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病院でできた友達
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魔女探しの話し合いは史彦が缶ジュースを買ってきてから開始された。
「まず、明日になったら俺はこの病院を出なきゃいけない。母親が夕方迎えに来ることになっている」
「なんだ、やっぱり仮病だったんだ」
「ちゃんとケガはしてたよ。たいしたことなかったけど」
「じゃ、決まりだ。明日の夕方より早く、ここを抜け出そう」
史彦の提案は唐突だった。
「大丈夫かよ?」
「俺は大丈夫だよ。普段からそんなに学校に行ってないもん」
威張りやがって。そう言ってやりたかった。
「実際どうすりゃいんだよ?」
「明日、俺が車で病院の前に迎えに来る。隙を見てお前を車に乗せていく」
「誰にも言わずに抜け出せってのか?」
「誰かに見つかっても、言っても大問題になるだろ」
その通り。
行き先も言わず、「外出してきます」なんて言ったら、力ずくで止められるだろう。どうえせならいなくなったことに気づかれるまで時間稼ぎができる方法を実行するのが得策だ。
「いいか、お前が見つかったら計画は終了だ。慎重にやれよ」
俺はコクリとうなずいた。
「よし、俺は車を手配してくる。夜また、連絡するから」
そう言って史彦は大きな音を立てて、椅子から立ち上がった。真昼間から学校にも行かないひねくれた野郎と奇妙な約束をするとは考えもしなかった。
逃げ道を選んだことは自分でもわかってるつもりだ。でも、そのことを認めるつもりもなかった。
史彦と連絡先を交換して、夜まで連絡を待つことにした。
病室に戻ったら、朝の体操の時間に声をかけてきた少年が向かいのベッドに座っていたが、俺に気がついたようですぐに側に寄ってきた。この少年も見た目は元気そうでどんな病気かはわからない。無口なまま側に来た少年を俺は見下ろしていた。
「お兄ちゃん、ケンカしたの?」
八ッとした。こいつまさか昨日の夜の会話を聞いてやがったのか。完全に寝てると思ってたのに。見かけによらず、あざといやつなのかもしれない。
「だから、なんだってんだよ」
「いつまでいるの?」
「明日になったら出てくよ」
正式には出ていくのではなくて、脱走するのだが。そんなことどうでもいいか。
「お前は何の病気なんだ?」
気やすく聞くのはよくないとも思ったが、こいつもずいぶん俺のことを聞いたはずだ。
「名前は忘れちゃったんだけどね。生まれつき心臓が悪いんだ。先週までは学校に行ってたんだけど、体育の時間に走り回ったら、苦しくなって、とりあえずまた、入院してるんだ」
またっていう言葉に重たさを感じて、聞いたことを後悔した。本人は繰り返している入院に慣れているような態度だが、どうなんだろう。
体が弱くて普通じゃないコイツは周囲の人間に気を使われて、どんな風に思ってるんだろう。
「なぁ、学校に行きたいか?」
「う~ん、どうかな・・・。ぼくは行きたいんだけど先生や友達に迷惑かかるでしょ」
子どもらしくない言動だと思って、違和感があった。
「あとね・・・ぼくが病気になって、お母さんが泣くんだ・・・」
体に重みを抱えたような言い方だった。
「毎日来てくれるんだけど、隠れた場所でお母さんが泣いてるの、知ってるんだ・・・」
コイツが考えてることがぼんやりと伝わってくる。
みんなは自分が病気だから気を遣ってくれる。けど、身近な人たちは悲しんでいること自分が悲しんでいる。あまり、穏やかではいられないのかもしれない。
子どもって誰よりも大人のこと見てるし、考えてるから。
リビングで夫婦喧嘩をしている両親の姿を自室のドアから頭だけひっそりと出し、眺めていた過去を思い出した。もめている原因は母の俺への教育方針が気に入らない父が乱暴なことばを言い放つだけのものだった。
反論する母に対して、声の大きさだけで言いくるめる父の姿。
俺は布団を頭からかぶり、リビングからの声が届かないように耳をふさぐ。
それで 俺は自分のせいで二人が言い争いをしていることに気がついてしまった。
落胆してもため息は出ず、涙も出なかった。けど、なんかおかしくなった。
あれは小学二年生くらいのころだったかな。
「まず、明日になったら俺はこの病院を出なきゃいけない。母親が夕方迎えに来ることになっている」
「なんだ、やっぱり仮病だったんだ」
「ちゃんとケガはしてたよ。たいしたことなかったけど」
「じゃ、決まりだ。明日の夕方より早く、ここを抜け出そう」
史彦の提案は唐突だった。
「大丈夫かよ?」
「俺は大丈夫だよ。普段からそんなに学校に行ってないもん」
威張りやがって。そう言ってやりたかった。
「実際どうすりゃいんだよ?」
「明日、俺が車で病院の前に迎えに来る。隙を見てお前を車に乗せていく」
「誰にも言わずに抜け出せってのか?」
「誰かに見つかっても、言っても大問題になるだろ」
その通り。
行き先も言わず、「外出してきます」なんて言ったら、力ずくで止められるだろう。どうえせならいなくなったことに気づかれるまで時間稼ぎができる方法を実行するのが得策だ。
「いいか、お前が見つかったら計画は終了だ。慎重にやれよ」
俺はコクリとうなずいた。
「よし、俺は車を手配してくる。夜また、連絡するから」
そう言って史彦は大きな音を立てて、椅子から立ち上がった。真昼間から学校にも行かないひねくれた野郎と奇妙な約束をするとは考えもしなかった。
逃げ道を選んだことは自分でもわかってるつもりだ。でも、そのことを認めるつもりもなかった。
史彦と連絡先を交換して、夜まで連絡を待つことにした。
病室に戻ったら、朝の体操の時間に声をかけてきた少年が向かいのベッドに座っていたが、俺に気がついたようですぐに側に寄ってきた。この少年も見た目は元気そうでどんな病気かはわからない。無口なまま側に来た少年を俺は見下ろしていた。
「お兄ちゃん、ケンカしたの?」
八ッとした。こいつまさか昨日の夜の会話を聞いてやがったのか。完全に寝てると思ってたのに。見かけによらず、あざといやつなのかもしれない。
「だから、なんだってんだよ」
「いつまでいるの?」
「明日になったら出てくよ」
正式には出ていくのではなくて、脱走するのだが。そんなことどうでもいいか。
「お前は何の病気なんだ?」
気やすく聞くのはよくないとも思ったが、こいつもずいぶん俺のことを聞いたはずだ。
「名前は忘れちゃったんだけどね。生まれつき心臓が悪いんだ。先週までは学校に行ってたんだけど、体育の時間に走り回ったら、苦しくなって、とりあえずまた、入院してるんだ」
またっていう言葉に重たさを感じて、聞いたことを後悔した。本人は繰り返している入院に慣れているような態度だが、どうなんだろう。
体が弱くて普通じゃないコイツは周囲の人間に気を使われて、どんな風に思ってるんだろう。
「なぁ、学校に行きたいか?」
「う~ん、どうかな・・・。ぼくは行きたいんだけど先生や友達に迷惑かかるでしょ」
子どもらしくない言動だと思って、違和感があった。
「あとね・・・ぼくが病気になって、お母さんが泣くんだ・・・」
体に重みを抱えたような言い方だった。
「毎日来てくれるんだけど、隠れた場所でお母さんが泣いてるの、知ってるんだ・・・」
コイツが考えてることがぼんやりと伝わってくる。
みんなは自分が病気だから気を遣ってくれる。けど、身近な人たちは悲しんでいること自分が悲しんでいる。あまり、穏やかではいられないのかもしれない。
子どもって誰よりも大人のこと見てるし、考えてるから。
リビングで夫婦喧嘩をしている両親の姿を自室のドアから頭だけひっそりと出し、眺めていた過去を思い出した。もめている原因は母の俺への教育方針が気に入らない父が乱暴なことばを言い放つだけのものだった。
反論する母に対して、声の大きさだけで言いくるめる父の姿。
俺は布団を頭からかぶり、リビングからの声が届かないように耳をふさぐ。
それで 俺は自分のせいで二人が言い争いをしていることに気がついてしまった。
落胆してもため息は出ず、涙も出なかった。けど、なんかおかしくなった。
あれは小学二年生くらいのころだったかな。
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