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9章 東奔西走
56.俺は神官長を信じるだけ
走り抜けようとするチャーリーの襟首を掴んで引き止めた。勢い余って足を滑らせたチャーリーをそのまま引っ張り上げて腹の立つ顔を見る。
「おわッ! 怖い顔してるよぉ……クラレンスぅ?」
「なぁ……なんで、神官長が、捕縛されんのか、20字以内にいえ!」
周囲にいた騎士が不審げな顔で避けていくのを横目に、細い通路に連れ込んで再度チャーリーを締め上げた。
「王宮での噂だよ。神官長が不正してるって噂」
「は!? 不正は――」
バシリオ神官だろ!? って言葉をなんとか飲み込む。俺はその捜査に関係していない前提なんだ。
でも、それがいまさらめちゃくちゃ腹が立つ。否定して神官長の無実を叫びたい。
いやまて、少し整理しよう。
神官長からはバシリオ神官が不正しているってことで内偵捜査の協力をしていた。
でも王宮では神官長が不正しているって噂が……それもチャーリーの耳に入るほどに広がっている。
それなら、本当は神官長が不正をしていてバシリオに罪をなすりつけるために情報収集していたのか……?
いやいや、ぜっっっったいに無理がある理論だ。あんなに頻繁に店に通って大金を落として情報収集していたのが他人へ罪をかぶせるためってのは無理がある。
それに俺もバシリオとウォーレンの義弟グレンの密会に立ち会ってるんだ。そこでどんな話がされたかまでは聞けなかったけど……。
いや、俺はただ神官長の無実を信じればいい。
これまで昼も夜も見てきたあの人の人物像は明確だ。ウォーレンにそんな姑息な真似ができるはずがない。
むしろ、神官長の調査によって追い詰められた誰かが、逆に神官長へ不正の噂を被せて打ち消し、捕縛して口封じを目論んでいると考えるほうがあり得る。
大聖堂での不正についてチャーリーの耳に入るほど噂が流されているのも作為的に感じられる。
「おい、神官長は絶対にそんなことしねぇ」
「おぉ……神官長に性癖を歪められた信者は気迫が違うなぁ?」
チャーリーの茶化したセリフは癇に障るけどしかたねぇ。
尻ポケットに突っ込んでいた紙幣を引っ張り出すとチャーリーの頬にねじ込んだ。
「これで協力しろ。俺は隊から離れて監視する。裏庭での話が神官長の捕縛ならこのサイン、それ以外ならコレだ」
紙幣をしっかり確かめたチャーリーは持ち前のニンマリした笑顔を浮かべた。
「さすが王宮騎士から左遷されただけあるねぇ。気迫が違う。まぁ、何をするのかしらねぇけど、ポシャったときに俺を巻き込まない条件でヨロシクね?」
裏庭に並ぶ聖堂騎士は全体の8割ほどだ。残りは主要箇所の警備を継続している。普段なら俺が隊列にいないとすぐに気づかれるだろうけど、今は集合人数にも混乱が生じているからバレてない。
その聖堂騎士の横に王宮騎士の制服を着た騎士たちが並んでいる。
その集団に向かい合って立っているのは聖堂騎士の隊長と……ウォーレンの義弟にあたる騎士団の副団長だ。
ウォーレンと因縁のある義弟がこのタイミングで大聖堂に来た? 嫌な符号が合う。
嫌な予感に背中がムズムズしてくる。
隊列の方で動きがあった。静かな傾聴を訓練している聖堂騎士たちがにわかに浮足だったのが見て取れる。
そんな中でチャーリーから送られてきたサインは、親指での首切りポーズ。
『神官長の捕縛』だ。
「おわッ! 怖い顔してるよぉ……クラレンスぅ?」
「なぁ……なんで、神官長が、捕縛されんのか、20字以内にいえ!」
周囲にいた騎士が不審げな顔で避けていくのを横目に、細い通路に連れ込んで再度チャーリーを締め上げた。
「王宮での噂だよ。神官長が不正してるって噂」
「は!? 不正は――」
バシリオ神官だろ!? って言葉をなんとか飲み込む。俺はその捜査に関係していない前提なんだ。
でも、それがいまさらめちゃくちゃ腹が立つ。否定して神官長の無実を叫びたい。
いやまて、少し整理しよう。
神官長からはバシリオ神官が不正しているってことで内偵捜査の協力をしていた。
でも王宮では神官長が不正しているって噂が……それもチャーリーの耳に入るほどに広がっている。
それなら、本当は神官長が不正をしていてバシリオに罪をなすりつけるために情報収集していたのか……?
いやいや、ぜっっっったいに無理がある理論だ。あんなに頻繁に店に通って大金を落として情報収集していたのが他人へ罪をかぶせるためってのは無理がある。
それに俺もバシリオとウォーレンの義弟グレンの密会に立ち会ってるんだ。そこでどんな話がされたかまでは聞けなかったけど……。
いや、俺はただ神官長の無実を信じればいい。
これまで昼も夜も見てきたあの人の人物像は明確だ。ウォーレンにそんな姑息な真似ができるはずがない。
むしろ、神官長の調査によって追い詰められた誰かが、逆に神官長へ不正の噂を被せて打ち消し、捕縛して口封じを目論んでいると考えるほうがあり得る。
大聖堂での不正についてチャーリーの耳に入るほど噂が流されているのも作為的に感じられる。
「おい、神官長は絶対にそんなことしねぇ」
「おぉ……神官長に性癖を歪められた信者は気迫が違うなぁ?」
チャーリーの茶化したセリフは癇に障るけどしかたねぇ。
尻ポケットに突っ込んでいた紙幣を引っ張り出すとチャーリーの頬にねじ込んだ。
「これで協力しろ。俺は隊から離れて監視する。裏庭での話が神官長の捕縛ならこのサイン、それ以外ならコレだ」
紙幣をしっかり確かめたチャーリーは持ち前のニンマリした笑顔を浮かべた。
「さすが王宮騎士から左遷されただけあるねぇ。気迫が違う。まぁ、何をするのかしらねぇけど、ポシャったときに俺を巻き込まない条件でヨロシクね?」
裏庭に並ぶ聖堂騎士は全体の8割ほどだ。残りは主要箇所の警備を継続している。普段なら俺が隊列にいないとすぐに気づかれるだろうけど、今は集合人数にも混乱が生じているからバレてない。
その聖堂騎士の横に王宮騎士の制服を着た騎士たちが並んでいる。
その集団に向かい合って立っているのは聖堂騎士の隊長と……ウォーレンの義弟にあたる騎士団の副団長だ。
ウォーレンと因縁のある義弟がこのタイミングで大聖堂に来た? 嫌な符号が合う。
嫌な予感に背中がムズムズしてくる。
隊列の方で動きがあった。静かな傾聴を訓練している聖堂騎士たちがにわかに浮足だったのが見て取れる。
そんな中でチャーリーから送られてきたサインは、親指での首切りポーズ。
『神官長の捕縛』だ。
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