星の丘ホーム、子どもたちの物語。

doiemon

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脱走の理由

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 私が振り向いた先にさっき私の前を駆け抜けていった少年がいた。 何やら怖い顔をした男性と言い合いをしている。私は何かトラブルに巻き込まれているのではないかと、すぐに駆けよった。
 「何してるんですか?」
 私は少年の名前も知らなかったが、保護者ぶって怖そうな男性に言った。美咲さんはこっちには寄ってこず、なにやら冷静な目でたたずんでいる。
 「あっ、もしかしてこいつの母ちゃん? なら責任取れよ」
 男性はわけのかわらないことを威圧的に言ってきた。少年は何も言わず男性のほうをずっと睨んでいる。
 「コイツ、どろぼうだから」
 いい大人が大きな声を出してみっともなく見えた。
 「あなた子どもにこんなムキになって恥ずかしくないんですか?」
 「あのな、こいつが俺の荷物を取ろうとしたんだよ。イデッ!」
 男性の語尾が釣り上がったことを疑問に思ったが、次の瞬間、美咲さが男性の首根っこを捕まえて動きを止めた。
 「このやろう」
 「美咲さん、警察呼びましょうよ」
 私は美咲さんの強さに加担した。そのままやってしまえと思っていた。
 「あっ、ごめん。こいつ知ってるやつなんだ」
 咲さんの知っているやつという言葉を疑った。身動きを封じられた男性はさっきの威勢が無くなっていた。
 「あんたさ、子ども相手に何やってんの」
 美咲さんは駅内に響き渡る声で男性を怒鳴った。固まったままの私に美咲さんから衝撃の言葉が届いた。
 「あっ、ごめん。これ、弟なの」
 「えっ、美咲さん。どういうこと?」
 私は状況に困惑した。このさっきまで悪態をついていた人が美咲さんの弟だと言われても……。
 「説明は後、とりあえず家に戻るわよ。今日はトラブルが多過ぎ」
 美咲さんはタクシーを止めた。私たちをさっさと乗るように促した。少年の名前は修平、男性の名前は次郎、二人と自分からは名乗らず、美咲さんの口から紹介された。それ以外の会話はなく、ピリピリした空気だった。
 やっかいなトラブルに巻き込まれて、その中でさらにトラブルが起こる。私の人生はいつもそんな感じ。私は早くも関わったことを後悔していた。
 
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