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10章 崩壊と再生(最終章)
67.隣の芝生はさぞ青く見えるんだろ
グレンは不気味なほど静かに剣を抜いた。
その剣先は正確にウォーレンへ向いている。
「本当に……父上と兄上は考え方が似ているな。名誉とか利益とかじゃない。あなたの策略で陥れられた者の感情がわかるか?」
「……これは策略ではない。おまえの身から出た錆だ」
「私だって、一族の繁栄のために手を尽くした結果だ! なのに兄上に陥れられ、父上に見放された。……私は知っているぞ。父上が兄上を貴族籍に戻そうと考えていらっしゃることを! 今回の件は私を追い落として後釜に座ろうという貴様の策略だろう!」
グレン側からみたウォーレンにはかなりの感情フィルターがかかっていそうだ。
そんな目で見るから、父に味方されている兄に見えたんだろう。
でも今までのウォーレンの境遇を思い出すと決してそうは思えないし、王宮での親子のやりとりもドライなもんだった。
隣の芝は青く見えるってやつかな。
「私が貴族籍に戻ることはない。無駄な勘ぐりはよせ」
「ならどうして私の裏事業を父上に告げ口した!」
「私が面倒をみている孤児たちを食い物にしたからだ。他のことなら口出ししなかっただろう」
「孤児? そんな卑小な存在が、私を陥れる理由になるだと?」
「……おまえとはどこまでも相容れないな」
珍しくウォーレンの口調が憎々しげだった。
「貴様に……ッ、理解されたいとは思わん! 貴様を殺して父上の目を覚まさせるだけだ!」
「そんなことをすれば父上はローランに目を向けるだけだろう」
ローランは騎士団の副団長をしているウォーレンの義弟だ。ウォーレンを大聖堂に捕縛にきたのもローラン副団長だった。
グレンはクックと笑った。
「ローランは私の忠犬だ。逆らうことなどないよ。私が偽造した令状とわかった上で貴様を捕縛に行くくらいにな」
「……呆れたな。弟を手駒のように使ったのか? そういう冷めたところは父上に似ているぞ」
「あいつは承知の上で尻尾をふるのさ。貴様を殺してローランに家督が譲られることになったとしても、私の目的は達成されるだろう」
こんな話を聞くと副団長を見る目が変わっちゃうな。騎士団では寡黙で腕が立つから、男らしいって憧れられてたのに、家だと兄に尻尾を振る犬なのか……いや~知りたくなかった。
グレンが会話を切るように、剣を構えた。
俺もそれに対峙して剣を構えながら観察する。
グレンは官僚だ。剣を持ったとしても、日頃訓練をおこなう俺たち騎士に比べればその身体能力は劣る。
それでも剣を構える佇まいを見ると、剣の技量は貴族であるだけにかなり仕込まれているのがわかった。
それにくわえて、貴族には魔法が使えるやつが多い。ウォーレンと同じ血族なだけに可能性は高い。
グレンと対峙していると、その何か切り札がありそうな嫌な感じで背中がゾワゾワする。
向こうもかなり追い詰められているはずなのに余裕の笑みを浮かべているのも嫌な感じだ。
「ふん。私には猪剣は通じないぞ?」
そうグレンが言うだけあって、さっきの男たちに比べて隙がなく、安易に懐へ突っ込んで撹乱するのは難しい。
力押しなら勝てるだろうけど……そうするには嫌な匂いがプンプンする。
「ハッ!」
少し踏み込んで小手調べに軽く剣先をはじくがそれでも隙は生まれない。
今度は向こうが大きく踏み込んできた。
少し後ろにステップしながらその剣を受けたが――
――俺の剣が切れた!?
とっさに右に身をかわして大きく間合いの外に離れる。
チラッと手の中の剣を見ると、持っていた剣は相手の剣に触れた箇所を起点にニュルリと溶け落ちていた。
こんなことが普通の剣にできるはずがない。
「ほ~ん? 鉄を切る魔法剣か。それか、剣身を高温にする魔法?」
とっさに横へよけたから助かったけど、反応が遅ければ剣ごと体も真っ二つになっていたな。
それに避けきれなかった左腕に小さい裂傷が残っていた。その傷の周囲は焦げていた。
「ははっ! これは下賤な男娼にはもったいないほどの技だ」
本当にな? こんな時にそんなもったいない技を出してくるんじゃねぇ!
グレンは曲がりなりにもウォーレンの義弟、こっちは殺さないように意識しないとならねぇってのに。
倒れてる男から新しい剣を奪って構えても、グレンを剣で制圧するシュミレーションが立たない。
軽く打ちつける程度ならこっちの剣身に影響はないけど、強い打ち込みを剣で受けると剣が溶ける仕様らしい。
ただの官僚にしておくには惜しい資質だろ。頭もバカっぽいから官僚より騎士の方が向いてたんじゃねぇの?
――――――――――
超蛇足
寡黙な弟ローラン × 鈍感アホ兄グレン
兄への恋情募らせる弟と、全く気づかず慕われていると思い込んで弟を駒扱いする兄
兄が弱ったら下克上される近親相姦がベースの関係性
――――――――――
その剣先は正確にウォーレンへ向いている。
「本当に……父上と兄上は考え方が似ているな。名誉とか利益とかじゃない。あなたの策略で陥れられた者の感情がわかるか?」
「……これは策略ではない。おまえの身から出た錆だ」
「私だって、一族の繁栄のために手を尽くした結果だ! なのに兄上に陥れられ、父上に見放された。……私は知っているぞ。父上が兄上を貴族籍に戻そうと考えていらっしゃることを! 今回の件は私を追い落として後釜に座ろうという貴様の策略だろう!」
グレン側からみたウォーレンにはかなりの感情フィルターがかかっていそうだ。
そんな目で見るから、父に味方されている兄に見えたんだろう。
でも今までのウォーレンの境遇を思い出すと決してそうは思えないし、王宮での親子のやりとりもドライなもんだった。
隣の芝は青く見えるってやつかな。
「私が貴族籍に戻ることはない。無駄な勘ぐりはよせ」
「ならどうして私の裏事業を父上に告げ口した!」
「私が面倒をみている孤児たちを食い物にしたからだ。他のことなら口出ししなかっただろう」
「孤児? そんな卑小な存在が、私を陥れる理由になるだと?」
「……おまえとはどこまでも相容れないな」
珍しくウォーレンの口調が憎々しげだった。
「貴様に……ッ、理解されたいとは思わん! 貴様を殺して父上の目を覚まさせるだけだ!」
「そんなことをすれば父上はローランに目を向けるだけだろう」
ローランは騎士団の副団長をしているウォーレンの義弟だ。ウォーレンを大聖堂に捕縛にきたのもローラン副団長だった。
グレンはクックと笑った。
「ローランは私の忠犬だ。逆らうことなどないよ。私が偽造した令状とわかった上で貴様を捕縛に行くくらいにな」
「……呆れたな。弟を手駒のように使ったのか? そういう冷めたところは父上に似ているぞ」
「あいつは承知の上で尻尾をふるのさ。貴様を殺してローランに家督が譲られることになったとしても、私の目的は達成されるだろう」
こんな話を聞くと副団長を見る目が変わっちゃうな。騎士団では寡黙で腕が立つから、男らしいって憧れられてたのに、家だと兄に尻尾を振る犬なのか……いや~知りたくなかった。
グレンが会話を切るように、剣を構えた。
俺もそれに対峙して剣を構えながら観察する。
グレンは官僚だ。剣を持ったとしても、日頃訓練をおこなう俺たち騎士に比べればその身体能力は劣る。
それでも剣を構える佇まいを見ると、剣の技量は貴族であるだけにかなり仕込まれているのがわかった。
それにくわえて、貴族には魔法が使えるやつが多い。ウォーレンと同じ血族なだけに可能性は高い。
グレンと対峙していると、その何か切り札がありそうな嫌な感じで背中がゾワゾワする。
向こうもかなり追い詰められているはずなのに余裕の笑みを浮かべているのも嫌な感じだ。
「ふん。私には猪剣は通じないぞ?」
そうグレンが言うだけあって、さっきの男たちに比べて隙がなく、安易に懐へ突っ込んで撹乱するのは難しい。
力押しなら勝てるだろうけど……そうするには嫌な匂いがプンプンする。
「ハッ!」
少し踏み込んで小手調べに軽く剣先をはじくがそれでも隙は生まれない。
今度は向こうが大きく踏み込んできた。
少し後ろにステップしながらその剣を受けたが――
――俺の剣が切れた!?
とっさに右に身をかわして大きく間合いの外に離れる。
チラッと手の中の剣を見ると、持っていた剣は相手の剣に触れた箇所を起点にニュルリと溶け落ちていた。
こんなことが普通の剣にできるはずがない。
「ほ~ん? 鉄を切る魔法剣か。それか、剣身を高温にする魔法?」
とっさに横へよけたから助かったけど、反応が遅ければ剣ごと体も真っ二つになっていたな。
それに避けきれなかった左腕に小さい裂傷が残っていた。その傷の周囲は焦げていた。
「ははっ! これは下賤な男娼にはもったいないほどの技だ」
本当にな? こんな時にそんなもったいない技を出してくるんじゃねぇ!
グレンは曲がりなりにもウォーレンの義弟、こっちは殺さないように意識しないとならねぇってのに。
倒れてる男から新しい剣を奪って構えても、グレンを剣で制圧するシュミレーションが立たない。
軽く打ちつける程度ならこっちの剣身に影響はないけど、強い打ち込みを剣で受けると剣が溶ける仕様らしい。
ただの官僚にしておくには惜しい資質だろ。頭もバカっぽいから官僚より騎士の方が向いてたんじゃねぇの?
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超蛇足
寡黙な弟ローラン × 鈍感アホ兄グレン
兄への恋情募らせる弟と、全く気づかず慕われていると思い込んで弟を駒扱いする兄
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タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。