

「あら~そうだったかしら? やっぱり宗教上の理由とかいうやつかしらねぇ」

 男の経験はありそうだったけど……手当たり次第ではなかったってことかな?

「あたしの持論だけど、神官ってドMかドSよ。物理的には何の特にもならない神に仕えるとかドMだし、信仰なんて下手したら洗脳……ドSよねぇ」
「神官長はどっちですか?!」
「ウォーレンはそうねぇ……」

 考えるように上を見たお姐さんが、またこっちに流し目してきた。

「一回寝てみないとわかんないわね」

 結局そっちか! ってか、本当は寝たことあるんだろ? って探られてる気がする!
 激しくないのにしつこいのはドSっていえますか?! 姐さーん!

 心の中とは別に、リアルでは困り顔で「聖堂での仕事ぶりはドMで、人当たりはドSですね」と返しておいた。
 不意に、柑橘のいい匂いが鼻先をかすめた。

「なんの話をしてるんだ?」

 後ろから落ちてきた声にゾクッと背中が泡だった。

「し、神官長!」
「酔うほど飲んだらしいな? 誰がドSだって?」

 やべーッ! 神官長ドSモード発動する!?
 でも叱られるかと思ったけど、外套のフードを外した神官長は少し悪戯っぽく笑っただけだった。

「この人は昔から私をからかうのが好きでな。クラレンスは変な影響を受けないように」

 自然と隣に椅子を持ってきて座った。少し当たる腕が熱く感じる。

「神官長も来られる予定だったとは……」
「せっかくだからな、仕事は副官に任せてきた。おまえがいることの方が驚きだ」
「ユルゲン爺さんに誘われまして」
「……なるほど、気が合いそうではあるな」

 嬉しいけど、不意打ちの登場に少し挙動不審になってしまった。

「あらあらウォーレンったら。油断しちゃダメよ~。この子あなたの弱みを探りに来たんだから」
「ちょっ!? お姐さん?! そんなこと言ってねぇよっ?!」
「そうに決まってるぅ~。さっきからウォーレンのこと根掘り葉掘り聞いてるもの~」
「俺たちの共通の話題だから! でしょ?!」
「必死に否定してる~ぅ、あやし~~~い」

 体をくねくねしながら煽ってくるお姐さんタチが悪いぜ!
 それも弱みを探りにきたって? 鋭いところをついてくるしな!

「んじゃ主役の登場ってことで、改めて乾杯しましょ~」

 お姐さんの明るい声で、乾杯した。

「あの……」

 後ろからの声に振り返ると、白魔法士の女の子がグラスを両手で持って立っていた。さっきまでの冷めた顔とは見違えるほど、茹で上がった顔になっていた。

 あれ? いつの間にこんな酔うほど飲んだ?
 横にいた神官長も後ろを振り返って微笑む。

「ジェシー、元気そうだな」
「はい! ウォーレン様もお変わりなく……あの、お疲れ様です」

 グラスを持ち上げて神官長に乾杯ポーズをすると、すぐに元の席へ戻ってしまった。

「……知り合いでしたか」
「あぁ、元々彼女も地方聖堂の神官だったが冒険者になったクチでな。私が紹介したんだ」
「なーるほど」

 地方聖堂は王都以外の町にある聖堂だ。王都の大聖堂と違い、地方聖堂は男女関係なく就労できる。
 めちゃくちゃ温度低め女子かと思っていたけど、完全に激アツ女子になってたじゃん。
 アレも神官長のガチ勢っぽい。ファンなのか片思いなのかわからねぇけど。
 どおりで神官長の話題の時に、やけに目を爛々とさせていたわけだ。

 神官長がきたことで、また場が一段と賑やかになった。
 神官長を交えて昔の話を聞いたり、最近の冒険譚を近況報告がてら聞いたりした。

 表情を緩めて相槌を打つ神官長は、いつになくリラックスモードだ。気の置けない友人たちなんだろうな。
 テーブルの上がグラスと食器でごちゃつく頃には、飲みすぎて眠そうな顎髭オヤジが出来上がっていた。

「こいつが寝ちゃうと運べねぇから、そろそろお開きだわ」

 武闘家の兄さんの合図で宴会は解散となった。
 結局、支払おうとした会計は神官長が掠め取って行き、「私を部下に奢られる男にしたいのか?」という名言をいただいた。

 合掌。

 宿に向かう冒険者達と別れて逆方向に行く神官長の背を追いかけた。

「家まで送らせてください。馬車に乗るにしても、この辺りの馬車は追い剥ぎみたいなやつも混じってるので心配です」
「……そうか」

 なぜかジッと見つめられた。その顔はアルコールの影響か、楽しい宴の興奮が残っているのか、少し赤い。
 その口角がクイっと上がった。悪戯っぽい笑顔は反則級に可愛い。

「そういえば、おまえは私の弱みを探りにきたんだったか?」
「はっ?! いえ、それはお姐さんが勝手に言ってたことで!!!」
「もう一軒付き合えるか?」
「はい?」
「私の弱みになるかはわからんが……、騎士団長に聞いたことがある。部下には夜の店を奢るのも上司のつとめだそうだな? 私の行きつけの店に行こうか」

 ………………。
 ま、
 まてまてまてーーー!!!
 夜の店って風俗店のことか?! 神官長の口から女を奢るなんていやらしい言葉が飛び出たのか?!

 まてよ……まさか…………神官長の言う行きつけの店って……あの店のことじゃないだろうな?!!

「クラレンス、行くぞ」

 ちょっ!? まってくださいーーー!!!
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