【完結】覆面セクシーダンサーは昼職の上司に盲愛される

鳥見 ねこ

文字の大きさ
66 / 69
10章 崩壊と再生(最終章)

66.ただのカマ野郎ですけどぉ

しおりを挟む
 部屋に入ってきた男は5人。こっちは2人。人数差は大きい。
 ただ、ここはそれなりに広い部屋だけど、武器を振り回して5人で襲い掛かるには狭い。順番に1人2人を相手取るなら俺と向こうの技量差次第では何とかなるだろう。

 ただこっちに武器がないのがとっても痛いけど。
 それでもこんな状況でパニックにならないウォーレンが後ろに控えているのは心強い。
 さすが、元冒険者だけある。

「えーと、戦力確認として聞くんだけど、白魔法士ってのは何ができるんだ? 前に気絶させる魔法があるって聞いた気がするんだけど」
「こういう場面で使うには不向きだな。あの時は気絶とは言ったが、実際には神の力を借りる大規模攻撃魔法だから、下手すると店ごと吹き飛ぶレベルで制御が効かない。他に私が使える攻撃魔法は死霊モンスターにしか効果がない。それと回復魔法、補助魔法が少し使える」
「店ごと吹き飛ばすのは最終手段でお願いします」
「あぁ、補助魔法でサポートしよう」

 スッと背後の空気が動いた気配がした。とたんに、体が軽くなる。ウォーレンの魔法による身体強化のバフかな。

 剣を構える5人の男のうち、一番後ろの男は明らかに毛色が違う。フードを目深に被っていて人相は見えないけどそれでもわかる気配。
 階下の男達もこの部屋に乱入してきた他の4人の男達も立ち振る舞いが粗暴で荒削りな無頼漢といったところだ。

 なのにその男は動きに隙がないし、前の男達を盾にした位置取りで身を守っている節がある。
 つまりあれがリーダーの可能性大ってことだ。

「ははっ! 後ろのおにーさん? あんたがこいつらのボスか? ならあんたらに勝ち目はないからサッサと引いてくんないかな?」

 8割デタラメだけど、ビビってくれたら御の字だ。ただ、騎士の俺ならともかく、無手の半裸男じゃ信憑性がなさすぎだった。
 あっさりリーダー格の男に嘲笑された。
 でもなんだ? その声に聞き覚えがあるような。

「馬鹿な。そんな格好で大口を叩けるとは肝が座った奴だな。おまえが後ろの男を置いてバルコニーから飛び降りるなら見逃してやる」
「ははは~! それはできない相談だったな。こちらさまはお客さまで神さまだぞ!」

 お客様は神さまだってセリフ、知ってるだろ?

「それなら後ろの男の添え物としてまとめて串刺しだ。神官長と男娼の串刺しを城門に飾ってやったらさぞ世を騒がす醜聞になるだろうな」

 こいつ、神官長って呼んだな。
 ウォーレンの素性もばっちりわかった上での襲撃な訳だ?
 ってかこの声、やっぱり聞き覚えがあるな~。

「ウォーレンの知り合いか? やけに恨まれてるぞ」
「………………義弟、だな」

 義弟ってのは役人の方の義弟グレンか。言われてみれば、フードから覗く口元のホクロに見覚えがある。
 なるほど、孤児を奴隷として他国に売っていたバシリオ神官と共謀していた義弟が、事件発覚の逆恨みで以前から嫌いだった義兄を襲撃、というところか。
 杜撰な計画すぎて呆れるぜ。

「やれ! 下賤な男娼を切り刻め!」

 その声を合図に敵の2人が剣先を向けて近寄ってくる。防御する術を持たないと思い込んでいるその油断に付け入る隙がある。
 俺は手近の椅子を持ち上げ先制した。
 椅子を横ざまにぶつけてひとりの剣先を逸らして懐に入ると、その腕を捻り上げもうひとりへ体ごとぶつけた。

「ぐあッ!」

 もんどり打って倒れた2人の剣を奪う。その2本の剣で床に倒れた2人のとどめをさした。
 そのまま1本の剣を翻して立ち上がり、敵3人への牽制に構えた。

「な……ッ! このカマ野郎が……ッ!」
「あらたーいへん、まだあと3人もいるのねぇ」

 俺を見る襲撃者の顔色が変わっている。思わぬ伏兵の存在にようやく気づいたらしい。
 もっと油断してくれたほうがこっちはやりやすいんだけどな?

「あらぁ? 顔色が悪いわよぉ? 最近の男娼は色々な心得があるって知らないのかしらん?」
「ク……ッ! 慎重にいけッ! 軽口に惑わされるな!」

 口調でさらにからかったけど、今度は安易に突っ込んでこない。
 さすがにそこまでバカじゃないか。

 残りの無頼漢は俺に剣を向けながらジワジワと左右に別れた。左右から挟み撃ちにするつもりなのが見え見えだ。
 でも俺がその想定通りに動く義理はない。挟み撃ちにされるまで待つ義理もは。尻込みして動きが遅いうちに、こっちが先に動けば虚をつける。

「ハッ!」

 片方の間合いに素早く入り、その剣先をはじいて連撃を浴びせた。はじかれた剣を戻す間も無く、目の前の男は体に剣を浴びた。

「がぁぁッ!」

 もう1人の男は俺の後ろに周り、死角から剣を振り下ろしてくる。
 ただ、素人くさい足音だけで見なくても位置は丸わかりだ。

 男の振り下ろした剣を横にかわして、振り向きざま横薙ぎに剣をふるうと、剣に弾かれて男はあっさり手の中の武器を手放した。
 武器を無くした男に俺が負けるはずがない。容赦なく剣を向けて床に沈めた。

「な……こんな……ッ?!」
「いい線いってたんだけどなぁ。こんなショーパブの襲撃だから、適当な荒くれ者を雇ったんだろ? 俺が出勤日じゃなかったらさ、いい線いってたのになぁ?」
「貴様ッ! 何者だ?!」
「何者って、ただのカマ野郎ですけどぉ?」

 おちゃらけてからかってやると、フードから見える口元を怒りに噛み締めていた。

「きさま……やはり兄上の策略で潜入しているスパイか! ただの男娼がこれほどの手練れなはずがないッ! ずっと顔を隠しているのも怪しかったんだ!」

 当たらずとも遠からず。協力者ではあるけど、スパイではないんだけどな。

「んえ? まさか俺も恨まれてる? そんで俺とウォーレンがいる時にショーパブへ襲撃しにきたわけ?」
「俺をこけにしたんだ! 許せるはずがないッ!」

 いやいや、逆恨みでしょ。
 後ろから呆れたようなため息が聞こえた。

「グレン、いい加減にしろ。こんなことをしてどうなる? おまえは父上の庇い立てのおかげで、不正をもみ消してもらい、領地に戻る。これによっておまえの名誉が著しく損なわれることもないだろう。妥当どころかおまえに優しすぎる処分だと思うが?」

 ウォーレンの言葉に正体がバレていると悟ったのか、リーダー格の男がフードを脱いだ。 その下は思った通り、端正なイケメンだ。でも、その表情は前に王宮で見た時の貴公子っぷりからは想像できないほど歪んでいた。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

真空ベータの最強執事は辞職したい~フェロモン無効体質でアルファの王子様たちの精神安定剤になってしまった結果、執着溺愛されています~

水凪しおん
BL
フェロモンの影響を受けない「ベータ」の執事ルシアンは、前世の記憶を持つ転生者。 アルファ至上主義の荒れた王城で、彼はその特異な「無臭」体質ゆえに、フェロモン過多で情緒不安定な三人の王子たちにとって唯一の「精神安定剤」となってしまう。 氷の第一王子、野獣の第二王子、知略の第三王子――最強のアルファ兄弟から、匂いを嗅がれ、抱きつかれ、執着される日々。 「私はただの執事です。平穏に仕事をさせてください」 辞表を出せば即却下、他国へ逃げれば奪還作戦。 これは、無自覚に王子たちを癒やしてしまった最強執事が、国ぐるみで溺愛され、外堀を埋められていくお仕事&逆ハーレムBLファンタジー!

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

転生したら、主人公の宿敵(でも俺の推し)の側近でした

リリーブルー
BL
「しごとより、いのち」厚労省の過労死等防止対策のスローガンです。過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会へ。この小説の主人公は、仕事依存で過労死し異世界転生します。  仕事依存だった主人公(20代社畜)は、過労で倒れた拍子に異世界へ転生。目を覚ますと、そこは剣と魔法の世界——。愛読していた小説のラスボス貴族、すなわち原作主人公の宿敵(ライバル)レオナルト公爵に仕える側近の美青年貴族・シリル(20代)になっていた!  原作小説では悪役のレオナルト公爵。でも主人公はレオナルトに感情移入して読んでおり彼が推しだった! なので嬉しい!  だが問題は、そのラスボス貴族・レオナルト公爵(30代)が、物語の中では原作主人公にとっての宿敵ゆえに、原作小説では彼の冷酷な策略によって国家間の戦争へと突き進み、最終的にレオナルトと側近のシリルは処刑される運命だったことだ。 「俺、このままだと死ぬやつじゃん……」  死を回避するために、主人公、すなわち転生先の新しいシリルは、レオナルト公爵の信頼を得て歴史を変えようと決意。しかし、レオナルトは原作とは違い、どこか寂しげで孤独を抱えている様子。さらに、主人公が意外な才覚を発揮するたびに、公爵の態度が甘くなり、なぜか距離が近くなっていく。主人公は気づく。レオナルト公爵が悪に染まる原因は、彼の孤独と裏切られ続けた過去にあるのではないかと。そして彼を救おうと奔走するが、それは同時に、公爵からの執着を招くことになり——!?  原作主人公ラセル王太子も出てきて話は複雑に! 見どころ ・転生 ・主従  ・推しである原作悪役に溺愛される ・前世の経験と知識を活かす ・政治的な駆け引きとバトル要素(少し) ・ダークヒーロー(攻め)の変化(冷酷な公爵が愛を知り、主人公に執着・溺愛する過程) ・黒猫もふもふ 番外編では。 ・もふもふ獣人化 ・切ない裏側 ・少年時代 などなど 最初は、推しの信頼を得るために、ほのぼの日常スローライフ、かわいい黒猫が出てきます。中盤にバトルがあって、解決、という流れ。後日譚は、ほのぼのに戻るかも。本編は完結しましたが、後日譚や番外編、ifルートなど、続々更新中。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?

灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。 オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。 ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー 獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。 そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。 だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。 話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。 そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。 みたいな、大学篇と、その後の社会人編。 BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!! ※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました! ※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました! 旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」

転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?

米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。 ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。 隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。 「愛してるよ、私のユリタン」 そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。 “最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。 成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。 怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか? ……え、違う?

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

処理中です...