聖女転生? だが断る

日村透

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お仕置きのお時間

197 召喚された側の大主張 (2) -sideリリ

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 やばいやばい、なんで今さらあんたが出てくんのよ!
 これはあたしの身体なんだから、おとなしく消えときなさいよ!

『ち、違う……わたしの身体なの! られて、なんでかずっとぼんやりしてたけど、何日か前から意識がはっきりしてきて……!』

 何日か前ぇ?
 ぼんやりしたまま消えとけっての!
 今さらノコノコ出てくんな!

『そうです! この人がわたしの身体、勝手に動かしてるの! わたし、こんなところにいたくない! 家に帰りたいの……!』

 はぁぁ?
 家に帰りたいぃ?
 なぁ~に調子いいこと言ってんのよ!
 あんた、「どっかここじゃないところに行きたい」とか「別人に変身できたらいいのに」とか、うじうじブチブチぼやいてたくせに!

『そ、それは、でも』

 でも、じゃないっての!
 どー見ても家がお金持ちで、部屋も超かわいくて、暗い過去だって全然ないのこっちは知ってるんだからね!
 恵まれた毎日に飽きてつまんなくなって、もっと刺激あればいいのにって思ってたんでしょ!
 全部知ってんのよ!

 お望み通り違う世界でじゃない!
 思ってたのとちょっと違うからって、ぐちぐち文句つけんな!!

『――勝手なこと言わないで! こんなの望んでない! こういうことを望んでたんじゃないわ!』

「なるほどねぇ」

 ぎくっとした。
 魔女がこっちを意味深な目で見ている。
 ……待って。まさか、さっきの会話、聞かれてた?
 あたしの頭ん中、読めるの?

「いつもやってるわけじゃないわよ。集中力が必要で疲れるしね」

 さいあく……!!

「魔女よ、何を言っておる?」
「陛下。リリ様の中に、一人ではなく『二人』おります」
「二人?」
「心が二つあるのですわ。リリ様に聖女の力が発現しない原因、これかもしれませんわね」
「どういうことだ?」
「あ、あたしは邪魔なんてしてないわよ!?」

 ああくそっ、バラされた!
 でもほんとに邪魔とかしてないんだからね!
 なんで魔法使えないのか、こっちが訊きたいんだから!

「ええ、わかってるわ。――陛下。我が師から教わったことと合わせての推測になりますけれど、この国で行われている聖女召喚の儀。それによって召喚された娘がもし複数いた場合、力が分散されて、個々の力が非常に弱まるそうです」
「それは、初めて耳にするが。これとどう関係がある」
「ひとつの身体の中に心が二つ。こういった事例はとても珍しいのですが、ないこともありません。召喚されたのは『一人』に見えて『二人』なのですわ。それだけでなく、奥にいるもう一人が自分の存在を保護するために、無意識に魔力を消費しているようです。ですからリリ様には、魔法として発動させられるだけの魔力が残っていないのでしょう」
「なんと……」

 な、に、い~?
 じゃあ、あたしがずっと魔法使えなくて、「こいつ使えねーな」みたいな目で見られまくってたの、全部こいつのせいってこと!?
 さっさと消えないでしつこく居座ってんのも、こいつが勝手に魔力使ってたから!?

「魔女よ。その『もう一人』とは、どのような性格をしておる?」
「そうですね……ごく平凡な娘のようです。言葉遣いも普通な印象ですね」
「さようか。ではその娘とやらを表に出し、今表に出ている此奴こやつを消せ」

 こ……んの、クソ王!!
 言うと思った!!

「ざけんな!! 消されてたまるか!!」

 暴れてやろうとしたら、その前にあたしを捕まえた両脇の兵士がガッと力を込めてきた。
 クソ王はクソむかつく半目でこっちを見下ろしてくる。
 人の性格がどうこう言う前に、あんたの性格がクソ最低なんだって気付けよおっさん!!
 怒鳴ってやろうとしたら、あたしの中から聞こえてくる声が出鼻をくじいた。

『もうやめて! わたしの身体でそんな酷いこと言わないで! この人達に謝って!』

 ……はぁ?
 何言ってんの、あんた。

『あなたがそんな酷い言い方ばっかりして、こんな暴れ方をしているから閉じ込められたんでしょう!? この人達に謝ってよ!』

 ……あのさぁ。
 謝って、そんで、どーしろっての?

『酷いことをしてごめんなさいってきちんと謝って、家に帰してくださいってお願いするの。もし帰るのが難しいとしても、反省しているのをわかってもらえたら、塔の部屋からは出してもらえるじゃない?』

 …………それ、本気で言ってんの。
 そういやあんた、意識がはっきりしてきたのは、何日か前からだって言ってたっけ?

『それが何……?』

 何、じゃないってのよ。
 つまりあんた、この状況ぜんっっっぜんわかってないわけね。
 そもそもあたし、最初はこいつらが好きそうな可愛いお嬢さんってたんだけど?
 でもこいつらがなんかヤバいことやってて、自分の身もヤバくなりそうだったから、逃げようとしたら閉じ込められたんだけど?

『え? 嘘……』

 マジに決まってんでしょ!!
 家に帰してくださいってお願いする? アタマ沸いてんじゃないの?
 誘拐犯の監禁犯がお願いなんざ聞くわきゃないでしょうが!!
 このおっさんとそこのクズ王子の言動、さっきから見ててわかんなかったわけ!?

『あ、あんまり、聞いてなくて』

 っはあああ?

『だって! あなたがわたしの身体で、暴れてばっかりだから……聞きたくなくて!』

 ……ああそう。
 じゃ、耳塞いだまんま、口も塞いどいてくれる?
 あんたもう喋んなくていいから。

「魔女よ、何をしておる。はようこの娘を消さぬか」
「陛下。その前に、もうしばし観察させてくださいな。中の娘と交換させたいのでしょうけれど、それが良い方法とは今のところ思えませんので」

 逆にこっちは、やっぱり話が通じそうね。




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 sideリリさん、もう少し続きます。

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