他の女にうつつを抜かす夫は捨てます

新しい始まり

ダンとの離婚が成立して、私は実家に帰った
もちろん、使用人たちには挨拶をしてきた
皆、私が自由になることを喜んでくれた
驚くことに使用人たちの半数以上が私についていきたいと言ってくれた
そうでなくとも、ダンの屋敷を辞める決意をしている使用人も多いようだった
だが、これからダンは大変になるだろう
家の仕事を一人で行っていくのだ
シアがメアリーが行っていた仕事ができるようには思えないし
そのため、これからダンを支えてもらえるよう使用人たちの申し入れは丁重にお断りした
だが、その気持ちが嬉しかったのは事実だ
いままでの孤独な日々を耐えられたのは、使用人たちのおかげである



情を断ち切ったといっても、ダンに不幸になってほしいわけではない
素直に彼の幸せを願えるようになっていた
私も成長したのね


自由になったメアリーにはやりたいことがあった
それは恋愛だ
ダンといることで諦めていたもの
いままではそれでいいと思っていた
でもこういう結果になって、諦めていたことに挑戦してみたくなったのだ


さて、まずは出会いを探さないとね
今日は市場にでも行ってみようかしら



市場はとても賑わっていた

「何からみようかしら」

メアリーは久しぶりのお出かけにワクワクしていた

「そこのお嬢さん、アクセサリーはどうだい？」

「見てみようかしら」

とても素敵なアクセサリーばかり！
どれにしようかしら．．．

「お嬢さんにはこれが似合うんじゃないかな」

その声に振り向くと、そこにはメアリーより少し年上くらいの男性がいた
銀髪がよく似合う整った顔立ちの男性だった
彼が選んでくれたのは、メアリーの瞳の色と同じ色のエメラルドグリーンのネックレスだった

「あなたは？」

「僕はジャック、君は？」

「私はメアリーよ、選んでくれてありがとう。これにするわ。」

メアリーがお金を払おうとすると、それより先にジャックがお金を払ってしまった

「まいどあり～」

「ジャック、悪いわ．．．」

「いいんだ、君によく似合うと思ったから」

「ありがとう」

メアリーは素直に受け取ることにした

「じゃあまた、どこかで」

ジャックは急いでいたようで、手を振り行ってしまった
メアリーは手を振りながら、また会えたらいいなと思っていた

「素敵な人だったわ、またどこかで会えるかしら」

一瞬そう思ったが、この歳くらいの貴族は大体結婚している
彼もそうだろう．．．

「既婚者なのに、ほかの女にアクセサリーを買うなんて．．．」

メアリーのなかでジャックのイメージは急落下した

「でもアクセサリーに罪はないものね」

帰ったら着けてみようかしら．．．