【完結】覆面セクシーダンサーは昼職の上司に盲愛される

鳥見 ねこ

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9章 東奔西走

60.桃源郷の記憶?

 王宮への道のりで、刺客と思われる男たちからの襲撃にあった。
 それでも冒険者チームの護衛のおかげで難を逃れ、俺と神官長は王宮まで馬車を走らせることができた。
 その道中、神官長はポツリと語った。

「私は父の政治の道具なんだ」

 これは逃走劇につきあわせた俺への報酬なのかもしれない。外に漏れることの少ない裏事情だ。

「神官長が政治の道具? 聖職者が政治に関係しますか?」
「広く知られた話ではないが、神官は神と交信できるようになると、とある前世の記憶がよみがえる。その前世というのは聖女が住むという『ニッポン』の記憶だ」

 聖女と大聖堂の関係は前にも聞いた。大聖堂裏の神域の森から、聖女がこの世界へ現れるという話だ。
 その森を守るように大聖堂が位置するところから見ても、聖女と大聖堂、そして神官には切れない縁がありそうだとは思っていた。
 しかし、神官の前世の記憶が聖女の住む世界の記憶とは?

「つまり、神官は……元は聖女ってことですか?」
「……どこから説明すれば良いのか……。聖女は『ニッポン』から導かれて異界を渡った女性のことだ。『ニッポン』にはたくさんの人民が住んでいるが異界を渡ることで特殊な能力を得る。政治用語では数少ないその者を転移者と呼んでいる」

 聖女は奇跡を起こすと伝わっているけど、それは異界を渡ることで得た能力なのか。

「それとは別に、この世界の人口の半分は前世が『ニッポン』で生きた人民だ。その数多くの人民を転生者と呼んでいる。だから神官としての素養があり、前世が『ニッポン』であった転生者は、神の加護で前世の知識がよみがえる」
「じゃあ神官長もあの聖女様が暮らした桃源郷の記憶があるんですか!?」
「桃源郷……? そんな美しい場所ではないが、発達した文明だ。だからその知識は時に政治利用される。町中で聖女由来と言われるものの大半は実際のところ転生者によるものだ。裏では新兵器を開発し、他国を牽制している。私も前世の知識を得たことで、そんな裏の研究者でもある」
「それが政治の道具ってことですか」
「あぁ。父は利用価値があれば実の息子だろうが駒にする、そういう人だ」

 親子と思うと冷たい関係ではある。でも、感情より職務への利で考える相手ならば勝機もある。

「神官長にまだ利用価値があるなら、味方してくれる可能性が高いってことですよね」
「そうだな、まだあの人は味方だと……そう思うが」

 他ならともかく、敵対するのが義家族だ。宰相がどっちにつくのか天秤は揺れそうだ。

「会うことに応じたからには、良い答えが聞けると信じたい」

 神官長はそう言いながら手袋をした手を握りしめていた。

「あの~、神官長が義母に疎まれて聖堂送りになり、神官になったって噂を聞いたんですが」

 前にチャーリーに聞いた話をふってみると、神官長は虚をつかれた顔をした。

「ふむ……そんな噂があったのか。義母に疎まれてはいるが、聖堂送りについては義母よりも父の意向が強い。公爵家の人間でも神官の素養があれば聖堂送りになる例は過去にもあるし。移動のタイミングで勘違いされて流れた噂だろう」

 チャーリーのやつ……情報通ぶっているわりに、結局どれも噂レベルで止まってんじゃねぇか。全然信用ならねぇ。
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