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番外・後日談
39. おあずけ明け*
しおりを挟む一週間だったはずのおあずけ期間が、半月に延長された。
自業自得とはいえ、きつかった。
ほんの偶然のきっかけで思い出した夢の断片を、一刻も早くアレッシオに話したくなり、その日の夜二人きりになった時、我慢できずにたくさん話して。
想いを確かめ合ったりして。
なんか熱くなったりして。そんでもって、そのまま……。
俺のせいだ。わかっている。こんなにつらい思いをする羽目になったのは、何もかも俺のせいだ。
そんな風に、心から反省している俺のために、この言葉を贈ろう。
―――『それはそれ、これはこれ』。
あのさ。
延長期間、半月だったよな?
ちょうどその頃に前倒しパーティーが重なり、ようやくそれも終わって諸々の処理もして、気付けば半月が二日も過ぎたんだが?
話が違うぞ。
「ふふ……」
超過二日目、どうやら俺はとても慈悲深そうな笑みを浮かべていたらしい。使用人や護衛の面々が心なしか青ざめていたのに、領民はうっとり拝んでくれたからな。この極端な反応の違いは、俺への理解度の差である。
いやぁ、パーティーが終わった直後にさ、余所から貴族のアホなボンボンが観光に来て諍い起こしてさ。なんか色んなところで悪さをしている札付きのアホボンだったらしくてね?
調停のために町へ向かって、さっさとそいつを強制送還用の馬車に叩っ込んで、町長から感謝されて、苦情の手紙をそいつの家宛てにしたためて、貴族院宛にもチクリの手紙を書いて、ほぼ潰れた一日を思い返しながら決意したんだよ。
俺、アレッシオと一緒に休暇を取るんだ。
気合で仕事を片付けまくり、気合で翌日から数日間の休みを入れた。
気合気合と繰り返すのは、頭の悪い脳筋っぽくて褒められたことではないが、世の中は気合でなんとかなることもある。
アレッシオと心おきなく、一日中くっついてあれこれしたい。そのためだけに猛烈に処理をこなしてゆく俺は、はたから見れば随分異様で滑稽だっただろう。
だがもうどうでもいい。
後になって恥ずかしくなり、後悔するかもしれない。
けれど、『後悔』とはすなわち『後で悔やむこと』と書く。今までも幾度となくこの言葉が浮かんでは、こう繰り返してきたではないか。
つまり、今は悔やまなくていいんだと……!(良い子は参考にしないでください)
多分、俺は気迫か何かを発していたんだと思う。その日、執務室の面々は無言だった。
皆を帰らせた後も俺は仕事の鬼と化し、深夜まで処理を行い、一日だけでなく数日間の休暇をもぎとった。
疲労困憊で爆睡し、そして今朝、朝の光が眩しいな。
よし準備万端だ。
「おはようございます」
朝の挨拶を伝えに来たのはアレッシオ。爽やかな笑顔が眩しいな。背後にもドアの近くにもメイドやブルーノ父の姿はない。
……っっしゃあああっ!!
ようやく! ようやく!
「アレッシオ、今日の予定は」
「閣下のお休みの間はすべてキャンセルしております」
「おまえの予定は」
「あなたのお世話です」
……おれ、なくかとおもった……。
「朝食をお持ちしました。久しぶりに一緒に食べましょう」
「うん……」
うわあああん、ほんとに久しぶりだよおお……あれっしおとふたりで朝ごはんんん……やばい、俺の頭が幼児退行している。でも仕方ないじゃないか。
寝室のテーブルにセットされた朝食。二人きりで向かい合ってのんびり過ごせるなんて、こんな貴重で贅沢な時間を、今までの俺は普通に送っていたんだな。
この半月プラス数日は飢えに飢えていたものだから、この空気感だけで胸がいっぱいになる。食べ終えた頃には感極まって、ちょっぴり涙がこぼれてしまったよ。
「申し訳ありませんでした。私に堪え性がなかったばかりに」
アレッシオが指で俺の涙をぬぐいながら、「心底反省しました」と苦笑した。
「なんで、おまえが謝るんだ。あれは完全に私のせいだろう」
「いいえ、結局破ったのは私なのですから。父にも日頃から注意されているのに、あれでは信用されるはずもありません。いい薬だったと思うことにしております。少々、劇薬ではありましたが」
「本当に、劇薬だな。きつかったぞ……」
「そうですね。ところで閣下、食欲は落ちていないようですが、たくさん食べて満足できましたか?」
「ああ。今朝は格別に美味しかった気がする」
「それはよかった。では、これからあなたを食べていいですか」
え?
あまりにサラッと言われたので、きょとんと見返したら、アレッシオが「言い間違えました」と微笑んだ。
「食べます。拒否も逃亡も許しませんので、お覚悟を」
「あ……」
爽やかな執事スマイルの中、鳶色の瞳が猛禽の瞳になっていた。
空腹で中断なんて冗談ではないからと、互いの栄養補給を優先した、実にぬかりのない男である。
自分自身もさっさと優雅に栄養補給を終えてから、俺の食事が終わるのを内心じりじりと待ち、ずっと食らいつくのを我慢していたわけだ。
そうか、そんなに俺が欲しかったのか。想像するだけでくるものがあるんだが。
でも、そんなことを考えていられる余裕はすぐになくなった。
アレッシオの部屋の寝室に掻っ攫われ、彼のベッドの上で向かい合い、長い足をまたいだ格好で座らされた。
お互い一糸まとわぬ姿になっている。何も隔てず、互いの皮膚で触れ合っていると思うだけで腰にきた。
彼の片腕は俺のウエストをがっちり捕え、もう片方の手は自然にひらいた尻の狭間に、香油をまとって突き刺さった。
「あ、あぅん、あ、あ……や、んん……」
ぐりぐりと指が入り口を広げ、かすめるだけで痺れが走るしこりのような部分を、焦らさずに何度も刺激してくる。
たまらずアレッシオの首もとに顔をうずめ、肩に抱き付きながら声を押し殺そうとするも、どうしても漏れてしまう。
「やっ、やぁあっ……そ、そこっ……それっ、ぁっ、ああっ……」
「こら。逃げないでください。久しぶりなのですから、やわらかくしておかないと」
「んんっ! ……ふうっ、んっ、ん……」
香油を追加した指が出入りし、その入り口をさらにひらいてゆく。
彼の大きさがちゃんと入るよう、自分のそこが作り変えられているのだと思うと、目尻に涙が滲んだ。
指で届かない場所への刺激が欲しくなる。もっと、奥に欲しい。全部何もかも、アレッシオのものにして欲しい。
「あ、アレッシオ! もう、もういい、もういい、からっ……」
「……そう、ですね。そろそろ、私も……限界です」
指が引き抜かれ、後孔に存在感のあるものがグ、とあてがわれた。
間髪入れず、指とは比較にならないものが入り口を押し広げ、ぐぐぐ、と入り込んでくる。
先端が通ると後は早い。傷付けぬよう慎重な動きではあったものの、それは途中で止まらず、一気に最奥まで押し込まれた。
「あっ、あーっ……!」
アレッシオの両手が俺の腰を掴んで固定し、下から突き上げる衝撃で上半身がしなった。
その後も感触を確かめるようにグ、グ、と奥を突く動きを繰り返され、自分とは思えないほど甲高い喘ぎが漏れた。
けれど下から突く動きはほんの数度でぴたりと止まり、今度は俺の上半身のしなりをそのまま利用して、背中を支えながらシーツに倒してきた。
俺に覆いかぶさる勢いそのまま、ズン、と穿ってくる。
さっきよりも深い場所に。
欲しいものがやっと与えられた衝撃に、俺の前は勢いよく液体を噴き出していた。
「~~っっ! …………あ、ぁ、……んんぅ……」
「……おや、達してしまいましたか? ……本当に、可愛らしい人だ……」
「は、……うあ……あ、アレッシオぉ……」
「でも、まだ、許してあげませんよ……?」
アレッシオが、俺の耳を軽く食みながら、低い声を吹き込んできた。
「俺はまだ、お腹がすいているんです。ええそれはもう、ペコペコで……。たくさん、食べさせてくださいね……」
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